第70話 ログイン
目を開けた俺の目の前に広がっていたのはユーオンとは似ても似つかない光景だった。周囲はどちらかというと近代風という感じだろうか。ビルが立ち並び、そこにたくさんのプレイヤーがいた。そして俺に対して手を振る1人のプレイヤーがいる。
ここは日本初のフルダイブ型VRゲーム「ファイト・ザ・オンライン」のなかだ。ファザオンという通称で呼ばれているこのゲームは大衆向けというよりかはゲーマー向け、本格的な格闘ゲームだ。ただ、このゲームで開催された大会においてはゲーマーだけでなく、アスリートが優勝していたりする。そのことからも分かる通り、このゲームではプレイヤースキル至上主義なのだ。プレイヤーにレベルという概念は存在しない。スキルは存在するものの、それはプレイヤースキルの前にはそこまで役に立たないものが多い。なぜならそれらのスキルは全てサポート系統のものであり、基本的な攻撃手段は殴る蹴るだからだ。
そんなゲームの初代大会、そして歴代優勝者を集めた「歴代最強決定戦」という大会で王者になり、レジェンド認定されたプレイヤーがいる。
そんなプレイヤーが変装をして、プレイヤーネームまで偽装して俺に手を振っている。
「なんでその名前にしたか改めて問いただしたいところだが、案内に免じて許してやる。」
俺は早速そのプレイヤーのところまで行き、嫌味を言う。そいつの偽装したプレイヤーネームは「ミソラ」そしてそいつの本来のプレイヤーネームは「キキョウ」。
「まぁ、いいじゃねぇか。それにしてもそっちにしたんだな。」
「まぁね。ユーオンの件もあるし、あんまり知られないほうがいいしね。」
「それはそうだな。あと、パンドラの箱のみんなには「第9回ファイト・ザ・オンラインカップ」に出場するってことは言ってあるからな。」
「そう。じゃあ、みんな見てくれるかな?」
「時間が合えば見てくれるんじゃないか?もしかしたらギルドで集まって見てるかもしれないぞ。」
「それはそれでなんだか気恥ずかしい感じだね。とりあえず、チュートリアルまで終わらせたいんだけど、一緒にお願いしてもいい?」
「あぁ。まぁ、チュートリアルと言っても大したことはないがなんならチュートリアルはカットできるし、俺が教えようか?」
「その方がいいかも。」
そう言いつつ、俺は設定画面からチュートリアルの設定をオフにした。
「それじゃ基本的な戦闘に関してだが、このゲーム内でプレイヤーと戦う時は決闘という言い方をする。決闘で戦って勝利することが大会のトーナメントの勝ち上がり条件だ。予選は全参加者が一つのフィールドに集められるバトルロイヤル、残り16人になったら終了してトーナメントに移行する。16人のトーナメントだから、4回勝利で優勝だな。今回の参加者は300人くらいだったから、予選は基本的に生き残りを目指す方がいいな。人数が多いと、疲弊して後に響く。肉体的な疲弊は回復しても精神的な部分は厳しいからな。」
「それは確かにそうかも。300人から16人まで減ったとしてトーナメントに行くわけだけど、決闘の戦闘方法は?」
「決闘は基本的に1体1で行われる。実際にやって見たら分かるんだが、相手のHPゲージが見えるんだが、それを0にすることで勝利だ。このゲームにはPKとかいう概念はないから安心していい。基本的な攻撃手段は殴る蹴るだな。今回の大会では決闘を行う専用のコロッセオが用意されている。その範囲内での戦闘になるな。基本的にはなんでもあり。何をやっても怒られることはないし、チートを使わなければ反則行為も取られない。スピードはマッハレベルまで出せるが、ゲームシステムによるサポートがないから基本的に場外に行ってしまう。その場合は棄権扱いになるから気をつけろよ。街中や、大会以外での決闘の場合は専用のフィールドが現れて戦うことになる。観衆がついて書けとかやってる奴もいるけどまぁ気にすんな。」
「ありがとう。だいたいわかったよ。スピードに関してだけ感覚が重要になりそうだからどこかでプレイヤー見つけて試してみるよ。」
「それがいいだろうな。俺の友人紹介しようか?」
「いいの?」
「もちろんだとも。その前にスピード、ユーオンでいうところのAGIについて少しだけ補足だ。スピードは基本的にメニューから変更が可能だが、逆を言えばメニューを開かなければ変更ができない。決闘中に変更はほぼできないと思っておいた方がいいぞ。」
「確かにそれだと途中の変更は厳しそうだね。まぁ、それに関しても大会までに調整するよ。」
「おう。それじゃ、連絡取れたから、俺の友達のところに案内するな。」
「うん、よろしく。」




