003 初めての召喚!
パンさんの案内でやってきたのは、町外れにある建物の一室。
「グランベルジュのギルドルームへ、いらっしゃーい」
パンさんがギルドマスターを務めるギルドの名前は、グランベルジュ。
そのグランベルジュのギルドルームはというと、古びた──いや、味のある一室だった。
本棚に収まり切らず、机や絨毯の上に山積みにされた本や書類を、暖炉の優しい灯りが照らしている。
……あと、埃の匂いがすごい。
「パン。その子は?」
長机の横のソファーに深く座っていたのは、短い金髪の女性。
キリッとした目が大人っぽく見えるけど、私と同じくらいの年齢かな。
ギルドメンバーかな、仲良くなれるかな……。
「ルル、今日は早かったんやな。この子はサキはん。今日からグランベルジュに入ってもらうんや。サキはん、コイツはペールルージュ。ウチの仲間や」
「はじめまして、今日からお世話になります、サキです!よろしくお願いします!」
私は深々と頭を下げる。
「よろしく。……また新しい子連れてきたの」
「ま、また?」
「おいルル! 余計なこと言わんでええわ!……まあサキはん、あんま気にせんでな」
な、何だか所属早々、不穏な空気が……。
「で、サキちゃんは何ができるの?」
「わ、わたしは──」
「サキはんはステータス不足で五大ギルドに参加できへんかったから、ウチで雑用係にしよ思っててな」
「……え?」
ざ、雑用係……?
私って、冒険者になるんじゃ……?
「なるほど、例の件については別の人を探してくるわけね」
「せや、ウチは当分そっちに係りきりになるやろから、他の作業はサキはんに任せよ思ってな」
「あ、あのー」
「ん、なんや?」
「私、雑用係、なんですか?」
「いや当たり前やろ! 戦う能力がないんやから、そっち方面で活躍してもらわな! 早速やけど、このギルドルームの掃除よろしく頼むわ! ウチはこれから出かけてくるから!」
「えっ!?あの、ギルドについての説明とか……」
「そんなん後や、あと! ウチも忙しいねん。ほな、ウチが帰ってくるまでにキレイにしといてなー」
「じゃあ、私も。これからよろしくね」
そう言うと、パンさんとペールルージュさんはバタバタと部屋を出ていってしまった。
「え、えぇ〜……!! 聞いてないよ!」
……でも、ここで「やってられっか!」ってバックれても行く先もない。
ここは素直に、部屋の掃除でもしてよう。
本や書類は──触って良いか分からないな。
とりあえずゴミっぽいものを一箇所にまとめて、そこにある雑巾で拭き掃除かなぁ。
「そういえば……」
転生のバタバタで忘れかけてたけど、私って召喚士だったよね?
掃除を代わりにやってくれたりしないかな。
そう思い、私はメニューを表示させる。
──うん、この世界でもちゃんと表示させることができた。
何かを念じるだけで表示されるから簡単だ。
で、召喚するには──これかな?
私は『スキルツリー』を選択する。
すると、召喚士に関するスキルツリーが表示された。
どうやらシステムとしては、スキルポイントを消費してスキルを習得していく形式みたい。
レベルが上がると、習得できるスキルも増えそう。
私が今もってるスキルポイントは1か、じゃあ取れるスキルはこれだけってことね。
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【亜人召喚Ⅰ】 ゴブリン、エルフを召喚できる。
【低魔召喚Ⅰ】 スライム、ガルムを召喚できる。
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この中で一番掃除できそうなのは【亜人召喚Ⅰ】のエルフだよね。
スライムだと本とか溶かしちゃいそうだし。
というわけで、【亜人召喚Ⅰ】を選択すると、スキルポイントが1消費されて、【亜人召喚Ⅰ】が解放された。
よしよし、ここまでは順調……だけど、どうやって召喚したら良いんだろう?
とりあえずステータスを見てみると……。
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人間 召喚士 Lv. 1
【体 力】 10
【魔 力】 10
【持久力】 10
【攻撃力】 1
【防御力】 1
【 運 】 999
【速 度】 1
【知 力】 1
【精神力】 1
【スキル】 亜人召喚Ⅰ
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スキル欄が増えて、”亜人召喚Ⅰ”と表示されていた。
うん、ちゃんとスキルを習得できてるみたい。
とりあえずスキルをタッチしてみると、なんと発動方法まで丁寧に書いてあった。
──曰く、スキル名と召喚する魔物を呟いて、いつものように何かを念じれば良いらしい。
何かって……何なんだろう。
ちなみにエルフを召喚するのに必要な魔力は10、ゴブリンは4とのこと。
これなら、私の貧弱な魔力でもギリギリエルフを召喚できそうで良かった。
私は早速エルフを召喚してみることにする。
「えーっと、【亜人召喚1】──エルフ!」
そう呟き何かを念じると、目の前に青白い魔法陣が現れて、光が人を象ったと思うと、そこには騎士のような女性の姿があった。
エルフというイメージから、細い女性が出てくると思っていたんだけど。
「初めましてこんにちは! 私はサキと言います。貴女を召喚しました。……言葉、分かりますか?」
「……」
「あれ、もしかして分からない?」
どうしよう、伝わらないとなるとどうやって指示を出せば良いんだろう。
「か──」
「か?」
「かわいい……私のマスター……」
「……え?」
「──! すみません、マスター。私は王騎士アルテミス」
「あっ、よかった! 言葉が通じる! アルテミス、良い名前!」
「……何とありがたきお言葉。マスター、我が命、これよりマスターに託します」
そう言って、アルテミスは跪いた。
「そ、そんな! 嬉しいけどそんなに畏まらないで大丈夫!」
どうやら、私の指示を聞いてくれそう。
とりあえず、パンさんたちが帰ってくるまでに掃除は終わらせておかないと。
「召喚したばっかりでごめんね、アルテミスを召喚したのは、この部屋の掃除を手伝って欲しかったの」
「……それだけでよいのですか?」
「え、うん。ごめんね、雑用で呼んじゃって」
「いえ、何でもご命令ください、マスター。命を賭けて、掃除を遂行します」
「いや、命はかけなくてもいいよ?」
その後、アルテミスは恐ろしいスピードでギルドルームの掃除をしてくれた。
私も手伝おうと思ったけど、アルテミスがめちゃくちゃ止めてくるので、仕方なく椅子に座って見ていることにした。
何だか雑用を部下に任せてくつろいでるみたいで嫌なんだけど、言われてしまったらしょうがない。
私がアルテミスをじーっと見てると、気になるのかチラチラ見てくるので、適当にその辺りの書類でも見ていることにした。




