思わず口が出た
「あのー、ちょっといいですか?」
「ジョウコ!?」
私はちょうど会場の真ん中にいる第三王子殿下たちの元へ躍り出た。
バラキエル様もついてくる。
「む、聖女様!加勢しに来てくださったのか!」
「逆です第三王子殿下。貴方はやり方が酷すぎます。まず、仮にも婚約者を公衆の面前で断罪ってどういうことですか」
「え、そ、それはそれだけ罪深いことをしたのだから…」
「だとしてもやり方が酷すぎます。周りを見てみてください、第三王子殿下の味方はどのくらいいると思います?」
「え?」
第三王子殿下は周りに目を向ける。
みんなサッと目を逸らした。
当たり前だ、第三王子という立場でありながら婚約者である貴族のご令嬢を蔑ろにしているのだから。
タイス様もご令嬢だが、お父君の爵位は男爵。
イヴォンヌ様のお父君は公爵。
どちらに味方するかなど明白だ。
「な、な、皆の者なぜ目を逸らす…!」
『あっはっはっはっはっはっは!!!』
天の声さん大爆笑。
楽しんでいただけてなにより。
いやイヴォンヌ様やそのお父君は全然良くないだろうけど。
国王陛下と王太子殿下と第二王子殿下と、それから男爵も修羅場だろうけど。
「あと、第三王子殿下。なんでタイス様を横に置いて腰に手を回してるんですか?」
「え、あ、これは」
「浮気ですか?浮気ですよね?断罪されるべきはどちらですか?」
「こ、これには深い訳があって!」
深い訳ねぇ…。
「あとタイス様、虐めって具体的にイヴォンヌ様に何されたんですか?」
「みんなの前でマナーがなってないって叱られたりぃ、みんなの前でリムル様に近づくなって言われたりぃ」
「え、それだけ?」
「それって虐めじゃないよな?」
『あはははははははっ!あー、は、ははは』
そんなに人の修羅場が面白いですか。
『面白いですよ?だから人間が好きなんですから』
天の声さん思ったより悪趣味ぃ…。
まあともかく。
「正当なお小言だと思いますよ、それ。浮気されたイヴォンヌ様は、そのくらい言ってもいいはずです」
「でもぉ、惹かれあっちゃったんだからしょうがないじゃないですかぁ!聖女様だって、元はただの異邦人のくせに公爵様と婚約してるでしょう?」
「黙れ」
バラキエル様が私を片腕で抱き寄せて言った。
「ジョウコはお前とは違う。一緒にするな男誑し」
「男誑しって」
「ひどぉい!!!」
「貴様、俺の恋人になんてことを!」
「はい語るに落ちた、恋人なんですね」
指摘してやれば途端に勢いが止まる第三王子殿下。
タイス様はお構いなしみたいだけど。
浮気していたら自分の有責になるってことだけは、第三王子殿下も理解しているらしい。
『語るに落ちた、あはははは!!!』
天の声さん、大草原。
まあ笑っちゃう気持ちもわかるけど。
「聖女様、そこまでで結構ですわ」
「差し出がましいことをして申し訳ございません」
「いいえ?味方してくださって心強かったですわ。ね、お父様」
「そうだな。聖女様、何から何までありがとう」
「何から何まで?」
他になんかしたっけ。
「前にハゲでデブな侯爵を治癒してくれただろう。あれ、婿養子に行ったうちの弟だ」
「あらぁ…!でも婿養子の割に奥様とラブラブだったような…」
「恋愛結婚だ」
「あらぁ…!」
素敵!
『それは素敵ですねぇ』
ね、天の声さん!
「ともかく第三王子殿下。わたくし、婚約破棄はお望み通りこの場でして差し上げますわ」
「ただし、第三王子殿下の有責で…ですが」
ふう!いっつくーる!
『無理に横文字使わなくていいですよ』
うるさいなぁ!
「そ、そんな…」
「バカ息子」
「父上…」
「お前の有責で婚約破棄となる。お前は私財から賠償金を払い、教会へと出家せよ」
「そんなぁ…」
へなへなと座り込む第三王子殿下。
「えー、じゃあ私、第三王子妃になれないのぉ!?」
「タイス」
「お父様ぁ、みんながひどいのぉ!」
「タイス、お前も出家して女神官になりなさい」
「…え、なんで?」
きょとんとするタイス様に、お父君は諭す。
「お前のしたことは、それだけ大きなことなんだ」
「じゃあ私、幸せなお嫁さんにはなれないの?誰にも嫁げないの?贅沢な暮らしはできないの?」
「そうだよ」
「うわぁーんっ」
泣いてるところ悪いけれど、泣いて済む問題じゃない。
「ジョウコ、手を煩わせてすまなかったな」
「国王陛下、口を出してしまってすみませんでした」
「何を言う。息子の間違いを正してくれてありがとう」
「私からも礼を言うよ」
「僕からも」
国王陛下と王太子殿下、第二王子殿下にそう言ってもらえてほっとする。
そしてこんな雰囲気だったが、問題児たちを別室へ連行した後ダンスパーティーを再開。
私はしばらく懇々とバラキエル様から「トラブルに巻き込まれに行くな」とお説教されたものの、ダンスパーティー自体は二人ですごく楽しめた。
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