046 冒険者ザラスト・ザラメイヤ
一足先にギルドルームに戻った私たちは、パンさんからここ最近の話を聞かせてもらっていた。
「──ちゅうわけでやな。うちらも、もう好き勝手ばっかしてられへんようになってきたんや」
「なるほど……」
パンさん曰く、グランベルジュがこの街の上位ギルドになったことで、”ギルドとしての責任”も一気に重くなったらしい。
ダンジョンで効率よくギルドポイントを稼ぐだけじゃなく、街から回ってくる依頼もちゃんと捌かないといけなくなった。
要するに──街の防衛戦力として、正式にカウントされたってことみたい。
採取や護衛、特定の場所に現れた魔物の排除などなど……。
ちょっと”めんどくさい依頼”ばっかりだね……。
「あと、はよもっと上のランクに上がれ、とも言われたわ」
「えっ、第三天位じゃ足りないってことですか?」
「せや。少なくとも第五天位くらいまではなってほしいらしいわ」
「だ、第五……」
第三天位への昇格試験でもちょっとヒヤッとしたのに、第五天位となるとちょっと心配だよね……。
──そんな話をパンさんとしていると。
「ただいま戻りました~! マスター、お姉さま♡」
玄関からザラの明るい声が響く。
ザラが帰ってきたみたい。
ギルド集会所での真面目モードとは大違い……。
そして、その後ろから大きな影がのそっと入ってきた。
ジョンソンだ。
そしてその手には──いや、手だけじゃない、両肩から背中にかけて、もうたくさんの大袋がぶら下がっていた。
「えっ、なにその荷物!?」
「戦利品です~!」
戦利品……って、ドロップアイテムのこと!?
こんな数、どうしたんだろう……。
「というか、ジョンソンは完全に荷物持ち状態だったんだね……」
「そうです! 便利でした~」
そんなことを言われても、ジョンソンは表情一つ変えない。
これも召喚権限委任の効果なのかな……?
「あっそれとマスター! ボク、明日昇格試験を受けることになりました~!」
「えっ、今日冒険者になったばかりなのに!?」
「はい! しかも第三天位? なんか一個飛び級みたいです~」
「何があったの!?」
「受付嬢さんに勧められた黒裂結晶の洞窟ってダンジョンに早速行ってきたんですよ! で、そこで片っ端から魔物を倒しまくって、せっかくだしドロップアイテムもジョンソンくんに持ってもらって帰ったら、係員さんにドン引きされて……」
係員さんって、いつもドロップアイテムを確認してくれる人だよね。
そりゃこのジョンソンの姿を見たらそうなるよ……。
「それで、『ギルドポイントも条件ライン越えてますし、どうせサキさんみたいに余裕なんだから明日飛び級で第三まで受けちゃいましょー』って言われて……。ボク、よく分からないまま頷いときました!」
「なんでそこ分からないまま頷くの!?」
「まあ、冒険者だし……勢い?」
「勢い!?」
……ザラは真面目なのかおふざけキャラなのか、まだよく分からない。
「ほ、ほんならこの袋の山は……全部ドロップアイテムなんか?」
「そういうことです! ではジョンソンくん、あの大テーブルの上に並べてあげましょう~」
ジョンソンは黙って頷くと、袋の口をほどいて大テーブルの上に中身を並べていく。
──どさっ。
テーブルに転がったのは、見慣れた青い塊──粘魔核。
次いで、赤い眼球──魔狼の眼球。
そして、革袋、革袋、革袋──小鬼の革袋が山のように出てきた。
「……壮観やなー……」
これ、全部レアドロップだよね。
ってことは、ザラにも私の【運】の効果が乗ってるってことになる。
まあ、ジョンソンたちが倒したときにもレアドロップだったんだから、当然っちゃ当然だけど。
これで、私が現地にいなくてもレアドロップ出来ることが分かって良かった。
でも驚くべきは、その数。
粘魔核……7個。
魔狼の眼球……6個。
小鬼の革袋……77個。
といった具合で、ゴブリンのレアドロップばかり持って帰ってきたみたい。
「どうしてゴブリンばっかり倒したの?」
「ふっふっふ。マスター、そういうわけじゃないんです。この小鬼の革袋の中、見てみてください~!」
「えっ?……まさか──うわっ!?」
そう、そのまさか。
小鬼の革袋の中から出てきたのは、粘魔核や魔狼の眼球、そして小鬼の革袋──またまたドロップアイテムだ。
「この袋、どうやら内部に時空系の術式が施されてるみたいでして、見た目以上に物が入るんですよ! だからまとめて運ぶのに便利でして~!」
そ、そんな効果が!?
私は慌ててアイテム欄からアイテム説明を確認する。
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【小鬼の革袋】 ゴブリンが腰に下げていた革袋。見た目より少しだけ多く物が入る。
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ほ、本当だ……ちゃんと見てなかった……。
これ、結構便利なアイテムだね、流石レアドロップ。
「じゃ、じゃあこれ、結局何個あるんや……」
「全部出して、数えてみましょうか!」
みんなで黙々と、小鬼の革袋の中からレアドロップを取り出していく。
その結果……。
粘魔核……130個。
魔狼の眼球……112個。
小鬼の革袋……126個。
「な、なんやこの数!?」
「よくこの短時間でこの数倒せたね!?」
「そうですか~? お姉さまならもっと早いと思いますけど……」
「えっ、そうなの!?」
……でもそうか、アルテミスってザラの師匠なんだよね。
じゃあ、アルテミスの方が強いってことなのかな。
「私はマスターから離れることはありませんから」
あくまで私のボディーガードってことか。
アルテミスらしいかも。
「……お姉さま、ちょっとラクしてません?」
「……ザラは真面目だからな」
……アルテミスの言う通り、ザラは超真面目なのかも?
私の「冒険者になって」って言葉通り、真剣に冒険者をやってるってことだしね。
でもこのペースだと、とんでもない冒険者になっちゃうよ……?




