第77話 決勝トーナメント第2回戦
俺の勝利後、1回戦はレン、ベルロル、Ria、Roinが勝利して、2回戦が開始された。2回戦の組み合わせはこうだ。
2回戦第1試合 デルタVSレンドル
2回戦第2試合 カイルVSパンドラ
2回戦第3試合 レンVSベルロル
2回戦第4試合 Ria VS Roin
俺の相手はカイル。今回決勝トーナメントに上がったプレイヤーの中でもトップの実力者だ。カイル、レン、Riaに関しては明らかに成績が異常だったのでそれぞれデータを頭の中に入れてきている。
まずはレン。彼はスキル依存の戦闘スタイルではあるものの、そのスキルの数が多く、それを使いこなすため、かなりのやり手だ。第1回以降は常にベスト8か16という好成績を残し続けている。ただし、スキル依存であるため、対策はされやすく、ベスト8以上に残ることはできていない。
次にRia。上位プレイヤーでは珍しい女性プレイヤーで、アバターが他の人よりも二回りほど小さい。身長135cmの細身らしい。やはりまとが小さい分攻撃を命中させづらく、本人のプレイヤースキルも高いため、スピード65まで対応して動いてくるらしい。これまでの成績は第1回がベスト8、2・4・8も同様にベスト8で、残りがベスト16らしい。
そして今回戦うカイル。こいつが最も曲者だ。どういう神経をしているのか毎回前回とは違う戦闘スタイルを取るため、対策ができない。そもそもそんなことをするくらいなら一つのことを極めた方が楽に感じるが、それでも彼の戦闘スタイルはどれも洗練されていて、これまでの戦績にもこれが現れている。第1・3・6・8回が3位、第2・4・5・7回がベスト4という異常な成績を残している。他のプレイヤーからはチーターではないかと疑われているが、運営もそれに気が付かないほど間抜けではないだろう。
第1試合が終わったらしい。なんだか、始まるまでに少し時間があったよな?もしかして煽り合いでもしてたのだろうか?
そんなことを考えているうちに転送された。
「お前がパンドラか。予選では随分暴れてくれたな。だが、エリアが狭くなったこの状態ならどうかな?」
確かに1回戦と比べて少し狭くなっている。通常の決闘のエリアと同じサイズだろうか。
「問題ないですね。それよりもご自身の心配はしなくていいんですか?ここで負けたら、初のベスト8ですよね?これまでベスト4を維持してきたっていうのに。」
「笑わせてくれるな。新参如きに俺が負けるわけないだろ?俺の戦績を知ってるくせにそんなこともわからないのか?」
「知ってるから言ってるんですよ。私はキキョウにも勝るほどのプレイヤースキルを持っている。あなたが第1回で負けたのはキキョウでしょう?それにこれまで準優勝できていないのも毎回戦闘スタイルを変えていて、対応しきれず、逆に一般的なスタイルなため、相手には対応されきってしまって負けている。その程度の研究もせずにきたと思っているんですか?」
俺のその発言ののち、しばらくの沈黙が流れる。それで開始をしていいと判断したのかゴングが鳴り試合が始まった。
先に行動を起こしたのはカイルだ。急にメニューを開きスピード値を130まで上昇させた。捨て身の攻撃か?確かにこのまま俺にぶつかることができれば自分自身は止まって、俺だけ吹き飛ぶ。ただ、俺も今はスピードを125まで上昇させている。多少劣ってはいるが、回避するには十分すぎる。普通に動くなら、動きはじめと同時に止まろうとしてなんとか止まれるかというくらいだ。俺の近く速度は人よりも遅いみたいだから余裕があるけれど。
「余裕の表情だな。お前の最大値は125だろ?おれは130まで反応できる。お互いフェアな状況で戦いたいだろ?お前も130まで上げてみろよ。」
「それでは私の最大まであげさせていただきます。」
そう言って155まで上昇。160は油断すると場外に出てしまうので、念の為155にしておいた。
「155だと!?見栄を張って痛い目見ても知らないぞ。」
「大丈夫ですよ。ほら、先手は譲りますのでお先にどうぞ。」
明らかに怒りを露わにするのを感じる。本当に130まで対応できるのだとしたら、相当なプレイヤースキルを持っていることは間違いない。
待っていると、確かに相当な速度で攻撃をしてきた。もちろん俺の方が速いので余裕を持って躱す。これは他のプレイヤーからしたら脅威だな。だが意味がわからない。これができるなら過去の大会で優勝しているはずだろう。このゲーム内で高いスピード値というのは最強格の武器だ。それを扱えるのに優勝できていないというのは不思議でしかない。
何かチートっぽいな。近く速度の上昇的なチートを使っているかもな。まぁ、気にしたら負けか。さて、また突っ込んできたしカウンターでとどめを刺そうかな。
俺に衝突する瞬間僅かに横に回避し、カイルの方に向かって突っ込みながら腹部を殴りつける。お互いに圧力を受けるが、俺の力が僅かに勝った。
体格差的にはカイルに分があったがカイルは俺に突撃する瞬間両足ガチについていなかった。それだと自分の勢いを消されて弾かれてしまうと、抵抗のしようがない。
そのままカイルは弾き飛ばされてしまい、エリア外まで飛んでいった。
「WINNERパンドラ」
そう表示されたものの、なんだかすっきりしない。間違いなくあれはチートだ。証拠はないが確証を持って言える。まぁ、暴露したところで、意味がないし、放置するのが得策かな。




