第97話 90階
イベントステージ90階。ここは他のユニークプレイヤー6人が全員で挑んでリタイアしたステージだ。俺はそのボスの間の扉を開いた。するとこれまではすぐにボスに関するメッセージ表示があったのだが、今回はそこから違った。
『90階以上のフロアでは全滅した場合のデスペナルティが無効となります。敗北した場合も表記はリタイアとなり、ユニークプレイヤーも復活し、セーブポイントにてリスポーンします。』
つまり、他のユニークプレイヤーたちは敗北したと考えるべきだな。それだけ強大な敵か。
『レジェンドゴッド『究極悪魔神』『獣神』が現れました。』
神の名を冠するモンスター?か。モンスター扱いなのかどうかがわからないな。神の名を冠する以上モンスターというよりは精霊的なものに近いような気もする。それこそ神という表現が一番ふさわしいだろうな。
究極悪魔神はよくアニメや漫画に出てきそうな大悪魔といった感じだ。ほぼ人型だが、禍々しいツノ・尻尾・翼が生えている。
獣神は九尾をモデルにしているようだ。神々しい黄色の毛並みに9つの尾。その眼光は鋭く、全身から美しさと神々しさを放っている。
『愚かな人間よ。今立ち去るならば見逃してやる。さもなくば我が呪いで葬り去ってくれる。』
『愚かな人間よ。今立ち去るならば見逃してやる。さもなくば我が幻術に囚われることになるだろう。』
同じようなセリフを口にする2柱の神。でもこれは好機だ。今俺は人型だから俺を人だと思っている。確かに人型なら呼吸など生命維持以外で人間が受けてミミックは受けない影響を受けてしまうが、ミミックに戻ってしまえば解除できるし、そもそも受けることもない。
「私が人間に見えているとはその目は節穴ですか?」
相手がAIだとは分かっているけれど、あえて煽ってみる。ついでに姿をミミックに戻しておく。おそらくこのステージではこれが最適解だ。無生物に影響できる呪いはほぼない。幻術は無生物に影響できないと信じるしかない。そもそも視覚はあるが、目がないので幻を見せることはできないだろう。
『なるほど。古来の力を受け継ぐ者か。受けて立とうではないか』
2柱の神が同時にそう言い、それぞれ襲いかかってきた。両方とも近接戦を得意とするタイプではないだろう。そして俺はここに戻ってくる前に一つの策を講じている。
「{不壊の目}」
相手の魔法が接近してきているなか、俺はスキルを発動。それと同時に俺の視界が変化する。
{不壊の目}新たに手に入れたスキル。このスキルは腕を10本に増やした時に使ったコマンドを使用して最大数の眷属を生贄にして作成した{不壊}のサポートスキルだ。
その効果は使用中自身に向かう攻撃がスキルや魔法の場合はなんという名前で、攻撃の種類・名前の有無に関わらず{不壊}によって防ぐことができるものか、それとも{不壊}を貫通するものなのかが視界に表示されてわかるようになるというものだ。効果時間は発動から15分間、クールタイムは効果時間終了から30分。つまり、この15分間で、敵を倒し切るか、手札を全て晒させて、どの攻撃が貫通なのかを記憶する必要がある。最低でも片方は倒してしまわないと流石に覚えきれなそうだ。
今飛んできている攻撃は{内部爆発}と{呪いの鎖}だ。
前者は対象を内部から爆発させる魔法。追跡機能のついた不可視の魔法であるため、基本的には回避不能だ。{不壊}で容易に防ぐことができる。
後者は対象に呪いの鎖を巻きつけてデバフを与える物理スキルだ。これはダメージではないので{不壊}で防ぐことができない。こっちは回避が容易だしさっと回避しておこう。
スキルを回避された究極悪魔神に魔法を無効化された獣神。
次はどう来る?




