ザドの親心?
最近ジョウコはトラブルに巻き込まれる。
バルコニーから突き落とされたり、酔っ払いに絡まれたり。
まあ、無事だったからいいんだが…本当に危なかしいやつだ。
「ジョウコ、俺たちだっていつまでも守ってやれるわけじゃないんだ。あんまりトラブルに巻き込まれるなよ」
「…?どういう意味?」
「ジョウコ。お前は伯爵であり、これから公爵夫人になる。さらにはお前は聖女様だ。いつまでも俺たち奴隷上がりの侍従がそばに仕えるわけにいかないだろう」
こういうことを言うと、フェルやルカは泣くだろうが…まあ、仕方がない。
…そう思っていたのだが、フェルやルカより先にジョウコが泣き出した。
「うわぁーん!!!」
「は、おい、ジョウコ」
「ずっと一緒にいてよー!うわぁーん!!!」
「子供みたいなことを言うな」
「やだやだやだやだぁー!バラキエル様だってそんなこと言わないもん!」
駄々を捏ねる姿は子供そのもの。
童顔なせいもあって、本当に子供にしか見えない。
さすが世間知らずの箱入り娘だ…困った。
「ちょっと、ザド!主人様を泣かせないでよね!」
「そ、その。主人様が望んでくださるなら、ずっと一緒にいますから!」
「ザド、いいじゃないか。貴族の慣例は知らないが、主人様が望んでくださるなら仕え続けるべきだ」
「ねえ、ザドくん、いなくならないで…?」
…ああもう。
仕方のないやつだ。
「…わかった、俺が悪かった。だから泣くな」
「一緒にいてくれる?」
「もちろんだ」
「よかったぁ」
涙でぐちゃぐちゃな顔も可愛い。
清潔なハンカチで顔を拭ってやり、謝る。
「…勝手に決めようとして、悪かった」
「ううん…一緒にいてね」
「わかった」
…その分。
色々言われることも増えるだろう。
俺たちで、守ってやらないとな。




