012 ギルド市、本番当日!①
翌日──ギルド市当日の朝。
私とアルテミスは、一足先にギルド市の会場にいた。
「マスター、こんな感じでしょうか?」
「うん! 良い感じ!」
飾り付けを行うアルテミスに、私は親指を立てて答える。
本当は昨日のうちに終わらせたかったのだけど、途中から大雨が降ってきたせいで準備は中止、今日の朝早くに飾り付けを行うことになったのだ。
「うん、この分なら全然、開始に間に合いそうだね」
「はい、マスター」
テキパキと動いてくれるアルテミスのおかげで、余裕をもって開始時刻を迎えられそうで安心。
ふと、横の区画を見ると、ルーアンさんが売物の剣を綺麗に並べているところだった。
それにしても、どの剣も綺麗な刀身だなぁ。
普通、剣の紋様って飾りでしかないけど、この世界なら効果を持ったものとして機能するから面白いよね。
……じゃなくて、挨拶しとこっと。
「おはようございます。今日はお互い頑張りましょう!」
「……まあ、頑張ってください。スライム、でしたっけ? 売れるとは思いませんが……」
「ぐっ……! 負けませんよ~!」
「(マスターに向かってあの態度……いつか殺す……)」
ちょっとでも売れるように、飾り付け頑張ろう……!
そうこうしているうちに、開始時刻10分前となり、パンさんとペールルージュさんがやってきた。
「おー、やっとるやっとる。めっちゃええ感じやん! 飾り付け任せてすまんな!」
パンさんとペールルージュさんはギルドの活動があり遅れると聞いていたけど、間に合ってよかった。
……というか、二人ともいつも忙しそうだけど、ギルドの活動って何やってるんだろう?
今度、ちゃんと聞いてみようかな。
「ほな、そろそろウチらも”品物”、並べてこか~」
パンさんはそう言うと、ルーアンさんの方をチラッと見た。
ルーアンさんもどうやら気になるようで、剣を磨くフリをしながらこちらをチラチラ見ていた。
「私も話には聞いてたけど実物を見るのは初めて。ちょっと楽しみ」
「ルルも度肝抜かれる思うわ。じゃ、サキはん! いっちょ見せたり!」
「はいっ!」
私は飾り付けられた長テーブルの前に立ち、メニューから『アイテム』を開く。
そこには三日前にダンジョンで取ったドロップアイテムが収納されていた。
まずは、とりあえずスライムゼリーを取り出す。
すると、机の真ん中に薄い青色のゼリーがぽよんっと姿を現した。
「……本当に何処からともなくアイテムが出てくるのね」
「せや、これだけでもとんでもないけど、こっからが本番や」
ルーアンさんはというと、突然アイテムが現れたことに少し驚いていたが、スライムゼリーを見てニヤリと笑っていた。
私は気にせず次のアイテムを取り出していく。
ごろん。
「──なっ」
ルーアンさんが粘魔核を見て一瞬目を見開き、納得した様子を見せた。
「……なるほどです。随分と運が良かったみたいですが、それ一つでは──えっ?」
ごろん。
ごろん。
ごろごろごろん。
スライムゼリーを中心に、粘魔核が山のように積み上がっていく。
それをパンさんが手早くキレイに並べていき、全体として美しい造形になるようにしていく。
「どや、めっちゃ映えるやろ?」
「うん、ばえばえ」
パンさんとペールルージュさんが楽しそうに話している一方で、ルーアンさんが絶句していた。
──そのまま始まったギルド市本番だが、その結果は……。
「いらっしゃいませー! こちら世にも珍しい粘魔核の山になります!」
「……ま、マスターの力が無ければ一生見ることができませんよ。い、いらっしゃいませ」
私たちの店には大きな人だかりが出来ていた。
”ドロップ率0.1%のアイテムが山積みで売られている”という口コミが一気に広がり、一目見ようという冒険者たちが集まったみたい。
これもパンさんの見せ方が上手かったおかげかも。
私は普通に長テーブルの上に並べていこうと思ってたんだけど、「こういうのはインパクトが大事なんや」というパンさんの一言で、あえて山積みにすることになったのだ。
「こないな光景、滅多に見れへんで~! 記念に買わな損やで! 1個30ギルドポイントや!」
「えっ、凄くない? あれって超レアアイテムだよね?」
「マジで!? 俺めっちゃスライム狩りしてるけど見たことないわ!」
「どうやってあんなに集めたわけ?」
粘魔核自体はドロップ率が0.1%ととにかく低いだけで実用性自体は低いため、飛ぶように売れるわけではなかったけど、記念品として少しずつ売れていった。




