第63話 イグザミナ
一旦ギルドホームに戻ると、さっきまでとほぼ変わらなかった。みんないつものことだと気にしていないのだろう。先生に関しては知ってるわけだし。でもいくら日曜だからって教師が昼間からVRMMOに入り浸ってるのってどうなんだ?
「さすがパンドラだな。今日はみんな集まって祝宴か?」
「それもいいね。ただ、あちこちのギルドから情報よこせってきてたからその対応もしといた。」
「お前のことだからそっちの情報もよこせってとこか。」
「もちろん。考察ギルドにだけは他のギルドを売るなら情報を教えるって伝えといた。」
「それはまたどうしてだ?考察ギルドともう一つ出てきたら無駄になるじゃないか。」
「これでほぼ確実に他のギルドを売るという選択を取るはず。しかも売ると言っても極秘裏にだから、向こうにデメリットはほとんどない。他に自分たちの情報をうるという決断をしたところがあっても嘘をつくかもしれない。考察ギルドはおそらく情報のためなら誠実に嘘なしで教えるはず。そうしたら嘘をついている場合気がつくことができて無駄な情報漏洩を防ぐことができる。それに普通のギルドで自分たちの情報をうるところなんてないんじゃないかな?それに全てのギルドに対してギルド外への情報の漏洩を禁止するっていうのも盛り込んだから生産系がメインのギルドもこの情報を買う意味がない。」
「ほぉー。よく考えられてるな。おまえ、もうちょっとプレイヤースキル磨いたらプロになれるんじゃないか?多分その考え方はゲーマーとしてすごく優れていると思うぞ。」
「そんな簡単なものじゃないよ先生。もしスカウトでもきたら考えてみたいとは思うけど。」
おっと、イグザミナからの返事が来た。
「ちょっと待ってね。今言ってた考察ギルドから返信が来た。」
「パンドラ殿、個別のお返事感謝致します。先の件に関してですが、こちらがあなた方に情報を漏らしているとバレない保証はあるのでしょうか?私共が報復を受ける可能性などないのでしょうか?」
なるほど。確かにそれは気にするよな。報復を受けてギルドが潰れる方が問題だ。それならどうすべきだろうか。絶対に漏洩を防ぐには、向こうからこちらに出向いてもらうのが一番か。今このギルドホームの位置を知っているのはNPCギルドの紅蓮騎士団だけだ。
「私共のギルドホームに毎回違う方をご派遣ください。そちらからの人員の流出がない限りバレることはないと思います。私共のギルドは特殊な場所にありますので、基本的には怪しまれないと思います。特にあなた方であれば。ただし、定期的にギルド以外の私たちが指定した場所にも人員を派遣してそのダンジョンやエリアに入って探索をしてください。それで怪しまれずにできるはずです。他の方にギルドの場所がバレた場合はこちらが場所を指定します。」
「わかりました。まずは私が行きますので場所を教えていただきますでしょうか?」
「わかりました。場所はディクティオンの百穴・最深部。地龍ガイアのいる場所です。」
「わかりました。これから伺いたいのですが、良いでしょうか?」
「はい。ただし複数名で来てください。1人だと逆に怪しまれますので。」
「わかりました。」
フレンドでない以上チャットが使えず、メールでこの様なやり取りは厄介だったが、なんとか約束を取り付けた。
「先生、一旦作るのやめて、片付けて。それで個室に入ってて。もう直ぐ考察ギルドの人が来るから。」
「わかった。急だな。」
「こういうのは早いうちの方がいいからね。善は急げって言うでしょ?」
「今のパンドラはどっちかというと悪だけどな。」
先生がニヤッと笑いながら道具を片付け、自室へと引きこもった。
俺はガイアの部屋が見える前の曲がり角まで行き待ち構えた。おそらく転移できるメンバーを連れてくるだろうから、洞窟前までは転移してくるはずだ。
「パンドラ殿、お出迎えありがとうございます。こちらを指定されたのは何か理由がおありなのですか?」
「イグザム殿、お初にお目にかかります。メールでお伝えした通りです。ついてきてください。」
そう言ってギルドホームまで案内した。
「まさかダンジョンないにギルドホームがあるとは!確かにこれでしたらバレない限り調査と言い訳すれば済みますな。ここでエクストラが倒されていますし。」
俺たちはしばらく談笑し、本題に入った。




