身を守るためのバラキエル様との婚約
「それでなジョウコ」
「はい」
神官さまの大目玉コースが確定して、ちょっと同情していたらバラキエル様がとんでもないことを言い出した。
「俺と婚約してくれ」
「…はい?」
どういうこっちゃ。
「お前は今日から聖女となった。そしてこれから、領地も持たない一代限りの女伯爵となる」
「はい…?」
「だから、お前という人間の価値は非常に高い。悪い奴らが寄ってくる確率も格段に上がる」
「ああ、なるほど」
「俺と婚約すれば、婚約者だからという大義名分の元守ってやれる」
つまり身を守るためのバラキエル様との婚約ということか。
「お気遣いは有難いのですが、バラキエル様はそれでいいんですか?」
「俺は婚約者はいないし、独身だ。問題はない」
「そうじゃなくて」
「…ジョウコには街を盛り上げてもらったし、命も助けられた。恩を返したいんだ。それに他の女はなんとも思わないのに、不思議とジョウコとなら結婚しても良いと思える」
「…そ、そうですか」
え、だいぶ熱烈なプロポーズに感じるんだけど気のせい?
「それでジョウコ。お前はどうしたい?」
「…で、ではお言葉に甘えて」
「婚約してくれるのか?」
「はい、謹んでお受けします」
「…良かった」
だってバラキエル様は天使みたいに美しい方だし、優しいし、お金持ちそうだし、公爵様だし、権力もあるし、守ってくれるし…そう、バラキエル様が特別とかじゃなくてお互いの利益のため!
私は身を守るため、バラキエル様は私への借りを返すため!
う、うん、だからいいよね、うん!
「なら、ジョウコ」
「は、はい」
いつぞやのように跪かれて今度は左手を取られ、薬指に指輪を嵌められた。
「婚約指輪だ。気に入ったか?」
「は、はい、気に入りました!でもいつのまに…」
「俺の魔力を魔法で編んで作ったものだ。だからすぐに用意できたが、品質は保証する。センスも…悪くはないだろ?」
「はい、すごく素敵な指輪です!」
「喜んでもらえたなら良かったよ」
そしてバラキエル様は私の頭を撫でた。
「これからはあまり無茶するなよ、俺の婚約者になったんだから」
「は、はい」
「これからお互いのことを知って、仲良くなろう」
「…はい!」
こうして私は、バラキエル様の婚約者となった。




