第75話 第9回ファイト・ザ・オンラインカップ予選
そんなこんなで、あっという間にファイト・ザ・オンラインカップ当日を迎えた。
今回の参加者数は327人そのうち16人だけが決勝トーナメントに進むことができ、優勝者にはレジェンドプレイヤーであるキキョウとのエキシビションマッチの権利が与えられる。歴代の上位者たちもこぞって参加しており、第8回までと比べても参加者たちのレベルは最も高いだろう。
数人マークしているプレイヤーがいるが、できれば予選で叩き落としておきたいところだな。
予選形式は参加者全員でのバトルロイヤル。かなりの広さのフィールドが用意され、その中で最後の16人になるまで戦闘が続けられる。これが終わり次第、すぐに決勝トーナメントが開始されるので、体力を消費しすぎるのはあまり良くない。
開始時点で周囲どこを見渡してもプレイヤーが大量にいる状態なので上位プレイヤーでも油断して仕舞えばあっという間に倒されてしまうだろう。だが、俺は倒される側ではなく、倒す側だ。大会までの期間で、スピード値160まで対応できるようになった。もちろん通常の決闘でだ。半径10mしかないフィールド内で反応できるくらいには鍛え上げた。自分でももはや人間の域を超えた反射速度と認識速度だとは思うが、これは気にしたら負けだ。自分にはその能力がある、そう考えるしかない。
ただ、終家の影響や、安全を考慮してまだ200以上は試すことさえできていない。200だと1秒で50m以上も進んでしまうので、ほぼ反応できない。そもそも通常の決闘では170でもギリギリ反応できずに場外に出てしまっていた。160までは集中すれば反応できるって感じだ。
さて、ルール説明も終わり、ついに予選が開始するようだ。
「第9回ファイト・ザ・オンラインカップ 予選スタート!!」
スタートの合図と同時に全プレイヤーが動き出し、乱闘が始まった。俺は巻き込まれないよう、そして実験も兼ねてスピード値を250、このゲームの最大値に設定。その速度は秒速75mを超える。その移動をくどによって発生した風圧によって、俺が攻撃していないプレイヤーたちも動きが封じられる。流石にこれだけ広いフィールドなら十分に反応できるな。250だからいつもよりはだいぶ早めに反応しないといけないけれど、感覚でなんとなくわかる。
実況がどんな感じになってるか楽しみだな。確かあの席には解説としてキキョウもいたはずだし、どんなリアクションしてるかアーカイブで確認しないと。
俺が一方向に突っ切っただけで残りプレイヤーの数は150人まで減った。スタート直後に少し減ってはいたが、それでも一気に100人以上は倒されたことになる。俺が直接攻撃したのはぶつかってしまったプレイヤー5人も含めて50人ほどなはずだ。つまり、その他の50人以上は風圧で場外まで吹き飛んでいったんだろう。まぁ、多分俺一人も倒せてないけど。攻撃した奴らも多分全員が場外に吹き飛んで失格となっている。他のプレイヤーからヘイトが集まる戦い方ではあるが、これはこれでプレイヤースキルの賜物なんだ。許してくれよな。
それからいろんな方向に数回走った。もちろん回避できるわけもなく、スピード値を上げて回避しようとしたプレイヤーはその速度に反応できず、自爆したため、どんどん人数が減っていった。
通常予選は40分ほどかかるらしいのだが、300人いたプレイヤーはあっという間に減っていき、10分ほどで残り30人になった。
あと14人減らせばいいわけだが、現状で29対1の構図が出来上がってしまったな。つまりは俺が倒されるか、俺が14人倒すまで予選が終わることはない。まぁ、後者だろうな。ここからは確実に1人ずつ仕留めていくとしよう。近くにいるプレイヤーから順に接近し、そのまま拳をめり込ませる。拳が触れる瞬間に俺自身は急停止し、俺にかかっていた慣性を相手に押し付けるかのような動きだ。
このゲームでは空中の動きをサポートするスキルなどは存在せず、自分自身の技量でどうにかしなければならない。着地などはプレイヤースキルでどうにかできるだろうが、俺の戦い方が相手に要求しているのは空中で慣性を消すことだ。もちろんそんなことは不可能だし、そもそも飛ぶこともできない。仮に慣性をどうにかできても着地に成功しなければ落下ダメージでデスする可能性もある。
そんな調子で、あっという間に14人を倒し、予選は15分足らずで終了した。
「第9回ファイト・ザ・オンラインカップ予選終了!!決勝トーナメント発表は5分後となります。選手はそれまで待機室で待機していてください。」
そうアナウンスがあると、待機室に転送された。もちろん俺みたいなやつのために共用ではなく、個室だ。待機室でトラブルになるのは運営としても避けたいだろうしな。




