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037 金欠……!

10万ギルドポイントもあったのに、引っ越し(というか錬金設備)だけで一気になくなっちゃった私たち。


リンドールさんは「これでも特別価格と言われましたわ!」と言ってたけど、

今後リンドールさんが買い物に行くときは私たちもついていこうと心に決めた……。


こうなると、まず気になるのは私たちの残ってるギルドポイント。

これからはこの新しいギルドルームの家賃で、毎月5,000ギルドポイントを支払わないといけない。

せめて、来月の支払い分くらいは残ってるかな……?


そう思って受付嬢さんからもらったブレスレットを見てみると、何だか全然残ってる。

これはどういうこと……?──と思ったら、まだ家賃や家具、錬金設備の支払い手続きが終わってないから反映されてないんだとか。

大きな額のギルドポイントのやり取りは、中々反映されない──何だか、元の世界を思い出す。


というわけで、とりあえずみんなで元々のギルドポイントと支払わなきゃいけない額を出してみて、試算してみることに。


結果──


「4,300……」


絶句。

これじゃあ、来月の家賃支払いも危ういじゃん!?


「お、おかしいな……10万よりもうちょっとなかったっけ……?」

「……引っ越しも、初期費用でちょい多めに払っとるのもあるな」


あー、あるある! 最初の月って結構かかるよね!

引越ってなんであんなお金かかるんだろうねー

──じゃなくて!


「これはマズいで……とりあえず来月の支払い分は稼がんと」

「そうね。早速で申し訳ないけど、サキちゃん、またダンジョンに行けるかしら?」

「はい!──あっ、でも、私いま魔力が……」


ギルドバトルで限界を超えて召喚しちゃったから、今の魔力はマイナス。

だけど、三日前に取得したスキル──【魔力回復量増加Ⅰ】と【帳尻合わせ(バランサー)Ⅰ】のおかげで、私の魔力がマイナスのときは毎日の魔力の自然回復量が4になっているんだよね。

そのおかげで、私の今の魔力量は-14。

それでもマイナスだけど、随分と早く回復したほうだよね。


というわけで、あと四日待てばプラスになって召喚できるようになると伝えると。


「四日か……まあ待てんことはないけど、予想外の出費があった場合にマズいから、早めに、あと多めに持っておきたいとこやねんな」


予想外の出費──

リンドールさんにみんなが目を向けた。


「……? わたくし、本当にグランベルジュにきてよかったですわ!」

「……リンちゃん、煽ってる?」

「……?」


リンドールさんはもうこの際おいといて。


パンさんの言うことももっともで、私の体調が明日突然悪くなったらもう家賃も払えなくなっちゃう。

やるなら、今すぐにでも行った方が良いんだよね。


「ほんなら、またあのよくわからんアクセサリー重複、やってみよか?」


それって、私がピンと伸ばした指に、みんなが【低級魔石の指輪】を嵌めまくる、あの……?

あれって、ギルドバトルオンリーの隠し種のつもりだったけど……。


でも、今二十四個持ってるから、全部着ければ+24されるので、魔力は10。

余裕をもってゴブリンズを通常召喚できるので、明日以降もダンジョンに行ける、か。

それに、私のスキル的に魔力がマイナスの方が回復早いし、その方がいいんだよね……。


──と、いうわけで。


「よーし、ほんなら人差し指からいくで!」

「はい、お願いしますっ!」

「サキちゃん、相変わらず指綺麗ね」

「ありがとうございます!」

「……マスター、薬指、失礼します」

「え? うん、どうして緊張してるの……?」


私たちは裏庭に移動し、また例の作業が始まった。

……実はこれ、結構しんどいんだよね……。


なんて思っていると、二回目でもう慣れたのか、すぐに全部嵌め終わった。

よし、じゃあ早速ゴブリンズを召喚しよう。

今回は【時短召喚術】はナシ──いつもの癖で言わないようにしないと!


「【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン!」


いつもの文句を唱えると、目の前に見慣れた黄色い魔法陣が展開される。

その中から、これまた見慣れたまるーい頭の剛体種ゴブリン──ジョンソンが姿を現した。


「はあー、何度見てもデカいなあ! ゴブリンとは思えへんわ」

「これで一時間の制限なしになったの?」

「そのはずです! アルテミスも帰ってないですし!」


私たちがそんなやりとりをしていると、リンドールさんが呆然とジョンソンを見上げていた。


「お、おおきいですわね」

「大きいだけじゃなくて、とっても強いんですよ! 第六天位を倒したんですから!」


ジョンソンの腕には、その時の激戦で負ったらしい大きな傷が──あれ?

もう治ってる……。流石、剛体種……。


「第六天位を……! とんでもないですわね。そして、それを召喚できるサキさんは一体……」

「それはそうなんや。慣れてしもたけど。……サキはん、どうする? もう一体いっとくか?」


……私の脳裏に、ガルムちゃんの姿がちらつく。

もう一度会ってモフモフしたい……けど、今はそれどころではないのだ。


私は頷くと、再度、召喚の文句を唱える。


「【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン!」


今度現われたのは、ブルース。

ギルドバトルでは、相手の建造物の入り口を守り切った、陰の立役者。

ブルースくんのおかげで、相手は籠城戦に持ち込むことが出来なかったんだよね。


「も、もう御一方……。彼も第六天位相当なのですか?」

「そうだよね、ブルース!」


私の言葉に、ブルースはただ見つめ返す。

まあ、第六天位とか言われても分かんないよね。


……あれ? そういえば。


「アルテミスとか、ジョンソンたちは冒険者になれるんですか?」


私の問いかけに、パンさんとペールルージュさんは見合った。


「なれるんとちゃうか? そんな制限、聞いたことないけど」

「……もしかしてサキちゃん、彼らにグランベルジュに入ってもらう気?」

「はい、思いつきなのでできるか分かりませんが、ゴブリンズに冒険者になってもらって、ダンジョンに行ってもらえば、私付き添いも要らないんじゃないかな、って」

「なるほどなぁ、それは妙案かもしれん。ウチが分からんのは、剛体種ゴブリンがどれくらい複雑な命令をきけるかやな。この二人は頭良さそうやけど、他のは知らんしな」


確かにパンさんの言う通り、ギルド集会所で暴れられたら……。

ジョンソンとブルースはそんなことにはならなそうだけどさ。


「それに、サキはんのアイテム欄?っちゅうんは使えへんやろ? 今回はすまんが、付き添ってやってくれ」

「確かに……。分かりました! 行く先は、また黒裂結晶の洞窟ノワール・コルスティアですかね?」

「いや、今回はもっと難易度高いとこにしよや」


パンさん曰く、黒裂結晶の洞窟ノワール・コルスティアは第三層以降も現れる魔物が変わらないんだとか。

つまり、スライムやゴブリン、ガルムとかばっかり。

やっぱりもっと強い魔物を倒した方が、ドロップアイテムの価値も高くなりやすいみたい。

もっと奥まで行くと変わるらしいけど、真剣に奥を目指すとなると、ダンジョン攻略用の装備やらパーティが必要なのでやめておく。


「サキはん、第三天位になったんやろ? ほんなら、新しいダンジョン行けるはずやし……。灰焔の地下溶岩洞(アッシュ・フレマグラ)とかどうや?」


と、いうわけで、私は新しいダンジョンを探索することになった。


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