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フェルの本音

僕は、人間が嫌いだ。












僕はルシフェル。


ダークエルフの男の子。


まだ九十歳。


僕はお兄ちゃんのルカと一緒に、ダークエルフの里で育った。


お父さんとお母さんはすごく優しくて、里のみんなもいい人ばかり。


幸せだった。


だけど…ある日、人間がエルフ狩りに現れた。


僕たちを守ろうとしたお父さんとお母さんは、僕たちの目の前で殺された。


村のみんなも、捕まったり殺されたりした。


だから、僕は人間が嫌いだ。


でも…。


「主人様…」


主人様だけは、別。


奴隷商人に売られて、国を跨いで、ラダマンテュスに来て。


エリュシオンに来て、セラフィムさんに売られて、主人様に買われた。


お兄ちゃんと離れ離れになりたくなくて、人間である主人様に一緒に買って欲しいと懇願したら本当に一緒に買ってくれた優しい優しい主人様。


衣食住を保証してくれて、僕たち奴隷でも価値がわかるほど高価な着物を与えてくれて、暴力もなく優しく接してくれる。


夜の相手も、しなくていい。


主人様は、優しい。


優しすぎるほど、優しい。


「……主人様」


主人様のことを想うと、時々胸がぎゅっとなる。


憎い人間という種族なのに。


こんなに大好きな主人様。


「…僕は、どうすればいいんだろう」


大好きな主人様。


大嫌いな人間。


折り合いがつかないこの感情。


表に出すことこそないが、主人様にいつか気付かれたら…嫌われてしまう?


それに…奴隷仲間の、イオお兄ちゃんやザドお兄ちゃんも…嫌いになれない。


どうして、どうして。


里を滅ぼした人間たちが憎かったはずなのに、どうして人間たちを好きになってしまうの。


どうして、どうして。


「…フェル、眠れないの?」


「ミカ」


「大丈夫だよ、フェル」


隣で寝ていたミカが起きる。


起こしてしまった。


今はまだ、月が昇っている時間だというのに。


「フェル、大丈夫。無理に人間を憎む必要はないよ」


「…ミカ」


「主人様はいい人、イオとザドも優しい。好きになるのも無理はないよ。僕たちが憎むべきは、里を滅ぼした人間たち。主人様たちは関係ない」


「…う、うわぁあああんっ!!!」


「よしよし、大丈夫だよ、フェル。お兄ちゃんがついてるからね」


泣いて、泣いて。


いつのまにか朝になっていた。


すっきりした頭で、主人様のことを想う。


…やっぱり僕は、主人様が大好きだ。


だから。


「ミカ」


「ん?」


「無理に嫌おうとするのはやめる。ごめんね」


「いいよ。むしろ最初から嫌えてなかったじゃん」


「あうっ」


クスクス笑うミカ。


主人様のことを好きでいていいんだと思うと、なんだか幸せな気持ちになった。

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