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026 秘策……秘策?

「くっそ!! あのガキ舐め腐っとんな!!」


自陣営へ戻る道中、パンさんがそう叫ぶ。


確かにレードさん、オルダンさんが出ないと聞いた瞬間から余裕の表情だったかも。

でも、油断してるってことは作戦成功。


「もー知らん。始まったら例の作戦でぶちのめしたれや!」

「はいっ!!」


みんなで開戦の時を待つ。


「……ええか、開始5分前になったら準備始めるんやで」


私は頷き、『アイテム』を開いておく。


──開始5分前。

……そろそろかな。


「……始めます!」

「よっしゃ!」


私はアイテム欄から”アレ”を取り出し始める。


私の秘策中の秘策、その正体は──


これ。

【低級魔石の指輪】──24個。


……そう! 私の策略とは、単純明快──魔力が1上がるこの指輪を大量に装備すること!!!


装備品で魔力が1増えると、使える魔力が1増えることも、この前のアクセサリー屋さんで確認済み。

つまり、私がこの指に24個の【低級魔石の指輪】を装備すれば、12体の剛体種ゴブリンを召喚することができるのだ!!!


言ったでしょ? 無い頭を捻ったって。


どうやってこんなに指輪を買ったかって?

そりゃもう、ドロップアイテムですよ。

この前の、二回目のダンジョン探索で得たドロップアイテムを全て運営に売り払ったんだよね。

そうして得られるギルドポイントを全てお金に変えれば、すぐにまとまったお金を用意できる。

前に係員さんにいくらで売れるか聞いといて良かった……。


あとは、この前のアクセサリーショップにパンさんと突撃して、買えるだけの指輪を買ったというわけだ。

あのときのパンさんの交渉術ったらなかったね!

1個金貨4枚のところを、値切りに値切って金貨3枚にするなんて。


そんな昨日のドタバタ劇を思い出しながら、

みんなに【低級魔石の指輪】を嵌めてもらっていく。


「もう薬指入らんわ、中指いこか」

「はいっ!」

「サキちゃん、手キレイね、手タレいけるんじゃない?」

「そ、そうですかね、へへ」

「マ、マスター……お手を拝借……」

「いやそれ一本締めのやつ!!」


みんなでバタバタしていると、ギルドの命運を賭けたバトル直前なのにいつもの和やかな雰囲気になってくる。

こうなれば、もうこっちのもの。


「よしっ、全部着け終わったで!……なんや胡散臭い占い師みたいやな」

「ひどいっ!?」


私の指には、合計24個の指輪が。

めちゃくちゃ動きづらいけど、別にいい。

私は動く気ないからね。

代わりに、ルーアンさんたちの巨大盾でひたすらに守ってもらうから。


そして、私の秘策はまだ終わらない。


「ルーアンさん、アレお願いします!」

「これですね。……大変だったんですから」


そう言って、突き出した私の両手のひらの上にルーアンさんが”武器”を置いた。

──これは、【鉄の杖】。

この杖の先端には魔石がついており、杖身には付与の術式がしっかりと彫り込まれている。


そう、武器で攻撃力が上がるなら、杖で魔力が増えてもおかしくない!

ドルトステラの皆さんに無理言って、私用の杖を作ってもらったのだ!


さらに極め付け──


ドルトステラの人に貸してもらった、良い感じのネックレス!!!


もうなんでもあり、私の魔力が上昇する可能性のあるものは片っ端から装備する!!


それが、無い頭で考えた苦肉の策。


でも──


────────────────────

 人間 召喚士 Lv. 6

 【体 力】 13

 【魔 力】 40(15+37)

 【持久力】 12

 【攻撃力】 1

 【防御力】 1

 【 運 】 999

 【速 度】 1

 【知 力】 1

 【精神力】 1

 【スキル】

  亜人召喚Ⅰ 低魔召喚Ⅰ 時短召喚術

  獲得経験値増Ⅰ

────────────────────


ご覧の通り、魔力は40!!!


これだけあれば──。

後は、私の昨日の練習の成果を発揮するだけ。


──開始2分前。

そろそろ、始めようかな。


私は大きく息を吸う。


そして。


「【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン。【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン。【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン」


私が一つ言い終えるたびに、目の前に黄色い魔法陣が一つ展開され、そこから剛体種ゴブリンが姿を現す。


──そう、このために昨日、ひたすら早口言葉を練習したのだ!!

これでもう嚙まないからね。


「【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン。【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン。【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン。【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン。【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン」


私はひたすら、ただひたすらに剛体種ゴブリンを召喚していく。

目の前に大量に現れる剛体種ゴブリンたち。

その中には、もちろん顔なじみのジョンソンとブルースの姿もあった。


剛体種ゴブリン、その数、20体。


向こうの数と比べると少ないけど、こっちは期待通り、全員が剛体種ゴブリンズ。

ジョンソンとブルースを筆頭に、とにかく数以上の威圧感がある。


間に合った。

今回の作戦は、ギリギリまで手の内を明かさず、直前にゴブリン軍団を召喚すること。

相手も急造のギルド群──連携は取れないだろうし、ギルドが三つとなると指揮系統もぐちゃぐちゃだというパンさんの予想もあった。

つまり、私たちが想定外のことをしたときに、向こうは冷静な対応を取れないはず。


ゴブリン軍団は足が遅い。

だから「無視して後ろの私を狙おう」とか、そういう判断をされるとどうなるか分からないからね。

こういう対策が練られたのも、第三天位の昇格試験での経験のおかげだ。


──向こう陣営の大きなざわめきの中、ギルドバトル開始の時刻となった。


「うおおおお! 試合開始じゃああああ!!! サキさん行けえええええ!!!」


何故か私びいきの受付嬢さんが、開始のゴングが鳴らす。


後は──


「みんな! 二人一組になって!」


私の声に、ゴブリンズたちが一斉に頷くと隊列を作っていく。


「いい? 一回しか言わないからよく聞いて。右のゴブリンが、左のゴブリンを敵陣に放り投げて! 放り投げられた子は、相手を死んじゃわない程度に痛めつけて! じゃあ、作戦開始!」


第三天位への昇格試験でジョンソンとブルースがやってくれたやつだ。

これで、相手陣営が混乱している間に一気に片を付ける……!


ゴブリンたちは私の作戦通り、相方を敵陣に放り投げていく。


──どすん。

──ずどん。


砲弾のような勢いで敵陣の只中に飛来する、剛体種ゴブリンたち。

悲鳴と怒号が一斉に跳ね上がり、敵陣は混乱の渦に飲み込まれていった。


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