バラキエルの気持ち
とうとう自覚してしまった。
俺はジョウコが好きだ。
俺の過去を話した時、自分のことのように心を痛めてくれたジョウコ。
泣きながら抱きついてくるその姿に、愛おしさを抑えるのはもう無理だと悟った。
俺はジョウコに惚れているのだと、愛しているのだと認めざるを得なかった。
思えば最初からおかしかったのだ。
女嫌いの俺が、嫌悪感を感じなかった時点で俺の負けだ。
惚れるのにそう時間がかからなかったのも納得だ。
きっと本当は最初から、一目惚れしていたのだ。
異国情緒溢れる装い、東洋人ならではの幼い顔立ち、この国では珍しい黒髪黒目…そして華奢で守ってやりたくなるスタイル。
どれも〝あの女〟を連想させないものばかりで、だから安心して好きになれたのだろう。
あの女は今でもトラウマだ。
もう人体実験は懲り懲りだ。
だが、ジョウコは…あのお人よしで、世間知らずで、可愛いあの子は、あの子だけはあの女を連想される要素が一つもない。
安心して触れられるし、安心してそばにおける。
…でも、なにより惹かれたのは。
やっぱり、俺のために泣いてくれる優しさなんだろう。
多分、一目惚れ。
でも、内面も好きになった。
「…愛してる、ジョウコ」
虚空に向かって呟く。
それだけで胸がいっぱいになって、温かくなる。
俺はジョウコを愛している。
やっと、女性を愛することができた。
女性を愛するというのは、こんな感覚なのか。
不思議だな。
ただそれだけで幸せだ。
そしてなぜかちょっぴり切ない。
不思議な感情だな。
「ジョウコ、ありがとう」
こんな気持ちを教えてくれて、ありがとう。
本当に、幸せだ。
「俺もジョウコを、こんなふうに幸せに出来るだろうか」
惚れされて見せると豪語してみせても、やっぱりちょっぴり不安はある。
だけど、ジョウコが俺をこんなに幸せにしてくれたから。
だから俺も、ジョウコにこんな幸せな感情を与えたい。
そして甘やかして甘やかして、大切にして大事にしたい。
そして、俺だけのジョウコでいてくれたら…幸せだろうな。
「まあただ、ジョウコを独り占めにするためにはライバルが多いが」
ジョウコの元奴隷…今は、奴隷印がないということは侍従として雇っているのだろう彼ら。
俺は彼らを解雇させるつもりはない。
奴隷上がりの侍従となるとちょっと世間体はあれだが、そんなもの俺の力でどうとでもなる。
ジョウコが気に入っている以上、無理矢理に引き剥がすつもりはない。
むしろジョウコが飽きるまでは末長く付き合ってもらうつもりだ。
だが、彼らはジョウコを独り占めするためにはライバルとなる。
「ライバルがこうも多いと、困ったものだな」
まあ、いつかは俺が独り占めするが。
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