015 二回目のダンジョン!②
私の目の前に現れたのは、全く予想外の、小っちゃい白い毛玉。
「──えっ、かわいい」
あまりの驚きに、私は無言で召喚されたガルムに近づいて、抱きしめる。
ふわふわもふもふ、少し獣くさい。
──ああ、幸せ……。
じゃなくて!
全く予想外だった、まさかこんな可愛らしい魔物がいるなんて!
私の予想では狼みたいなカッコイイのが出てくると思ってたんだけど。
でも、こっちでいい、いや、こっちがいい。
私がもふもふして幸福度ゲージを高めていると、アルテミスが羨ましそうな顔をしているのが見えた。
「……アルテミスも触ってみる?」
「い、いえ! 私はマスターの護衛ですので、そんなことにかまけている暇はありません」
マスターがそんなことにかまけていてゴメン……。
「じゃあ、命令! ガルムちゃんを抱っこしておいてくれる?」
「……マスターの指示であれば!」
アルテミスの腕の中にガルムちゃんを手渡す。
「(……かわいい……!)」
嬉しそうなアルテミスと一緒に、しばらくガルムちゃんをもふもふした後、正気に戻って次の召喚に移ることに。
次の召喚は、スライム──ではなくて、ゴブリン二体にすることに。
というのも、本当はスライムも召喚してみるつもりだったんだけど、また戦力にならない子が出てきちゃったら困っちゃう。
まさかのガルムちゃんが戦闘要員じゃない──というか私の一存で絶対に戦わせない──ので、私の残存魔力5を無駄にしないためにも、ここは実績のあるゴブリンが良いと思ったわけだ。
そしてゴブリンを二体召喚する理由も単純で、試験当日に二体召喚するつもりだからその予行練習、というわけだ。
スライムはまた次回だね。
というわけで、いつもの詠唱。
「【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン! で、【時短召喚術】【亜人召喚Ⅰ】──ゴブリン!」
私がそう繰り返すと、目の前に黄色い魔法陣が二つ展開され、それぞれからムキムキのゴブリンが現れる。
──って、あれ?
この子、前回と同じ個体かも?
……いや、似てるだけかもしれない。
他種族となると見た目の違いも分かりづらいし、ちゃんと確認しておこう。
「あのー、この前のゴブリンだよね?」
私の問いかけに、ゴブリンが頷いた。
やっぱり! 同一個体なんだ。
しかも、前回召喚時の記憶まで引き継いでいるようだった。
同じ個体が出てきたことに少し驚きつつ、ゴブリン二体となると名前で呼ばないと指示しにくいなと思い、名前を聞いてみることに。
「二人とも、名前は何て言うの?」
私の問いかけに、二人は同時に首を傾げる。
名前が無いのか、それとも思い出せないのか分からないけど、
仕方ないので私がつけてあげよう。
ツルツルの頭とムキムキの体……そうだなぁ。
「えーっと、私の指示が通りやすいように、二人に名前を付けます。貴方は、えーっと……ジョンソン。 で、はじめましての貴方は、ブルースね」
私がそう言うと、ジョンソンとブルースが頷く。
「(……ネーミングセンスが独特……そんなところも最高)」
そんなアルテミスの心の内も知らず、私たちは第二層を目指して歩き始めた。
ちゃんと道を覚えることを意識しつつ、今回は基本的に第二層をメインにしたいため、第一層では奥へ進むことを優先して立ち回る。
フォーメーションは、ジョンソンとブルースが前で、私とアルテミスが後ろ。
ガルムちゃんはというと私の頭の上が気に入ったらしく、のんきにくつろいでいる。
ダンジョンと言えばトラップとかもあるかもしれないし、少し不安だけど、四人と一匹もいたら安心感も倍増。
アルテミスもぴったりとくっついてくれているしね。
私たちに近寄って来ない魔物はスルーして、周囲を警戒しながら大部屋を通り抜けていく。
第一層は、やはり前回同様スライムしか出てこないみたい。
倒したときのドロップアイテムは相変わらず粘魔核で、これ1つでギルドポイント30だと思うと結構おいしいのでアイテム欄に収納していく。
異様な集団──ムキムキ二人と美人な女剣士、そして頭に白い毛玉を乗せた運動不足社会人というパーティを見て他の冒険者たちがぎょっとしてるけど、気にしない気にしない。
そうやって進んでいくと、かなりスムーズに地下へと降りていく階段に辿り着いた。
第一層に用はないので、早速階段を降り、第二層へ。
ここもまた通路と大部屋の構成は変わらないみたいで、階段を降りた先の通路を進んでいくと最初の大部屋に辿り着いた。
辺りを見渡すと──おっ、いた!
そこには、いつものぷにぷにスライムの他に、ぐるると唸って涎を垂らした狼のような魔物の集団、そして腰丈ほどの緑の亜人の集団が見えた。
あれがガルムとゴブリンかな。
どうやら群れで居る魔物のようだ。
というか……。
「……私の召喚したのと全然違わない?」
私の問いかけに、ゴブリンズは首を傾げるばかり。
もちろんガルムちゃんも何も答えてくれない。
頼みの綱のアルテミスもよく分からないみたいで、
「そうですね……私もゴブリンやガルムと言えば、あそこにいる奴らを想像します」
と言っていた。
アルテミスもそうってことは、やっぱり私の召喚がおかしいのかもしれない。
そういえば、今度の昇格試験で他の召喚士の人と会えるみたいだし、ちょっと聞いてみようかな。
というわけで、早速、昇格試験の練習だ。
私はゴブリンたちに、「あれ、倒せそう?」と声をかけてみると、二人は無言で頷いた。
そしてそのまま、ジョンソンはゴブリンに、ブルースはガルムに向かって歩いていく。
私は何もできないので、ごくりと固唾をのんで見守るだけ。
先に始まったのは、新人のブルースくんとガルムの戦闘。
近づいてくるブルースを警戒するように、ガルムたちが距離を保ったまま横に広がり、唸り声をあげつつブルースを囲んでいく。
しかし、臆することなくブルースは一体に狙いをつけてずんずんと歩を進めると、そのまま両手を握って振り下ろした。
ブルースの一撃を受けたガルムは、そのまま煙となって消えていった。
──その隙に他のガルムがブルースの背中にがぶりと噛みつく。
しかしブルースは意に介さず、他のガルムに向かって歩みを進めてはぶん殴る。
こうして、ガルムの群れはどんどん数を減らしていった。
噛みついたガルムはというと、頭を振って牙を深く入れようとしているが、ブルースが全然気にしてないから、逆に牙が抜けないみたいに振り回されている。
そのまま、ブルースは他のガルムを全て片付けた後、最後の仕事とばかりに、噛みついていたガルムを掴むと地面に叩きつけた。
「おおー、ブルースの勝ち!」
ちょっと攻撃を受けちゃったけど、ガルムは問題なく倒せそうだね。
続いて、馴染みのジョンソンくんもゴブリンと戦闘を開始。
ゴブリンたちは木の棍棒を持った個体もいるけど──こっちも何の心配もいらなそうだね。
だって体格がプロレスラーと小学生ぐらい違うし。
どっちも同じゴブリンのはず……なんだけどなぁ。
肝心の戦闘内容はというと、まさにジョンソン無双。
ジョンソンが腕を横に薙ぎ払うだけで、ゴブリンたちが吹きとばされ、煙となっていく。
棍棒を手に飛び掛かってくるゴブリンに対しても、自慢の右ストレートで棍棒ごと粉砕してしまった。
「ジョンソンも流石! この様子なら昇格試験でも問題なさそうかな」
私の指示を難なくこなして戻ってきた二人だけど、全然息も切れてないし頼もしい限り。
ただ、ブルースは噛みつかれたところからちょっと血が流れちゃっている。
ブルースは気にしていない様子だけど、見ているこっちは痛々しい。
「アルテミス、回復とかってできる?」
「……申し訳ありません、マスター。私は魔法が使えず……」
アルテミスが唇を嚙み締める。
「い、いや、気にしなくていいからね!」
全力で落ち込むアルテミスをなだめる。
ガルムちゃんも──できるはずないよね。というか寝てるし。
もちろんのこと私も使えないから、回復するアイテムを買ってあげた方が良いかな、と思った。
一時間後には帰っちゃうとしても、私のために頑張ってくれた子にはちゃんとこたえてあげたいしね。
次話 明日朝7時投稿予定
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