家出してきた貴族のお嬢様を保護することになった
慈善事業に明け暮れる日々は忙しいけど、やり甲斐はある。
今日も一日、しっかりと頑張った。
みんなから感謝されて、疲れたけれど気分はいい。
ストレス発散も最近したから、気持ち的にはバリバリ元気。
そして仕事の後のまったり時間。
急にお客様がきた。
「すみません」
「は、はい、ど、どうしました?」
フェルくんが対応してくれる。
「私をしばらく、匿ってくれませんか?」
フェルくんにこのまま対応を任せようと思っていたけど、なんかすごいこと言われた様子なので私が出る。
そこには幼い、五歳くらいの女の子。
頭にツノが生えている。
…ツノ?
『この世界には魔族という種の人間がいます』
魔族も人間カウントなんだ。
『ええ、そうです。といっても普通の人間から差別されやすいので、この国の魔族は普段はドワーフやエルフのように自治権のある里を持ち、そこからあまり出ずに過ごしています』
なるほど。
『魔族にも長がいて、そのものが伯爵の位を賜り魔族を管理して、守っているのです』
大変だなぁ。
そしてさすが天の声さん、物知り。
『ええ、地上の様子はよく見てますから。そしてその子、魔族の長…伯爵の末娘ですよ』
え゛。
なんでそんな子がここに。
『家出&観光ですね。ジョウコ、貴女の屋敷を見てみたくて、あと着物を着てみたくて、でも家族から反対されて家出してきたのです』
なんということでしょう。
『ちなみにその子は五歳くらいの見た目で、実質魔族の年齢を人間に換算するなら五歳くらいですが、実際には五百歳ですよ。魔族は長生きなので』
わぁ、すごい。
『ジョウコ、魔族はいつも同じ人だというのに人間に差別されて苦労しています。せめて今日くらいは…』
うん、丁重におもてなししますね。
「あ、主人様、きてくださったんですね…!今、魔族の子が訪ねてきて」
「うん、フェルくんありがとう。魔族のお嬢さん、私はジョウコ。貴女は?」
「エレナ」
「エレナちゃん、お外はもう暗いからお家に上がっておいで」
「え、主人様、魔族ですよ?」
いつのまにか隣にいたミカちゃんが驚くが、気にしない。
「魔族も人間だもの。いいじゃない」
「主人様…か、かっこいいです!」
「えへへ、そうだよね。僕恥ずかしいこと言っちゃったや。エレナ、ごめんね」
「ううん、大丈夫。上がっていい?」
「うん、どうぞ。靴はここで脱いでね」
一応エレナちゃんに、フェルくんとミカくんを紹介しておこう。
「エレナちゃん、こっちはフェルくんで、こっちはミカくんだよ」
「ルシフェルです、よ、よろしくお願いします!」
「ミカエルだよ、よろしくね!」
「うん、よろしく」
ちょうどお夕飯時なので、今日のお夕飯担当のイオくんに急遽エレナちゃんの分も作ってもらう。
「イオくん、この子エレナちゃん。今日は一日うちに泊まるから、お夕飯作ってあげて」
「はい、主人様がそうお決めになられたのなら全力で美味しいものをご用意します。エレナ様、俺は主人様の奴隷のイオフィエルです。今日はよろしくお願いしますね」
「うん、よろしく」
ザドくんにも一応報告しておこう。
ザドくんのところに行くと、ザドくんはエレナちゃんをみてやや驚いたが受け入れてくれた。
「ザドくん、あのね」
「わかってる。魔族のお嬢さんを家に泊めるのはいいが、ちゃんと面倒見るんだぞ」
「うん!あ、この子エレナちゃんっていうの」
「ザドキエルだ。よろしく」
「うん、よろしく、ザド」
そして、お夕飯を待つ間観光に来たエレナちゃんに屋敷内を案内する。
「ここが居間で、こっちが…」
「すごい、どの部屋も素敵」
「でしょう」
屋敷内を散策して満足した様子のエレナちゃん。
なかなか楽しめたらしい。
よかった。
「庭も見る?暗いけど、暗いなら暗いで趣はあると思うよ」
「うん」
お庭もエレナちゃんに見せる。
お庭の散策もお気に召したようで、目をキラキラされる。
「お庭、すごい」
「気に入った?」
「うん」
「主人様、そろそろご飯できるってー!」
「じゃあ、ご飯にしようか」
「うん」
そして始まった夕食会。
「「「「「いただきます」」」」」
「…?えっと、いただきます」
私たちの見よう見まねでいただきますをして、食べ始めるエレナちゃん。
私たちも食べ始める。
イオくんお手製の和食…作り方は私が教えたのだけど、お味は完璧。
特に肉じゃががとても美味しい。
エレナちゃんはスプーンとフォークで上手に肉じゃがを食べる。
「これ美味しい!」
「私の故郷の食べ物だよ」
「ジョウコは東洋の出身?」
「そうだよ、極東のね」
「やっぱり。なんとなくそんな感じがした」
エレナちゃんは可愛いなぁ。
そして結構鋭い。
その後みんなでご馳走さまをして、フェルくんとミカくんに食器洗いを任せる。
そして私はエレナちゃんとお風呂に入った。
エレナちゃんはシャンプーとボディーソープをたいそう気に入ったらしく、お風呂場でも目をキラキラさせる。
浴槽で温まって、お風呂を出るとエレナちゃんは目をキラキラさせた。
「これ…!」
そう、実はザドくんに頼んで私の子供の頃の着物を引っ張り出してきてもらったのだ。
手入れは行き届いているから品質も問題ないし、可愛いし、着物を着てみたかったらしいエレナちゃんにはちょうどいいだろう。
サイズもぴったりだ。
「着せてあげるね」
「うん!」
体を拭いて、髪も魔法で即座に乾かして、着物を着せる。
エレナちゃんは美少女なのでとても似合う。
「エレナちゃん、可愛いよ」
「えへへ」
そしてもう子供は寝る時間なので、エレナちゃんが鏡の前で自分の着物姿を堪能した後、寝かしつける。
まだ人間換算で五歳の子なので、今日は私の部屋で一緒に寝る。
「楽しかった?エレナちゃん」
「楽しかった!」
「じゃあ、おやすみ。いい夢みてね」
「ジョウコもね」
そして二人で眠った。




