ドワーフ様をおもてなし
ある日突然、バラキエル様からお呼び出しされた。
「あの、バラキエル様…ご、ごきげんようです」
「ああ、ごきげんようジョウコ」
「それで、折り合ってのお話って…?」
「ああ…それなんだが…近々、ドワーフの里の長がこのエリュシオンに来る」
「え」
バラキエル様からいただいた丁寧な説明によると。
このラダマンテュスには、ドワーフの里がある。
ドワーフは国に武器提供をする代わりに、ドワーフの里の自治権を与えられている。
ドワーフの里の長は、男爵としての位を与えられている貴族らしい。
税金の代わりに国に、武器や装備を納めているのだとか。
「それで、ドワーフの長がお前の話をどこぞで聞いたらしく…お前に会ってみたいそうだ」
「え、えぇええええ!?男爵様が!?何故!?」
「良い酒を持って居そうだからだそうだ」
「良い酒を…」
ワインと焼酎とブランデーなら、父が遺したものがある。
私は酒飲みじゃないから、とりあえず父に言われた通りの保管方法でそのままにしているが…。
「まあ、はい、あります」
「お前のお屋敷も、ドワーフをもてなすには十分だろう。ということで、頼んだぞ」
「ええー、は、はぃいいい………」
断りたいけど、バラキエル様には聖女にされそうになった時助けてもらったし…素敵な指輪ももらったし。
仕方がないか。
ということで、ドワーフの男爵様をおもてなしすることになった。
お酒の準備は良し、おつまみもとりあえず多めに用意した。
よし、どんとこいだ!
そしてしばらく待つと、馬車が家の前に到着。
「がはははは!こりゃあ本当にすげえお屋敷だな!」
「お、お初にお目にかかります、男爵様!」
「おう!オメェがジョウコだな?今日はよろしくな!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
男爵様を奥に通して、さっそくだがおつまみとお酒を出す。
「ほう、つまみはこの辺りのありきたりなのだが…この酒、良さそうだな?」
「は、はい。ワインとブランデーと焼酎です」
「焼酎、ね。それならそれから貰うぜ」
「ど、どうぞ」
男爵様にお酌をする。
「お、美人のネェちゃんにお酌してもらうとは、最高だな!………いただくぞ」
「どうぞ!」
「……!………かぁーっ、美味えな、これ!」
「焼酎、お気に召しましたか?」
「おう!まだまだあるかい?」
頷いて、どんどんお酌する。
男爵様の飲むペースはどんどん早くなるが、酔い潰れる様子は最後までなかった。
そして朝から夕方まで酒盛りをして、男爵様が帰る時間。
「ありがとうなぁジョウコ!!!最高の酒盛りだったぜ!その上お土産にもう一本焼酎を貰っちまって悪いな!」
「いえいえ、家にあっても余らせちゃいますから。男爵様が飲んでくださって、父も喜ぶと思います」
「……あー、お前さんの父ちゃんは、そうか」
「はい」
「…父ちゃんにも礼を言っといてくれ!」
ニッと笑う男爵様に、私も笑う。
「…はい!」
後で父の遺影に語りかけよう。
こうして無事おもてなしは上手くいった…らしい。
後日よくやったとバラキエル様から褒められた。




