バラキエル様とのデートをしてみる
「ジョウコ、ちょっといいか?」
「はい、バラキエル様」
今日も今日とて慈善事業のあと、バラキエル様が訪ねてきた。
「その、ジョウコは俺と同じで毎日働き詰めだよな」
「そうですね」
バラキエル様も働き詰めなんだ…。
「まとまった休みが取れないから、ちゃんとしたデートはおそらくお互い無理だろう」
「はい…残念ですが」
「だから今から一時間、お夕食までの間ちょっとその辺を散歩しないか」
「え、は、はい」
ということで、バラキエル様との初デートをすることになった。
「見てみろ、この木は春になると綺麗な花が咲くんだ」
「へえ、見てみたいです!」
「春になったらまた一緒にこよう」
「はい!」
春が楽しみになった。
ふとバラキエル様の横顔を覗いてみる。
優しい表情。
やっぱり、バラキエル様は心が温かい人なんだな。
「バラキエル様、バラキエル様はエリュシオンが好きですか?」
「もちろんだ。俺はエリュシオンを愛している」
「そうですか、とっても素敵なことですね」
「ジョウコはどうだ?」
「私は…」
これまでこの世界に来て、色々な経験をした。
とても幸せな日々だ。
日本にいた頃より、楽しいと思ってしまうほどに。
だから。
「私もエリュシオンが大好きです」
「そうか、なら良かった」
嬉しそうに微笑むお顔はまさに天使。
眼福だ。
「そういえば、バラキエル様って好きな食べ物はなんですか?」
「ん?ジョウコのおかげで味覚は戻ってきたが、まだ何が特別好きとかはないな」
「…治療前は味覚もなかったんですか?」
「ああ」
「満身創痍じゃないですか!」
バラキエル様は大声を出した私にびっくりした顔をする。
そんなびっくり顔も整っているのだからずるい…じゃなくて!
「無理しちゃダメでしょ!」
「まあ、ジョウコのおかげで治ったし」
「それはそうですけど!これからは不調を感じたらすぐ私のところに来てくださいね!バラキエル様だけは特別に治してあげますから!」
「そんな贔屓していいのか?」
「婚約者は身内も同然だからいいんです!」
バラキエル様は私の必死な様子に笑う。
「ふふ、そんなに心配することないぞ」
「心配しますって!」
「もう無理しないとこの間約束しただろう」
「そうですけど心配なんですー!」
そんな話をしながら歩いていると、アミュレットを売っているお店を偶然見つけた。




