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017 ついに本番、昇格試験!

いよいよやってきた、試験当日の朝。


ギルドルーム横のホテルに泊まっていた私たちは、会場へ向かう前に一度ギルドルームへ顔を出した。

今日はパンさんもペールルージュさんもいて、珍しくギルドメンバーが勢揃いだ。


「おはようございます!」

「おはよう、サキちゃん」

「おはようさん。なんや、めっちゃ気合い入っとるな」

「はい! だって今日、第二天位の昇格試験なんです!」

「あー、そういや今日か。まぁ、どうせ受かるやろから心配しとらんけどなー」


呑気にコーヒーをすすりながら、パンさんは言う。


「そうね。アルテミスちゃんも一緒に出るんでしょ?」

「はい! 召喚もオッケーらしいので、ゴブリンズにも戦ってもらうつもりです!」

「……なんちゅう過剰戦力や。いっそ第三まで一気に上げてくれへんかな」


そう言って笑うパンさんを見てると、私の緊張も解けてくる。


「はい。朝食、まだでしょ? 来るかもって思って用意しておいたわよ」

「えっ、いいんですか?」

「当たり前じゃない。……というか、パンが言い出したのよ。試験で緊張してるだろう、って」

「おいルル! 余計なこと言うなや!」

「えっ、でもさっきは……」

「ま、まあ、たまにはギルドマスターらしいことせな、サキはんに逃げられてまうしなー!」


そう言って頭を掻くパンさんを見て、私はこのギルドに入ってよかったって思った。





ギルドルームでの朝食を終えて、お腹も心も満たされた私とアルテミスは、いざギルド集会所へとやってきた。


私たちはギルド集会所の受付嬢さんに連れられて、転移用の魔法陣の上に乗る。

「頑張ってくださいね~!」と言って手を振ってくれる受付嬢さんに手を振り返した瞬間、私の視界は切り替わる。


──気付けば、私は中くらいの広さの闘技場のような場所に立っていた。

ここが、模擬戦闘用訓練場。

なんだか空気が冷たくて、余計に緊張しちゃうな……。


周りを見ると、すでに二人の受験者らしき冒険者が待っていた。

片方は大柄な男で、大きなハンマーを肩に担いでいる。

もう片方は軽装の女性で、こっちは弓使いみたい。


こういうカッコいい冒険者の姿を見ると、私も武器を持って戦いたい!──って思うけど、私のステータスじゃ絶対無理だよね……。


二人ともこちらをちらりと見たが、すぐに前を向き直す。


「受験者のサキさんですか?」


声のした方を見ると、そこにはギルド運営の制服を着た女性が立っていた。


「あ、そうです!」

「良かった、私は今日の試験担当のコナツと申します」

「コナツさん、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします。皆さん揃ってるので、早速説明を始めますね」


そうして、私とアルテミス、そして男女の冒険者が一人ずつ横に並び、コナツさんの説明が始まる。


「みなさん、本日はグラン=ラフィース冒険者昇格試験にお集まりいただきありがとうございます。改めまして、私は本日の試験担当兼、召喚士のコナツと申します」


召喚士と聞いて、私の中に親近感が湧く。

この人が召喚士か、後で話してみたいな。


「今日の受験者は──三名ですね」


私も、他の参加者も頷く。


「えー、サキさん、トルキルドさん、ハケミさんですね。トルキルドさんとハケミさんはパーティで、サキさんは……召喚獣のアルテミスさんとの参加──召喚士なんですか! 凄いですね、と自分で言うのも何ですが」


召喚士はやっぱり珍しいのか、コナツさんも何だか嬉しそうだった。

あとちょっと意外だったのは、アルテミスみたいな人型についても召喚獣って呼ぶんだね。


「それでは、まずは試験のルールを簡単に説明しますね。私が試験対象の魔物を召喚しますので、受験者の皆さんはどんな手を用いても良いので全個体を戦闘不能にしてください。──あ、私には攻撃しないでくださいね……」


とほほ、といった様子のコナツさん。

あの感じ、もしかしてこれまで攻撃されたことがあったのかな……。


「今回の第二天位昇格試験の対象は、スライム、ゴブリン、ガルムが各一体ずつ。制限時間は三十分です。……ルール説明はこんなところですが、質問はありますか?……大丈夫そうですね。それでは、早速始めましょうか。まずはサキさんからお願いします」

「えっ、私から!?」

「名前順です」


サキ……トルキルド……ハケミ──確かに名前順だと私なのか。


「わ、分かりました」


いきなりだと緊張しちゃうなぁ。

けど、アルテミスもいるし大丈夫だよね。

私とアルテミスはコナツさんの前に立つ。


「それでは、今回の試験対象であるスライム、ガルム、ゴブリンを召喚します」


コナツさんは何かを呟き始める。

そのまま手を前に突き出すと、そこには三つの魔法陣が展開される。

それぞれから現れたのはスライム、ガルム、ゴブリンの三体。

受付嬢さんから言われてた通りだ。


「あ、サキさんも召喚を始めてもらって構いませんよ」


あっ、そうだそうだ。

他の人の召喚する姿を初めて見るから気を取られていたけど、私も召喚しないと。

事前演習の通り、ゴブリンズでいいよね。


「【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン! あじぶ……【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン!」

「(……噛みましたね)」

「(……噛んでるマスターが可愛すぎる件について)」


もはや早口言葉だよ……

するとやってきてくれたのは、いつも通りジョンソンとブルース。


「──えっ、それって……異常個体?」

「えっ、何か知ってるんですか?」


私もジョンソンたちが普通と違うことが気になっていた。


「……と、とりあえず試験は行いましょう。では、開始です。みんな、お願い!」


コナツさんがそう言うと、ゴブリン、ガルムの目の色が変わる。


「こっちもお願い! 二人は前に出て戦って!」


そういうと、ゴブリンズは黙って頷く。

そのままジョンソンはゴブリンに、ブルースはガルムに向かって歩き出した。


──勝負は一瞬だった。

ゴブリンが間合いに入った瞬間、ジョンソンはいつもの右ストレート。

そして、いつもどおりワンパンケーオー。

ブルースも同様、ガルムを地面に叩きつけて、即終了。


最後に、ジョンソンがぷよぷよしているスライムを粉砕した瞬間、コナツさんの声が響いた。


「ここまで!……なんて力……やっぱり異常個体……。とにかく、サキさんおめでとうございます。第二天位に昇格です」

「やった!」


ゴブリンズの頑張りもあり、あまりにもあっけなく終わってしまったが、これで私も第二天位!

少しは舐められないようになったかな……。


なんて思っていると。


「すみません、サキさんに提案なのですが、第三天位の昇格試験も受けませんか?」

「……えっ!? そういうのもアリなんですか!?」

「いや、滅多にないんですが……。サキさんはギルドポイント的にも昇格条件を満たしていますし、あまりにも早く終わって時間が空いてますので……。それに、彼らがいれば問題なく合格できるはずです」


そう言ってコナツさんはジョンソンとブルースを見る。

確かに、さっきの感じだとまだまだ行けそうだったけど……。

でも、試験対象の相手次第なところもあるよね。


「……ちなみに、今度はどんな魔物なんですか……?」


「ガルムリーダー──まあ、ガルムの群れですね」


ガルムの群れ……ってことは、全然いけそうじゃない?

さっきの感じなら、問題なさそうだよね。

……パンさんも第三天位に早くなってほしいって言ってたし、受けてみようかな。


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