047 リンドール大興奮!?
「──あら」
不意に、階段の方から声がした。
振り返ると、そこには二階から降りてきたリンドールさんの姿があった。
いつものように几帳面に整えられた装いで、両手には何やら錬金関係の本を抱えている。
「あ、リンドールさん! 二階で何かしてたんですか?」
「ええ、錬金の文献を整理していましたの。ザラストさんたちはもう戻っていたんですね。お疲れ様です──」
リンドールさんがそこで言葉を止めた。
視線が、大テーブルの上に注がれている。
「──って、なんですのこれは!?」
リンドールさんは大テーブルに駆け寄ると、目をキラキラさせてドロップアイテムの山を見つめた。
「こ、これは……粘魔核!? それに魔狼の眼球……! 小鬼の革袋まで、こんなに……!? どうしたんですの!? ま、まさか……わたくしのために!?」
「まあまあ落ち着き! 初見やったら驚くのも無理ないわ。これぜーんぶ、ザラはんがダンジョンで稼いできてくれたドロップアイテムでな」
「そ、そんなことがあり得るのですか……? だってこれ、レアドロップですわよね……?」
「まあそうなんやけど……よし、リンはんには説明しておこか」
私に代わってパンさんが、私の【運】の良さについて説明してくれる。
「──っちゅうわけで、サキはんが召喚した剛体種ゴブリンやザラはんがダンジョンで魔物を倒すと、レアドロップばっか落とすんや」
「そうなんです……」
【運】が最大値になったのは私の操作ミスなんだけどね……。
そのあたりはみんなに話してないけど。
「そ、そんなことが……こ、こんなの、錬金術師にとって夢のような環境ですわ……!」
「そうなんですか?」
「当たり前ではありませんか!!!」
リンドールさんが、ぐいっと顔を寄せてくる。
ち、近い近い!
……と思ったら、今度はリンドールさんはテーブルの端に近づいて、粘魔核を指先で軽く転がす。
「粘魔核は以前もお話ししましたが、薬の基剤として非常に優秀なんですの! それに魔力の安定剤としても使えますし、魔術具の製作に組み込めれば、完成度がかなり上がりますわ!!」
「ほ、ほうほう」
「魔狼の眼球もとっても面白い素材ですわ! これは感知系の錬金素材として一級品でして、魔力を流すことで視覚情報を取得できるのです! 周囲の異変や魔物の接近を察知する罠ですとか、索敵用の魔術具に応用できますわね。他にも、天影鏡という面白いアイテムも作れますわ!」
「えっ、カメラ!?」
カメラって、あの……!?
それは凄く興味あるかも……!
「天影鏡って、めっちゃ高いアイテムちゃうか? 貴族のお遊び用ってイメージやけど……」
「そのめっちゃ高いやつですわ!! わたくしも大好きで、家にたくさんありまして……」
リンドールさんがさらっと言ってのける。
……さらっと言ったけど、そのめっちゃ高いやつが「家にたくさん」って、どのくらい……。
リンドールさんってやっぱりお金持ちなんだな、と改めて思った。
「最後に小鬼の革袋なんですが……これは素材として使うというより、内側に施されている術式の方が気になりますわ」
「術式?」
「ええ。見た目以上に物が入るということは、空間を拡張する術式が刻まれているはずですの。それを上手く別の容器に転写できれば、収納力の高い鞄を新しく作れるかもしれませんわ!」
「おー! それは便利そう!」
これは私も純粋に欲しいと思った。
今はアイテム欄があるから何でもしまえるけど、他のみんなにもそういう鞄があれば、荷物の持ち運びが楽になるよね。
ザラやゴブリンズのダンジョン探索にも役に立ちそう!
「……転写できれば、の話ですけどね。失敗する可能性も十分ありますわ」
「何割くらい?」
「…………」
リンドールさんが黙った。
黙って、にこにこしている。
これは……笑顔で誤魔化そうとしている……!?
「ま、まあええわ。とりあえず、素材はこんな感じで大量に取ってこれるから、リンはんの好きなように錬金してくれれば!」
「……いいんですの?」
「ええんやええんや。リンはんの知識と錬金への情熱が本物なのは分かっとるし、あとは100回に1回でも良いもんができれば儲けもんや」
「なるほど……100回に1回でいいんですのね!」
「えっ、いや、それはものの例えっちゅうか……まあええわ!」
パンさんの苦笑いに、私もクスッと笑った。




