001 操作ミス
私の名前は倉澤咲。
27歳、社会人。趣味は家でオンラインゲーム。
……いわゆる、一般女性である。下の中くらいの。
──そんな私は、今なんと、異世界転生することになっていた。
「ほいじゃ、説明は以上じゃ」
「は、はぁ……」
私の目の前にいる少女は、ノヨカさんというらしい。
どこからどう見ても、小さい子が狐っ子のコスプレしてるようにしかみえないけど、ノヨカさんは女神様なんだとか。
彼女の説明によると、私はこれから第八世界なるファンタジーの世界に転生することになるみたい。
「間違えて殺してしまった」とか何とか聞こえた気がしたが、まぁ気のせいだよね。
「まぁ今回はワシのミスなところもあるのでな、ある程度、便宜を図ってやろう」
「と、いうと……?」
「そうじゃなぁ、おぬし、年齢にコンプレックスを抱いていたのでな、15歳くらいの肉体にしてやろう」
「えっ、いいんですか!?」
27年間の記憶を持ったまま、15歳からやり直せるって夢みたい。
「ふん、これくらいちょちょいのちょい、じゃ」
そう言うと、ノヨカさんが私の前で指をちょちょいっとやる。
すると、私の身体が少し縮んで、何だか身体が軽くなった気がした。
「ほれ、終わったぞ。鏡を見てみよ」
ノヨカさんから手渡された鏡を見てみると、なんとそこには若い頃の私の姿があった。
「す、すごい……! ありがとうございます!!!」
「まぁこのくらいはな。後は……そうじゃ、おぬし、ゲームが好きじゃったよな。第八世界でもゲームみたいにメニューが出せるようにしてやろう」
そういうと、ノヨカさんはまた指をふる。
「ほれ、心の中で念じてみよ」
「ね、念じるって、何を念じれば?」
「なんかメニューっぽいのが出るように、じゃ!」
私はとりあえず、ノヨカさんの言うとおり何かを念じてみる。
──すると、私の目の前に半透明のメニュー画面が現れた。
「わっ、すごい!」
メニューには、『アイテム』『ステータス』『職業』『スキルツリー』『魔法盤』『熟練度』『図鑑』の7つの項目があった。
普段からネトゲをやっていたおかげで、ぜんぶ初見でもどういった項目か分かるのでありがたい。
「そのメニューから、おぬしの職業に応じた魔法やスキルが習得できるようになっとるはずじゃ」
「職業──これだよね」
メニュー画面から『職業』をタッチしてみる──が、上手く反応しない。
でも、少し上の方をタッチすると、ようやく反応してくれて、画面が切り替わる。
もしかして、反応箇所がちょっと下にずれてるのかな?
それは一旦置いといて、切り替わった画面を見る。
そこには戦士とか魔導師とか、見たことある職業がずらっと並んでいた。
ちなみに、いま私は無職らしい。
「職業って、この戦士とか魔導師とかですか?」
「そうじゃ、好きなものを選んでみよ」
好きなもの……といっても、どの職業もグレーアウトしてて選べない。
唯一選べるのは、この召喚士というやつだけ。
「あの、召喚士しか選べないんですけど、何ででしょう?」
「ん?……あー、おぬし、ステータスが低すぎて職業につけないんじゃな。ほれ、ステータスを見てみるんじゃ」
私は言われるままメニューからステータスを開くと、私のステータスが表示された。
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人間 無職 Lv. 1
【体 力】 10
【魔 力】 10
【持久力】 10
【攻撃力】 1
【防御力】 1
【 運 】 1
【速 度】 1
【知 力】 1
【精神力】 1
────────────────────
「えっ、私のステータスひくすぎ!?」
ぜんぜん運動しない社会人だったので攻撃力や速度が1なのは理解できるけど、知力が1って……
それに運も悪いってことだよね。
これじゃあ職業につけないのも納得だ。
「うーむ、これじゃあ転生先ですぐ死んでしまうかもしれんなぁ」
「そ、そんなあ!?」
「……しかたない。ワシの力でステータスをひとつだけ最大値にしてやろう。ほれ、好きなステータスをタッチしてみよ」
そう言って、ノヨカさんが再び指をちょちょいっと動かした。
「えっ、いいんですか!?」
「すぐ死なれても、ワシも寝覚めが悪いしの。オススメはやはり、防御力かのぉ。死ななければ何とかなるしの」
「防御力……そうですね、そうします!」
私には近接戦闘の才能はなさそうなので、ノヨカさんの言う通り、素直に防御力に全振りしておこう。
えーっと、ポチッと。
────────────────────
人間 無職 Lv. 1
【体 力】 10
【魔 力】 10
【持久力】 10
【攻撃力】 1
【防御力】 1
【 運 】 999
【速 度】 1
【知 力】 1
【精神力】 1
────────────────────
あ、あれ?
「あのー……運が999になっちゃったんですが……」
確かに【防御力】をタッチしたはずなんだけど、反応が下にずれてるせいで、その下の【運】をタッチしたことになっちゃったみたい。
「えぇぇぇっっ!? な、何をやっとるんじゃ!?もう戻せんぞ!?」
「いや、実はさっきからタッチしたときの反応が少しズレてて……」
「なっ、それを早く言わんか! どっちにズレとる?」
「えーっと、下、ですかね」
「なるほど──これでどうじゃ?」
ノヨカさんの指ふり後、早速メニュー画面に戻り他の項目をタッチしてみると、ピッタリ反応が一致した。
「あっ、ピッタリです! ありがとうございます!」
「よしよし、一安心……じゃないわ! もうステータスを戻すことはできん。運命ということでな、受け入れるのじゃ」
「そんなぁ……というか、運ってそもそもどういうステータスなんですか?」
【攻撃力】や【防御力】といった他のステータスは、名前からどのような意味合いか分かる。
でも、【運】ってゲームによって効果が全然違うこともあるし、よく分からないんだよね。
下手したら全然無意味なステータスの可能性だってあるし。
「ワシもよう分からんが、第八世界にはドロップアイテムがあるのでな、それが豪華になったりするのではないか?……といっても、おぬしのステータスじゃと魔物を倒すこともままならんかもしれんが……」
「そ、そんな……」
私はうなだれる。
いつもこうだ。私って大事な場面でミスしちゃう。
「ま、まぁそう落ち込むでない。そうじゃ、召喚士ならきっと召喚して戦えるでな、おぬしのステータスが低くても何とかなるかもしれん」
「……というか、召喚士しか選べないです……」
「そ、そうかの。…… まぁ、頑張るんじゃ」
「そんなぁ……」
こうして、私は運に極振りした召喚士として第八世界に転生することになった。




