異世界から来たことを打ち明ける
私が泣き止むとお互い抱きしめあっていた身体を離して、バラキエル様が涙をハンカチで拭ってくれた。
「あの、バラキエル様。私も打ち明けたいことがあるんです」
「ん。どうした、言ってみろ」
バラキエル様が包み隠さず過去を話してくれたので、私も全てを話すことにする。
「私、異世界から家ごと転移してきたんです」
「異世界?」
「地球という星の、日本という島国から来たんです。極東にある国で、小さいけど平和で豊かな国でした」
「…なるほど、腑に落ちた」
「今まで隠してきて、ごめんなさい」
しょんぼりする私に、バラキエル様が微笑む。
「気にしてないさ、今話してくれたしな」
「バラキエル様…」
「愛してる、ジョウコ。よくこの世界に来てくれたな。ありがとう。お前と出会えて本当によかった」
「バラキエル様っ」
また、ぎゅっと抱きしめ合う。
「それでですね、私特殊能力がありまして」
「特殊能力?」
「自分や相手のステータスが見えるんです」
「………あー」
バラキエル様が困ったように笑う。
「覗き見なんて、悪い子だな」
「ごめんなさい」
「いや、いいよ。俺の過去を受け入れてくれたお前を、そんなことで責めたり嫌いになったりしない。お前は俺の最愛だからな」
「ありがとうございます…あの、あの」
「うん?」
どう伝えればいいのかわからないので、そのまま口に出す。
「私、バラキエル様が過去にそんな目に遭ったって知って…同情とかじゃなくて、悲しくなったんです」
「うん」
「言ってしまえば他人事なのに、それでも悲しくなるのは…それだけバラキエル様が好きなのかなって思って」
「お前はお人よしだから誰にでもそうだとは思うが…俺だけ特別、余計に悲しいとかなら嬉しいな。それだけ好きでいてくれているなら、とても嬉しい」
「バラキエル様と違って確信を持って愛してるとはまだ言い切れないんですけど…大好きです、バラキエル様」
バラキエル様は天使のように美しい顔で微笑む。
「それは良かった。安心しろ、その内確信を持って愛していると言わせてやる」
「ふふ、はい!」
「よし、じゃあそろそろ部屋を出るか」
部屋を出て、真っ直ぐ洗面所に向かって顔を洗う。
涙の跡を流すためだ。
そして綺麗さっぱりしたところで、バラキエル様を見送った。
「じゃあバラキエル様、また」
「またな、ジョウコ」
手を振って馬車をお見送りしたあと、屋敷の居間に戻るとみんな心配そうな顔をしていた。
「ねえ、主人様泣いてなかった?」
「だ、大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと色々話をしてたらね、でも大丈夫!」
「バラキエル様になにかされたのですか?」
ああ、やっぱりそういう誤解が生まれちゃうよね。
キッパリ否定しないと。
「ううん、逆に慰めてもらったくらいだよ」
「あんまり一人で抱え込むなよ」
「うん!あ、一応言っておくけどバラキエル様は一切悪くないからね」
「わかった、ならいい。だが何かあれば俺たちに言えよ」
「うん!」
ということでバラキエル様と私はお互いの秘密を打ち明けたことで、より打ち解けて愛情確認もできたのでした。
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