第65話 VRMMOの才能
エクストラの情報が出て3日後、イベントの情報が発表された。
イベント開始は今日からちょうど10日後、イベント形式は予想通りボスラッシュだそうだ。ただ、予想と違ったのは、出現するボスが同じボスだということ。倒すごとにレベルが1ずつ上昇するらしい。今回はパーティーランキングが用意されており、上位のパーティーの所属しているギルドにはステータス上昇の恩恵が、参加者全員に攻略レベルに応じてアイテムが付与されるとのことだ。
「今回はお前に任せてもいいか?俺たちは全員でパーティーを組んで、出来るだけいい報酬を目指して、ギルド報酬はお前に任せたい。」
「それは大丈夫だよ。15位だっけ?たぶん行けると思うから。1人当たり1回までだからみんなに先に行ってもらってその情報をもとに攻略したいんだけどいいかな?」
「それは良いと思いますが、せっかくならイグザミナから情報を買ってはどうでしょう?確か明日こちらに来るのですよね?その時にイベント開始後にボスに関する情報を購入したいと聞いてみて、それができるようならそうした方がいいと思います。」
「それもそうだな。俺としてもそれなりに情報がないと、戦うのきついし、キキョウも同じだろ?」
「ヴァルさんの言うとおりだと思います。ハンスさんの案は今回のイベントにおいてすごく効果的です。」
「確かに、ハンスの案は採用かな。それにこうやって購入して、対等であることをアピールすれば信用も得られるだろうし。」
「まだお互いに信用はしてませんもんね。」
「レントルの言うとおりだね。」
ちなみに今回の話し合いにミルナとユイユイは呼んでいない。このギルドの頭脳となるのは、俺、キキョウ、ヴァル、ハンス、レントルそして先生だ。今後誰が入ってこようと、そこに変更はないだろう。追加はあるかもしれないけど。2人は悪いが、素材採集に行ってもらっている。ユイユイは積極性が高く、すでにレベル80まで到達している。一緒に行動していたレントルも同様だ。ハンスは50後半だそうだ。僧侶としてなら最低限ってところだな。
「イグザミナに関して、他に何かないのか?」
「ん?ほかにって?」
「いや、一昨日、また会ったんだろ?」
「そうだねー。みんなとの話し合いの後、あったよ、基本的には一昨日伝えたとおりだけど、定期密会の日が、毎週土曜夜10時に決まったから、10時から11時まではギルドを空けてくれればそれでいいかな。特別何か決まったとか情報の交換があったとかはないかな。」
「そうか。」
「イグザミナのギルドマスターってイグザムなんだろ?もっと気を付けた方がいいんじゃないか?」
ヴァルがそんなことを聞いてくる。
「気を付けたらってどういう意味?」
「そのままの意味だ。あいつはプロゲーマーの井口昴。このゲームがリリースされてから突如出現したプロゲーマーで、このゲーム内において圧倒的なコミュニケーション能力で、他人の心を掌握して考察専門ギルドのマスターとして圧倒的な戦力と情報力を持つ。戦力的に下に見られがちだが、あのギルドは何かあるぞ。井口自身なにかしら他人の心を操るとまではいかないが、掌握するすべを持っている。」
「そのくらい私も気づいてるよ。プロだとは知らなかったけど、あれは異常だね。なんというかそれこそ魔法を掛けられているような感じだね。話術なのか仕草なのか原因はわからないけど、すごく心を惹かれるというか、洗脳されているような感覚になるんだよね。」
「何か余計な情報しゃべってないだろうな。」
「パンドラに関しちゃそこのところ大丈夫だろ。こいつはっきり言って異常だから。俺からしたらVRゲーム全盛を迎えたとき、こいつがプロであるべきだと思ってるし。」
「キキョウ、今そういうの良いから。これは感覚的なところだから伝えるのが難しいんだけど、私は人の話を聞くとき、わかりやすく言うなら分裂してるような感じなんだよね。」
「確かにパンドラと話してるときはそんな感じで聞いてるって感じだな。」
「やっぱ先生はよく見てるね。もっとわかりやすく言うなら、二重人格が近いかな。二重人格ではないんだけど、相手の言葉を聞いて会話を成立させる私と、それを第三者的な視点で見つめる自分って感じ。いつもそうしてるってわけじゃないんだけど、相手を信用できてないとか、駆け引きをしてる時はそうしてるんだよね。あと、マインドコントロールまではいかないけど、相手の思考を少しくらいなら誘導できるかな。」
「そんなことができるんですね。本当にそれは才能ですね。」
「そうなのかな?」
「そうだろ。VRMMOにおいてこれ以上にほしい才能はないな。現実ではないとはいえ対人コミュニケーションを必要とするゲームなわけだし。」
「まぁ、パンドラは昔からそんな感じだしな。おかげで俺以外と一緒にいるの見たことないし。」
「それはお互い様じゃない?あんただってゲームばっかで私以外と一緒にいるの見たことないし。」
「耳が痛いな。まぁ、お互い様ってことで。」




