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041 良薬口に苦し

ゴブリンズが魔物を倒す後ろをついていき、ドロップアイテムを回収していく。

するとあっという間に大部屋の魔物が一掃され、気付けば残るのは上空を悠々と旋回するワイバーンだけになった。


「うーん……。無理してワイバーンの相手をするのはやめて、次の大部屋に行こっか」


私の言葉に、ゴブリンズも頷いた。

今回の目的は金策なんだから、ワイバーンを意地で落とすよりも倒せる相手をどんどん倒した方が良いよね。


というわけで、素直に次の大部屋を目指して通路を進んでいく。

道中、私は色々と考えていた。


うーん……今後も飛行系の魔物は全然いるよね。

なら、ゴブリンズに弓とかの遠距離武器を与えたほうがいいのかな……?


そう思い、先頭を歩くジョンソンに聞いてみる。


「ねえ、ジョンソンは弓とか得意?」


ジョンソンは歩みを止めて振り返ると、じっと私を見つめ返すだけだった。

頷かない……ってことは、得意じゃないのかな。

じゃあ、聞き方を変えてみよう。


「弓、買ったら使う?」


すると、今度は頷いた。

じゃあ、今度買ってあげようかな。


続く探索でも、バジリスクやオルトロスをメインで倒していく。

そして私は、滑る黒曜石に気を付けつつ、せっせとドロップアイテムを回収する。


……が。


「はぁ……はぁ……」


──暑い! 暑すぎる!

気付けば服の内側まで汗でべったり。


うーん、今回はここまでかな。

暑すぎて1時間が限界だね。





ギルド集会所に戻ると、ひんやりした空気が肌に触れて生き返る。

というか、汗が冷えて寒いよ……。

早く帰ってシャワー浴びたい……。


いつもの受付に向かい、いつもの係員さんを呼んでもらう。

しばらくして現れた係員さんは、私の顔を見るなりちょっと嫌そうに目を細めた。


「……お疲れ様です。またレアドロップばかりですか?」

「お疲れ様です! ど、どうなんでしょう……? レアドロップかは分かりませんが、ワイバーンとバジリスク、それとオルトロスのドロップアイテムを報告します」


アイテム欄からドロップアイテムを取り出していく。


──ごろん。


「えっ、タマゴ!?」


係員さんの視線が、目に見えて固まった。


「はい、これがワイバーンので、これがバジリスクのらしいんですが……」

「へえ、こりゃまた珍しいですね……飼うんですか?」

「いえ、そういうわけじゃないんですが……。これしか落としてくれなくて……」

「な、なるほど……。でもかなりの価値がありますよ。魔獣使いにも、料理用にも需要が高いですし」

「魔獣使い、ですか?」

「あれ、ご存じないですか? 魔物を調教して戦わせる職業ですよ。大抵は野生の魔物を捕まえてきて調教するのですが、タマゴから育てた方が強く、そして従順なんだとか」


係員さんとそんなやり取りをしつつ、一通りドロップアイテムを確認してもらった。

記録を取り終えた係員さんは、いつも通り苦々しい顔をする。


「これで全部ですね。……今回はなんて説明しようかな。あっ、全部持って帰りますよね?」

「はい、持ち帰りでお願いします!」


頭を悩ませる係員さんに申し訳なく思いつつ、私たちはそそくさとギルド集会所を後にした。





ギルドルームに戻ると、リンドールさんが待ってましたとばかりに駆け寄ってきた。


「サキさん! お帰りなさいませ。如何でしたか?」

「暑かったです……じゃなくて、ドロップアイテムですよね。今、見せますね」


そう言って、アイテム欄からまずは血結晶を取り出す。


「……? どこから取り出しましたの?」

「アイテム欄です」

「??? ……それよりも、これって血結晶ではありませんか!」


やっぱりリンドールさんは知ってたみたい。

説明文にも錬金に用いられるって書いてたしね。


「かなり有用な錬金素材ですわ」

「やっぱりそうなんですね、これで何が作れるんですか?」

「そうですわね、組み合わせで色々作れますが、有名なところだとマナエーテルですわね」

「マナエーテル?」

「体内の魔力量を回復する薬ですわ」


え、それってめちゃめちゃ凄くない……!?

それさえあれば、私の魔力回復遅すぎ問題も解決するんじゃ……。


「すごいです! それって、作れますか?」

「……やってみますわね!」


というわけで、血結晶をリンドールさんに手渡す。

もうあるだけ全部手渡したら、リンドールさんが目を丸くしていた。

「……パンさんが仰っていたこと、本当ですのね……」とか言ってたけど、何言われてたんだろう……。


私とアルテミスでシャワーを浴びる間に、マナエーテルなるものを作ってもらうことに。

汗を流し生き返った私たちが出てくると……。


「ひぃー!」とか「のぉー!」とかの悲鳴が、リンドールさんの錬金部屋から聞こえてくる。

だ、大丈夫かな……。


──それからしばらく、髪も乾いたころに、やっとリンドールさんが錬金部屋から出てきた。


「……ちょーっと失敗したのですが、できましたわ!」


そう言って手渡されたのは、緑色の液体が入った薬ビン。

なんだかドロッとしてるし、よくよく考えるとオルトロスの血からできてるんだよね……。

めちゃくちゃ飲みたくない気持ちを抑えつつ、アイテム欄に入れて効果を確認する。


────────────────────

【粗悪なマナエーテル】 錬金に失敗したマナエーテル。飲むと魔力を10回復する。

────────────────────


おおっ! ちゃんと魔力を回復するみたい!

……この際、説明文は見なかったことにしよう。

しかも10って結構大きいよね。


「凄いです! 魔力を10回復できるみたいですよ! さすがリンドールさん!」

「……! 頑張った甲斐がありましたわ……! 何度失敗しても諦めなくてよかったですわ!」

「な、何度か失敗したんですね?」

「はいっ! 血結晶は全て使ってしまいましたわ!」


……まあ、新しい錬金設備にしてから初めての錬金だもんね?

慣れるまで大変ってことだよね。それは仕方ないよ。


「じゃあ、早速飲んでみていいですか?」

「い、いいですが……」

「じゃあ、遠慮なく! ごくっ──げえええええええっ!?!?」


苦い、苦すぎる……!?

ひ、人──いや、生命が耐えられる苦さじゃない……

し、視界が霞む……。


「死ぬほど苦いですわよ? 良薬口に苦しともいいますし。……大丈夫ですか?」


大丈夫じゃない……。

二度と飲まない、と心に決めたのだった。


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