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022 同盟を結ぼう!

ということで、ドルトステラのギルド本部にやってきた私たち。

流石は赤ギルド群の上位ギルド……建物一棟まるごとギルド本部なんだとか。


「邪魔するでー!」

「お邪魔します!」


パンさんに続いて私とアルテミスも中に入る。


ドルトステラ本部の一階は鍛冶場になっていて、みんなカンカンと鍛冶に勤しんでいた。

こういうところもギルドの特色が出て面白いところだよね。

みんな一瞬だけ私たちに目をやって、またすぐに鍛冶に戻っていく。


「噂をすれば、だな」


そんな中立ち上がったのは、オルダンさん。

オルダンさんはこのドルトステラのギルドマスターで、昔は”烈火のオルダン”の呼び名で有名な凄い冒険者だったんだよね。

そう思って見ると、確かに威厳ある立ち振る舞いをしてるかも……。

ほら、ヒゲとか。


「グランベルジュ……!」


オルダンさんの横に立っていたのは、ルーアンさんだ。

この前のギルド市では一悶着あったけど、ルーアンさんの鍛冶の腕前は本物。

500ギルドポイントで購入したルーアンさんの剣を、あのアルテミスが褒めてたんだよね。


「オルダンはんにルーアンはん! 今日おってくれて良かったわ……。実はやな──」

「待った。込み入った話のようだ、奥で話すとしよう」


確かにオルダンさんの言う通り、立ち話で済む内容じゃないかも。

それに鍛冶の音で聞こえづらいしね……。


というわけでオルダンさんに通された先は、ギルドの会議室。

これまた広くて綺麗な部屋……なんだかギルドの実力差を感じちゃう。

そして何より驚いたのが……。


「──えっ、鍛冶の音が聞こえない……!」


さっきまでカンカン音がしてたのに、部屋に入った瞬間に聞こえなくなった。


「ああ。そうなるように設計しているからな。鍛冶の音で話が聞こえないとなると困るだろう?」


そう言って笑うオルダンさん。

……だけど、こんなに明確に音を遮断なんてできるの?

……と私が不思議に思っていると。


「良く見てみ。壁に描かれてるアレ、模様みたいやけど実は魔法回路や」

「──えっ!?」


パンさんの言う通り、壁一面には美しい紋様が彫られていた。

これが全部、魔法回路……!?


「音を遮断する系統の術式やろな、こりゃギルドの力の差を感じてまうわ」


そう言って苦笑いを浮かべるパンさん。

確かに、ただギルド本部に来ただけなのになんだかギルドの格の差を感じちゃう。


……なるほど、ギルドルームもちゃんとしとかないと、人が来たときに呆れられちゃうな。

今のグランベルジュのギルドルームには、とてもオルダンさんたちを呼べないもんね……。


大きなテーブルを囲むように並べられた椅子に、奥から座っていく。

参加者は、ドルトステラ側がオルダンさん、ルーアンさんで、私たちはパンさん、アルテミス、私だ。


皆が席に着いたのを確認すると、パンさんは早速話し始めた。


「早速やが、本題に入らせてもらうわ。あんま時間が無くてやな……」

「ああ、構わない」

「話が早くて助かるわ。実はやな……よー分からんギルドからギルドバトル吹っかけられてしもて」

「ほう? どこから?」

「”パラッパ・レード”っちゅうギルドや。知っとるか?」


パンさんの問いかけに、オルダンさんは首を横に振った。


「聞いたことが無い。少なくとも五大ギルド群の上位ギルドでは無いだろう?」

「その通りや。とは言うても、ウチらよりもずっとギルドメンバーも多くてな。まあ、端的に言うと助けてくれっちゅう話や」


パンさんがそう言うと、オルダンさんは顎に手を当て、短く息をついてから口を開いた。


「ギルドバトルはいつだ?」

「あ、明後日なんや……」

「なるほどな。確実に勝ちに来てるわけか。……具体的な戦力差は?」

「詳細はウチのギルドメンバーに調べてもらっとる最中やけど、向こうのギルドメンバーは十八人。対するこっちは、戦力になりそうなんが二人や」


パンさんは肩を落として、短くため息をついた。


「なるほど。戦力差も絶望的、というわけだな」


オルダンさんは状況を測るように、パンさんをじっと見た。


「ま、まあな。とはいえ、向こうの十八人も全員が全員、戦力かは分からん。ウワサやと錬金術師やらなんやら色々いるっちゅう話や」

「それで言うと我々も同じだろう。ドルトステラは鍛冶師を志す者が大半のギルド。真面目に冒険者をやっている者は半数にも満たない」


オルダンさんの話によると、ドルトステラは基本的にみんな鍛冶師を志していて、オルダンさんのもとで鍛冶技術の向上を目指してるギルドなんだとか。

ギルドマスターがオルダンさんなこともあって、他からギルドバトルを仕掛けられることもなく、みんな安心して鍛冶に没頭できる環境なんだって。


とは言っても、全員が全員、鍛冶師専門というわけじゃないみたい。

自分が造った最高の剣を使って、冒険者として名を挙げたい──そんな人もいるんだとか。


「そうは言っても昔は冒険者やったんが大半やろ? ウチらよりよっぽど戦力になるはずや。それに、烈火のオルダンがおれば──」

「なるほど、私の力を借りたい、というのが本音というわけか」

「……せや。ギルド市での一件もあるしな。ウチらを助ける思って力貸してくれへんか?」


そう言ってパンさんが頭を下げる。

私も慌てて頭を下げた。

──あ、アルテミスはじーっとオルダンさんを見つめていた。


「……なるほどな。状況は分かった。──ルーアン、どう思う?」


オルダンさんがルーアンさんに視線を送る。


「……この前の一件については、剣を半値で売ったことで借りは返したつもりです」


──えっ!?

そ、そうだった……!

私、借りを返させちゃってた……!!


「──しかし、私は協力したいと思っています。これは貸し借りの話ではなく、善意として。師匠」


る、ルーアンさん……!!


「……分かった。ルーアンがそこまで言うのであれば、私は何も言うまい」

「よっしゃ! オルダンさんが出るとなればこっちの──」

「ただし、私が参加することはできない」


えーーっ!?


「ギルドマスターが参加してしまうと、ギルドバトルの全て──勝利した際の恩恵も、敗北した際の代償も支払う必要がでてくる。ギルドを預かる身として、負ける可能性の高い戦に賭けるわけにはいかない」


ギルドマスターが他所の戦に出ると厄介、って話はパンさんから聞いていた。

なるほど、それも理解できる……。


「ただし、協力を惜しむつもりはない。我々ドルトステラの戦闘が出来る七名を利用してくれ」

「七名か、まあそれだけいれば何とかなるかもしれん、か」


これで、こっちの戦力はアルテミス、ゴブリンと、ドルトステラの七人の合計九人。

パラッパ・レードの半分の人数だけど、一気に人数差が埋まったね。

アルテミスやゴブリンが相手の強い人を相手にして、他の人たちが1 vs 1になるように持っていければ、勝機は見えてきそう。


というわけで、ドルトステラと完全な形ではないにせよ、同盟を結ぶことになった私たち。


それでも不利な状況であることは変わりなく、私はずっと不安だった。

せめてもっと時間があれば、私の準備も整えることが出来たんだけど……。

でも負けたらどうなるんだろう、なんて考えてても仕方ないよね。


そう思った私は、アルテミスとしっかりご飯を食べて、早く眠ることにした。


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