第87話 祝福と秘密の指輪
時間はあっという間に過ぎて、ヴァルとミルナもインしてきた。
「やっぱりか。」
ホームの様子を見たヴァルは呆れているようなしかしどこか嬉しそうな感じでそう呟いた。ミルナは言葉も出ないと言った感じだ。
「予想通りだったかな?メンバーの祝い事なんだからみんなで祝わないとね。それじゃヴァル、ミルナ・・・」
「「「「「「結婚おめでとう!」」」」」」
「ありがとな。こうやって祝ってもらえるのはやっぱり嬉しいな。」
「みんなありがとう!」
2人とも全くリアクションが違うな。でもどこか似ている感じもする。
「それじゃみんな集まったことだし、お祝いのパーティーを始めようか!」
キキョウのその言葉を皮切りにみんな口々にヴァルとミルナの2人を祝い、料理を口に運んだ。みんなが祝い、ある程度食事も落ち着いたところで、俺は例のものを取り出す。
「2人に渡したいものがあるんだ。お祝いとして受け取ってくれるかな?」
「いいの?」
「ありがたく受け取らせてもらうよ。」
「うん。それじゃまずミルナから。」
そういって罠の迷宮で手に入れたエメラルドネックレスと魔法威力上昇ポーションを渡す。
「わぁ、綺麗なネックレス!それにこっちのポーションもすごい性能だね。」
そう。このポーションは効果が永続らしく、実質的に魔法攻撃力の基礎値を上昇させるアイテムなのだ。
「喜んでくれて嬉しいよ。ダンジョンまで取りに行った甲斐があるってもんだよ。」
「それで、俺には何をくれるんだ?」
「いやー、ヴァルの方は相当悩んだんだけど・・・」
そう言ってモーションエフェクトポーションを手渡す。
「これは?」
「モーションエフェクトポーション。かなり珍しいアイテムではあるけど知ってる?」
「いや、知らないな。名前から予想はつくけどな。」
「そう?これはポーション1つにつき、1つのモーションを指定してそのモーションに対して好きなエフェクトをつけられるアイテムだよ。まぁ、実用性はないけど、かっこいいかなって。」
「まぁ、せっかく用意してくれたものだし、面白そうだ。ありがたく受け取らせてもらうよ。」
「それじゃ最後に2人に・・・いや、ヴァルに渡そうかな、ちょっとこっちにきて。」
そう言ってヴァルを個室に呼び出す。俺から2人に渡してしまっては意味がないだろう。せっかくなら見るなにはヴァルから渡してもらわないとね。
「ヴァル、今いくら持ってる?」
「400万ゴールドくらいはあるけど急にどうした?」
「それじゃ、これをさ20万ゴールドで買わない?」
俺からヴァルに渡すだけだと見る何渡すのと何も変わらない。ただ、見る何渡すためにヴァルが購入したという事実があるだけでも意味が変わってくる。
「おいおい、こんな時に商売か?」
「違うよ。私から2人に用意したんだけど、私から渡しちゃ意味がないでしょ?それに私からヴァルに渡すだけじゃ私からミルナに渡すのと何ら変わらないでしょ?だから破格で売ってあげようと思ったのに。サイズの自動調整のスキルもついてるし、ツールを使えば見た目も変えられるから2人の好きな見た目にもできるよ。いまは普通の指輪にダイヤを埋め込んだだけものだから。」
「なるほどな。なぁ、これ今買って式の当日ここでの2次会で渡すっていうのはダメか?」
「こっちで2次会するの?」
「頼みたいんだがいいか?準備はお前とキキョウにも手伝ってもらいたいんだが。」
「もちろんいいよ。それじゃその時に改めてね。この後出てからはミルナには秘密って言ってはぐらかそう。」
「あぁ。それじゃ買わせてもらうよ。」
そう言ってヴァルは20万ゴールドを譲渡してきた。
「確かに受け取らせてもらったよ。それじゃこれね。」
そう言って少し細工をして指輪をヴァルに渡した。
「あれ?この指輪スキルとかつけてないのか?」
「せっかくだからスキルにロックをかけさせてもらったよ。式当日までにプリーストの職業をサブの職業として取って祝福を授けてあげるよ。」
次のアップデートがギルド戦直前にあるのだが、その時にサブジョブという形でサブの職業を1つ設定できるようになるという発表がされている。このサブジョブというのはそのジョブの基本スキル・魔法を合計5つまで習得できる。ちなみにプリーストの基本スキル・魔法は回復魔法、支援魔法、退魔魔法、浄化魔法など多岐に渡り、そのスキルもいろいろなものが用意されている。その中に基本的にプリーストの職業を取る者が、習得はするが使い道のないスキルがある。ハンスは習得していないらしい。
それは祝福魔法。現状のユーオンでは一切の意味がないとされている魔法。幸運が上昇するのではないかという実験をしてプレイヤーもいたらしいがそういうわけでもなかったらしい。
ただ、スキルを使用した上で、祝福を授ける。祝福を授ける以上の説明はなく、全く意味がわかっていない。
ただ、今回に関してはすごくちょうどいいスキルではないだろうか。プレイヤーとしては正気を疑われるだろうが、俺はこういうことこそ大事にしていきたい。




