039 灰焔の地下溶岩洞!①
ギルド集会所の奥──ダンジョンクエストを受けた冒険者しか入れない通路を抜けて、転移用の小部屋に辿り着く。
壁沿いにいくつも並ぶ魔法陣の中から、受付嬢さんに言われた赤い魔法陣を探した。
……おっ、あったあった!
これが、灰焔の地下溶岩洞行きの魔法陣なんだとか。
色で分かれてるから間違えなくていいね。
ゴブリンズにもちゃんとついてくるように話して、私とアルテミスで転移の魔法陣に乗る。
──踏んだ瞬間、視界がダンジョンの中に切り替わる。
まず感じたのは、凄まじい熱気……。
まるでサウナの中にいるような暑さ。
風を感じる分サウナよりはマシだけど、それでも汗が出るほど暑い……。
エルフって暑いのとか寒いのが苦手なイメージがあるんだけど、アルテミスは大丈夫かな。
そう思いアルテミスを見ると、いつもの表情と変わらないけど、頬に汗が伝っていた。
「あっついねー! アルテミス、大丈夫?」
「はい、問題ありません。マスターも大丈夫ですか?」
「うん、でも長時間は居たくないね……」
そのうち、後ろから転移してきたゴブリンズがやってきた。
「二人ともちゃんと来れたみたいで良かった!……全然暑くなさそうだね?」
ゴブリンズは無表情のまま私を見つめる。
汗もかいてないから、何だか私の感覚がおかしくなった気がしちゃうよ……。
改めて周囲を見渡す。
黒裂結晶の洞窟とは違って、ここは外……なのかな?
上を見上げれば、なんだか薄暗いけどちゃんと空が広がってる。
今いる通路も、山と山の隙間道って感じ。
ダンジョンって、もしかしてこの世界のどこかにあるのかな……?
とりあえず、暑いしさっさと先に進もう……。
前と同じく、フォーメーションはジョンソンとブルースが前で、私とアルテミスが後ろ。
前はガルムちゃんを頭の上に乗せてたから、少し寂しい感じがするな。
通路を抜けると、視界が開け、大部屋に辿り着いた。
受付嬢さんが言ってた通り、黒曜石の床に細いマグマが何本も流れている危険な場所。
ちゃんと足元を見とかないと危ないね、これは……。
周りには、数は多くないけど冒険者のパーティが。
みんな自分の身長くらい大きな剣や、私じゃ絶対装備できないくらい重そうな鎧を身に着けてる。
暑くないのかな……と思うと同時に、私たちの服装が凄く浮いてる……。
ゴブリンズに至っては上裸だし……。
「マスター、頭上に気を付けてください。ワイバーンです」
アルテミスに言われて見上げると、そこには悠々と空を飛ぶ魔物──ワイバーンの姿があった。
前脚がそのまま翼になってて、胴体はごつごつした鱗で覆われている。
なんだかドラゴンって感じでかっこいいかも。
空にいるワイバーンに気を付けつつ、足元にも注意を払わないといけない──やっぱり難易度はずっと上がってるね。
確か、受付嬢さんによると他にも魔物が──いたいた。
のっそのっそと四足で歩くのは、巨大な黒いトカゲのような魔物。
黒曜石みたいに艶のある鱗、首から背にかけて短く並ぶ棘、鋭い歯が並ぶ口から垂れる涎からは煙が上がっている。
あれが、バジリスク。
続いて、灰色の犬のような魔物──オルトロス。
特徴は、どう考えてもあの頭。
だって二つあるもん……!
どれもこれも、これまでとは打って変わって、まさに魔物って感じで手強そう。
「ジョンソン、ブルース……いけそう?」
私がそう言うと、二人は無言で頷いて、早速魔物たちに向かって歩いて行った。
ジョンソンはバジリスクに、ブルースはオルトロスに。
やる気満々で素晴らしいけど、初めての魔物だからちょっと心配だな……。
そうだ、アルテミスなら何か知らないかな?
そう思い、聞いてみることに。
「アルテミス、バジリスクとかオルトロスとかがどんな魔物か知ってる?」
「はい。バジリスクは毒を吐き、オルトロスは火の息を使ってきます」
「毒!? 火の息!?」
やっぱりこれまでとはレベルが違うね……二人とも大丈夫かな……。
ゴブリンズの強さは十分わかってるつもりだけど、やっぱり少し心配。
これが親心……?
──そんな私の思いは、嬉しいことに杞憂に終わった。
ジョンソンがバジリスクに詰め寄ると、それを迎え撃つようにバジリスクの顎が大きく開いた。
あれはきっと、アルテミスが言ってたように毒を飛ばそうとしてるんだろう。
だけど、それは叶わない。
ジョンソンが片手で口──上顎と下顎をまとめて鷲掴みしたから、口を開けることができなくなったからだ。
バジリスクは何とか抜け出そうと、首を振り、四肢を踏ん張り、尻尾をばたつかせる。
でも、ジョンソンの腕はびくともしない。
ジョンソンはそのまま、バジリスクの巨体を持ち上げると地面に何度も叩きつけてフィニッシュ。
バジリスクは悔しそうに煙となって消えていった……。
そうだよね、自慢の毒も披露できずに終わるなんて……。
一方のブルースも、心配なし。
オルトロスが猛スピードで突進してくる。
左右の頭が別々の唸り声をあげ、片方がブルースに噛みつこうとする。
──のだけど、ブルースはその頭を普通に手で押さえつけた。
親が子供、いや、赤ちゃんのハイハイを手でとめるみたいに。
でもオルトロスも負けじと、もう片方の頭から、あっつそうな火の息攻撃!
ごうっと灼けた風がブルースの上半身を包み込む!
──んだけど、ブルースはなんのその、ただ息を吹きかけられただけ、って感じで、オルトロスを見つめる。
火の息が止む。
オルトロスも理解ができないのか、二つの頭が同時に首を傾げる。
ちょっと可愛かったけど、そのままブルースのボコボコパンチを受けて、オルトロスもKO。
確かにスライムとかと比べれば危険度は段違いなんだろうけど、ゴブリンズくらい強ければ関係なさそう。
まあそうだよね、第六天位と闘えるゴブリンズが、第三天位で入れるダンジョンで苦戦はしないと思ってたよ。




