イオの幸せ
主人様が聖女になられた。
そして、今後の予定では伯爵となられる。
さらに、バラキエル様と婚約なされた。
主人様の幸せは俺の幸せ。
俺は今、最高に幸せだ。
…とはいえ、正直聖女になることや叙爵されることは主人様の望みではなく。
それを思うと少し胸が痛いが。
しかしだからこそ、バラキエル様との婚約が結べたのだ。
バラキエル様は王弟の息子であり、公爵様だ。
主人様の盾となってくれるだろう。
だから俺はこれで良かったと思っている。
…そして。
主人様は伯爵になるための準備として、俺たち奴隷を奴隷の身分から解放してくださった。
捨てられたわけではない。
逃がされたわけでもない。
主人様の専属の侍従として、正式に雇用していただけたのだ。
主人様はなんと懐の深い方なのか。
しかも賃金は毎月金貨三十枚。
破格だ…奴隷上がりからみれば、破格すぎる。
でも主人様は涼しい顔をして雇用契約を結んでくださった。
主人様は慈善事業を頑張っていらっしゃるから、それにザドの錬金術での収入もあるし…金銭的には平気なんだろう。
さすがは主人様!
ただ心配なのは、慈善事業を頑張りすぎて倒れないか。
聞いた話によると、過労死防止用のアミュレットをバラキエル様とお揃いで購入したとのことだが…使う機会がないと良いのだけれど。




