第80話 VSキキョウ
優位に立ち、俺は一旦キキョウを殴り飛ばして距離を取った。
「さすがパンドラ、スピード値50くらいならプレイヤースキルでどうにかなるはずなんだけどな。」
「そこに大した差がないんだからそりゃ無理な話でしょ。」
「だな。それじゃ興も乗ってきたところだ。」
そう言ってキキョウはメニューを開きスピード値を250まで上昇させる。
「いいね。それじゃ私も」
それに合わせて俺はスピード値を250、お互いにこのゲームの最大値まで上昇させる。
「キキョウは動けるの?」
「あんまり舐めるなよ。まぁ、厳しいといえば厳しいけどな。」
「そう。私は十分に反応できるよ!」
そう言いながら飛びかかる。なんだ?いつもよりも視界が遅い気がする。お互いに興が乗り、テンションが最高な状態だ。プレイヤースキルがさらに引き出されているんだろうな。
おそらくキキョウも同じだ。ただ、キキョウの場合、移動は危険だ。壁にぶち当たって自爆になる可能性もある。
キキョウの目の前で止まり、殴りかかる。キキョウはうまくかわし、カウンターを叩き込む。それはそれを両手で巻き込むことで威力を殺す。
そして回避した姿勢のままバランスの悪いキキョウの体制を崩そうと足を払う。しかし、それに合わせてキキョウは宙を舞う。
見事なバク宙を披露しながら蹴りを入れてくる。俺は低姿勢に回避しキキョウの着地点を狙ってさらに足を狙う。しかし、それもバレていたらしく、着地点をずらしてきた。そのタイミングを狙って下から突き上げた拳をキキョウは弾き上げて回避する。それに合わせて俺は立ち上がり、お互いに両手による攻撃の応酬が繰り広げられる。キキョウが殴りつけてくるのを俺の右手が弾き、その隙に俺の左手が攻撃してもキキョウが右手で弾く。お互いに足を狙っても先ほどのように、お互いがうまく回避し、元の状況に戻るだけだった。
長時間の組み手が繰り広げられた。お互いに疲弊し、少しずつではあるが、攻撃が当たるようになってきた。2人ともあと3回攻撃が当たればHPが全損する状態だ。
ただ、俺たちはお互いにハイになり、お互いが最高のパフォーマンスを出せている状態だ。疲弊してきて攻撃が当たるようになったとはいえ、それも一瞬だけだった。残り3回という枷の中気を抜くわけにはいかない。
俺は隙ができるのを覚悟でキキョウの攻撃を大きく弾き、飛び蹴りを喰らわせる。
それに対してキキョウはそこまで大きく弾かれておらず、そのまま2発殴りつけてきた。しかし、飛び蹴りを回避することはできず、大きく吹き飛ぶ。
今の飛び蹴りでキキョウはあと1回、俺はキキョウに2回殴られたためあと1回、お互いにあと1回攻撃を受けると終わりだ。
「お互いにあと1発だね。」
「そうだな。せっかく最初同じ突進からスタートしたんだし、最後もそれで終わらせようぜ。」
「おんなじこと考えてた。それじゃ合図はこれでいい?」
そう言いながら拾った石を見せる。
「わかった。それが落ちた瞬間にスタートだな。」
「そう。それじゃ行くよ。」
お互いに構えて、俺は石を投げ上げる。以上な程に遅く感じる。それもそうだろう。スピード250で移動していても遅く感じるくらいなのだから。
体感1分ほどが経過。石が間も無く地面につく。多分キキョウも今こんな景色を見ているのだろう。
石が地面に接触した!お互いに最高速度で相手に向かって突撃する。やはりお互いに回避しつつ攻撃行動を取る。キキョウと接近した状態で俺はさらに体制を変える。今日は異常な程に調子がいい。いや、テンションが爆上がりしてハイになっていることが原因だろうが、そんなことはどうでもいい。
キキョウも接近後に体制を変えようとしているが、250というスピード値がそれを許さない。
そのまま、俺とキキョウは衝突、俺の拳がキキョウを捉え、キキョウのHPがついに全損した。




