過剰な報復
「バラキエル様!」
「バラキエル様っ?どうしてここに」
「婚約者のところに来て悪いのか?それよりお前、まだ懲りてなかったんだな」
「そ、それは…」
「教会には厳重に抗議させてもらう」
神官さまは目を見開く。
「それは過剰な報復ではございませんか!?」
「過剰でもなんでもいい。お前には罰を受けてもらう」
「何故、何故そんなにも!」
「俺の大事なジョウコを傷つける奴は敵だ。容赦する理由がない。…さっさと帰らないと、命の保証もなくなるぞ」
「…くそっ!」
神官様は逃げ帰って行った。
「大丈夫だったか、ジョウコ」
「はい、ありがとうございます。バラキエル様が来てくれてよかった」
「…ぷはっ、ザドのバカ!何するのさ!主人様、大丈夫?」
「ぷはっ…イオお兄ちゃん酷い…主人様、だ、大丈夫ですか?」
フェルくんとミカくんの二人はようやくイオくんとザドくんから解放されたらしい。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう」
「よかったぁ」
「よ、よかったです。ば、バラキエル様、ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
フェルくんとミカくんがバラキエル様に頭を下げる。
イオくんとザドくんもそれに続いた。
「主人様を守ってくださりありがとうございます」
「助かりました、ありがとうございました」
「いや、婚約者を守るのは当たり前のことだ。気にするな」
さすがバラキエル様、かっこいい。
「それよりザド、酷いじゃん!」
「止めないとお前余計なこと言っただろ。とはいえ、ちょっと乱暴だったな。悪かった」
むぅ、と口を尖らせつつも許した様子のミカくん。
「フェル、君もごめんな」
「…イオお兄ちゃんは、悪くないです。あ、あの神官さんが悪い、です」
「その通りだな」
フェルくんがイオくんのことを許したのは良かったが、バラキエル様の神官様への怒りが再熱してしまった。
「まあまあ、ここは穏便に済ませましょう」
「ジョウコ、それはお人よしがすぎる」
「でも…」
「地方の教会に飛ばしてもらおう。そのくらいならいいだろう?いつまでもトラブルメーカーにこのエリュシオンをうろちょろしてほしくない」
「ああ、それなら…」
過剰な報復は嫌だけど、それなら大丈夫だよね。
「まあ実質、それは出世コースを外れることになるんだが」
「ん?何か言いました?」
「いや?なにも?」
にこっと天使のようなお顔で微笑まれると、そうかなと思ってしまう。
「そうですか?」
「ああ、そうだとも」
まあ、何事もないならそれが一番いいよね!




