結局教会とも上手くやっていこうという結論に
「でも結局、聖女さまになるのも確定かぁ」
伯爵さまになるのも不安なのに、聖女扱いは厳しいなぁ…。
「あ、主人様は聖女さまになるんですか?」
「うん。伯爵の位を賜って、聖女に認定されるんだって」
「すごいですね、主人様!」
「さすがは主人様です。ですが聖女に認定されるのは嫌がっていらしたのに…大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないかな…」
しょぼんとする私。
するとザドくんが私の頭を撫でてくれた。
「ジョウコ、よくやった。お前のしてきたことは間違いじゃない」
「え…」
「その結果望まない聖女扱いを受けるとしても、後悔する必要はないからな。お前は正しい。人を助けるお前の優しさは、決して間違いなんかじゃないぞ」
「…うん!」
ザドくんに励まされて、少し元気が出る。
まあこうなった以上、結局教会とも上手くやっていこうという結論になるよね。
この間の神官さま、大丈夫かなぁ。
まだ怒ってないかな。
「あ、主人様。あの、ぼ、僕、主人様が聖女さまになってもちゃんとお守りしますから!」
「僕も主人様を守るよ!」
「俺だって、きっとお役に立って見せます」
「俺だって出来る限りのことはしてやる。だからそんな不安そうな顔をするな、ジョウコ」
「…うん!みんなありがとう!」
まあ、なんとかなるよね!
みんなに励まされて二日後。
この間の神官さまとは別の神官さまがウチに来た。
「この度は聖女認定の了承、誠に有難うございます。ジョウコさまの働きは国家にとって、信者たちにとって素晴らしいものです。聖女になっていただければ、さらにジョウコ様の名声は広がることでしょう」
「は、はい」
「聖女認定式のためのローブはこちらで用意しております。着物の上に羽織っても違和感なく着られますよ。聖女認定式では教皇猊下の前に跪き、教皇猊下に肩をポンと叩いていただいて少しの言葉をいただければ終了です」
「な、なるほど」
「では行きましょう」
え、待って今からなの?
「今からですか?」
「あれ、聞いてないですか?昨日使いの者が行ったはずですが…」
「…もしかして、この間ウチに来た神官さまですか?」
「そうですよ」
「…実はその方と、ちょっとトラブルがあって」
神官さまに前の神官さまとのトラブルの話をした。
この前の神官さまは高圧的だったこと。
聖女として正式に認定させて欲しいと要請を受けて、断りたがったら圧をかけられたこと。
フェルくんとミカくんがかばってくれたこと。
その二人を馬鹿にされてキレてしまったこと。
それをさらにイオくんとザドくんが庇って、命を差し出そうとしたこと。
バラキエル様がそれを助けてくださったこと。
その全部を伝えると、神官さまはお顔が真っ青になった。
「すみません、うちの者が失礼を…本当にすみません!!!」
「いえいえいえ、貴方様は悪くないので」
「報告を受けていなかったので知りませんでした…その神官はあとでシメておきます」
シメるて。
「申し訳ございませんでした…皆様にもご不快な思いをさせてすみませんでした」
「ぼ、僕は大丈夫、です!」
「貴方は悪くないよ!大丈夫!」
「こちらこそ、この間の無礼な振る舞い…申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした、どうかお許しください」
神官さまは顔をあげて力説した。
「皆様が謝ることなど何一つありません!その神官の至らなさが悪いのです!きつく言っておきますから、皆様はお気になさらないでくださいね」
なんて良い神官さまだろう!
優しい!
そして私は神官さまに連れられて王都の教会に行った。
教会には信者がたくさん集まっており、私はその前で聖女認定式を受けた。
といっても教会の用意してくれたローブを羽織って教皇猊下の前に跪き、肩ポンしてもらって「これからも励みなさい」と有難いお言葉を頂戴して終わりだったけど。
それでも喉から心臓が飛び出るほど緊張した。
観客が本当に大人数だったから。
とはいえ、これで今日から私は聖女さま。
といっても今まで通りウチで重症の患者さんを治療するだけがお仕事だけど。
まあ、無事に終わってよかったよね。
そして神官さまに送られて家に帰ると、バラキエル様がいた。
「あれ、バラキエル様?」
「ジョウコ、今日聖女認定式があったんだろう。俺も神官から知らされてなくて…もう終わった頃だろうからこっちで待っていたんだ」
「そうでしたか…わざわざごめんなさい。お気遣いありがとうございます!」
「いや、いい。上手くできたか?」
「はい、なんとか!」
私の返事に心底ホッとしたように息を吐き、最高の笑顔を向けてくださるバラキエル様。
「それは良かった。神官にはあとでクレームを入れておく」
ありゃりゃ、これはあの神官さまは大目玉コースだ。




