教皇の考え
ジョウコ様は、神が遣わした天使だ。
「ジョウコ様がエリュシオンに降り立ってから、奇跡的なことばかりだ…」
王都の流行病を一日で解決してしまい、エリュシオンでは尊いことに神々を讃えるお祭りを開いた。
他にも肉フェスや海産物フェスなどよくわからないお祭りもあったが、裏方では祭壇にそのフェスでの食べ物をお供えしていたそうなのでやはり尊いことだろう。
「ジョウコ様は信仰心に篤い方なのだろう」
この間も、エリュシオンの教会に多額の寄付をしたと聞く。
さらにそれだけでなく、我が教会の聖女として慈善事業にも勤しんでいる。
最初は頑なに聖女認定を辞退していたが、それだけ遠慮がちな方なのだろう。
なんと謙虚な姿勢であろうか。
さらに、エリュシオンの孤児院や養老院にまで寄付をしたという。
「ジョウコ様はどこまで徳の高い方なのか…」
それだけではない。
ダンジョンも素早く攻略し、エリュシオンの近隣を守っているのだとか。
やはり神が遣わした天使としか思えない。
「ジョウコ様のことは、大切にせねばなるまい」
ジョウコ様をお守りせねば…ジョウコ様は慈善事業に明け暮れて、ある日倒れたそうだ。
もう二度とそのようなことがないよう、週休二日の申請を許可した。
慈善事業は尊いことだが、ジョウコ様がいなければ元も子もない。
ジョウコ様は神が遣わした天使。
決して蔑ろにしてはいけない。
教皇猊下は、聖女様を神聖視している。
いや、〝聖女様〟だから神聖で当然なのだが…。
ただ、聖女様は実際多くの人々を治して助けてきた。
その徳の高さは計り知れないだろう。
だから神聖な存在で間違いはないのだが…ちょっと心酔しすぎではないだろうか。
しかし私は教皇猊下の身の回りの世話を仰せつかっているだけの侍従で、神官ですらない身。
幼い頃、奴隷として生まれ奴隷として生きてきた私を教皇猊下が買って拾ってくださったのだ。
教皇猊下がそう思うなら、そう思わせてあげたい。
『ジョウコ様は神の遣わした天使である』。
それでいい。
実際聖女様は、利益をもたらしてくれるが害はなさそうだし。
「教皇猊下、お茶をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
こんな奴隷上がりの私にも優しく接してくれる教皇猊下。
聖女様も、奴隷上がりの侍従を可愛がっていると聞く。
それを知ると、途端に親近感が湧いた。
教皇猊下に似ているなと思って。
…もしかしたら、教皇猊下の負担を減らすために本当に神様がジョウコ様を遣わしたのかも、なんて。
そんな馬鹿げたことを思うくらいには、私もジョウコ様に心酔しているのかもしれない。




