第67話 密談
話し合いからしばらくはイグザムがこちらのメンバーに接触しようとしていた様だ。あちこちに手のものを回していたらしく、見つけては接触しようと接近していたらしい。もちろんみんな先に見つけて逃げてきていたので問題は起こっていないが。
そうして2度目の密会の日を迎えた。みんなにはイグザムの接触の可能性を考えてログアウトしてもらっている。
「初めまして。私はイグザミナ副ギルド長のミナと申します。」
「私はギルド『パンドラの箱』ギルドマスターのパンドラです。早速本題に入りましょうか。」
「はいもちろんです。今回こちらがお持ちしたのはギルド『完璧』の情報です。こちらにまとめていますので後ほど目を通していただいて、不備がございましたら後ほどイグザムにご連絡ください。」
「ありがとうございます。それではそちらが聞きたい情報について聞いても?」
「はい。私共が今回望む情報はエクストラモンスターに関する情報。ユニークプレイヤーとの関係や、出現条件などです。」
「それについては私も知らないよ。なんとなくの推測はしてるけど。」
「倒したのに分からないのですか?それにあなたが倒したということは何かしらの情報を元に発見されたのでしょう?」
「そんなわけないじゃん。あれはうちのメンバーが偶然見つけたエリア。そこで私がいろいろ策を講じて倒したってだけだから。」
あえてタメで喋ることで相手の怒りを買う。そうして冷静さを欠いてくれれば本性が少しくらい見えるかもしれない。僅かに表情が引き攣っている。
「それではその考察についてでいいのでお聞かせいただけないでしょうか?」
「無理に決まってるでしょ?あくまでもこれは対等な取引。こっちは確定していない情報を渡すなんてことはできない。それにあなたたちならもう同じ結論まで辿り着いてるんじゃないの?」
「私共はあなたがどれだけ思慮深いのかを知りません。なので私たちの考察が一段階上を言っている可能性があります。」
こっちの煽りを理解した上で煽り返してくるか。よくそんな余裕があるものだな。
「それはないでしょう。それでどうしますか?私が提供できる情報はエクストラモンスター《シャドウ・マリオネット》もしくは《地底の遺物》に関する情報のいずれかです。」
「やはりそこまでは辿り着いているのですね?」
「当たり前じゃないですか?私共はここからさらに二段階上まで考察していますよ。」
「そうですか。そうですね。《地底の遺物》に関してはまだ情報を得られる機会もあるでしょうが、《シャドウ・マリオネット》に関する情報をいただきましょう。」
「わかりました。録音は禁止、データ媒体での情報の保存も禁止でお願いします。手帳などで手書きでメモしたもののみの情報で。後からそちらがデータとして保存されるのは咎めませんが。」
「はい。」
ミナはそう言いながらメモを取り出す。なぜ素直に従う?ここまで無茶な要求だと従う必要もないと思うのだが。
「まず、《シャドウ・マリオネット》の能力についてですが、エリア自体が全て影で構成され、状態の解除には強力なライトが必要となります。そして《シャドウ・マリオネット》は非常に高度なバトルAIを搭載しており、名前に「シャドウ」とつくモンスターを好きな様に操れるといったものです。その空間内には大量のモンスターがひしめいており、空間自体も無限に近いほどに広がっていました。正直勝たせる気のない設定としか思えません。私の本来のステータスでもライトがないと攻略不可でした。」
「なるほど。他に何かありますか?」
「そうだね。エリアに入る条件はイグザム殿にすでに話していますし、これと言った情報はありません。ただ、一つ言えるのは運営はエクストラモンスターを倒させる気はないと思います。」
「そうですか。情報提供ありがとうございます。それでは私はこれで失礼いたします。」




