第62話 勝利と情報戦
{反撃領域}の効果で強化されたAGIで一気に敵を倒す。前の予想通りこのエリアは無限の広がりを見せていた。そのため、飛斬撃の効果が付与された短剣「空斬月」を使い、全方向に対して斬撃を飛ばす。この斬撃はSTRの数値次第で好きな範囲まで指定できる。もちろん一定以上のSTRになれば無限を指定することもできる。今回は無限を指定。このエリアにいるボス以外のモンスターは全て滅ぼされた。ただ、ボスだけは生き残っていた。
ボスモンスターの名前は「シャドウ・マリオネット」おそらく名に「シャドウ」とつくモンスターを操ることができるのだろう。そしてこいつこそが俺が感じていた以上なほどの強力なAIの原因で間違いない。
俺とは距離をとったままだ。だが、俺のAGIは今無限。これが解除されて仕舞えば攻略は不可能だ。
一気に接近して・・・
「スキル{スキル解除}」
なに!?俺のスキルが強制的に解除された。せめてライトの効果が切れる前に倒し切らないと。おそらく残り2分弱。シャドウ・マリオネットのすぐそばには来ている。だが、この状態で{反撃領域}が解除されてしまうのは良くない。相手のAGIも相当に高いはずだ。
とにかく斬撃を飛ばして牽制、そして少しだけ距離を取る。相手も相当強いな。
おそらく神速で潜伏しても見つかるか解除されて終わりだ。だから不意打ちでの暗殺は現実的ではない。
どうすれば倒せる?あれに賭けてみるか?それしかないか。ただ、あれは前回見せている。回避されかねない。ただ、幸運なのはあいつが浮いていること。これを利用すれば
「スキル{大地の覇者}」
相手に聞こえない様とても小さな声で。スキルを発動させる。
5秒間の地震。通常ならこれで気がついて回避行動を取ることができるかもしれない。ただ、あいつは気がつけない。この空間には動いているか判断する材料がない。なぜなら俺自身は飛び上がり、この空間にはこいつと俺以外物質が存在していないのだから。
大地の覇者の効果が発動!剣山大地がシャドウ・マリオネットの体を貫く。影の中でなければどんなものであろうと物理攻撃が通用する。スキルは東堂者はスキルの影響を一切受けることなく動くことができる。剣山大地に貫かれて動けなくなっている間に!
俺はミミックに姿を変え、10本の腕の全てに短剣を装備し、全てを突き刺す。
グォォォォォォォ
声にもならない悲鳴をあげながらシャドウ・マリオネットが消滅する。本体の耐久自体は高くなかったらしい。
撃破した直後、俺は元の場所に戻されていた。そして何も操作していないのにも関わらず、目の前にディスプレイが表示された。
『エクストラモンスター討伐のお知らせ。
本日7月26日16時38分に「ディクティオンの百穴・最影部」のエクストラモンスター『シャドウ・マリオネット』の討伐を確認しました。討伐者プレイヤーネームはパンドラ 以上1名です。
エクストラモンスター討伐に伴い、全プレイヤー参加型エクストラストーリー【ユニークプレイヤーへの道】が開始されました。エクストラストーリーを進めることによってユニークプレイヤー攻略への足がかりを見つけることができます。』
とのことだ。【ユニークプレイヤーへの道】ってことはそれぞれに何かしら弱点的なものがあるってことなのか?
おっとチャットだ。キキョウかな?それにメールも来ているな。
「お前今度はまたすごいことやらかしたな。」
「まぁね。前にキキョウが見つけてくれたエリアのボスだよ。また今度話す。」
チャットの方はキキョウだったみたいだ。
「パンドラ殿、我々のギルド、考察専門ギルド・イグザミナはぜひともエクストラモンスターについてお話をお聞きできればと思っております。我々の考察結果や他のギルドの情報と引き換えでも構いません。あなたが知りたい情報と引き換えにエクストラモンスターの情報をお教え願えないでしょうか?イグザミナ ギルドマスター イグザム」
やっぱりか。情報を集めてゲームについて考察する変人の集団だし、ギルドマスターなら他のギルドのマスターに自由にメールを送ることができる。それを利用して情報を聞くための交渉に来たか。他のギルドの情報は知っておきたいけど、それに関してはいくらでも知る方法があるんだよね。こういう人たちは信用はなるけど、信頼は置けないし。
他のギルドからも似た様なメールが大量に来ている。これほとんど全部から来てるんじゃないか?そりゃそうか。この情報を知っているのは俺しかいないんだもんな。でもこういうゲーム内で独占している情報って相当貴重なんだよな。とりあえず一斉送信機能で返信をするか。
「各ギルドギルドマスター各位
連絡が相次いでいますので先に言わせてもらいます。
私はエクストラモンスターの情報について開示する気はありません。
ただし、それではみなさん納得されないと思いますので、こちらからお話しする場合の条件を2つ提示します。ただし、イグザミナは例外ですのであとでご連絡します。
条件1.私が話した情報を一切ギルド外に出さない。
条件2.そちらのギルドに関して現状の全ての情報をこちらに開示する。メンバー数や幹部のステータスまで開示してもらいます。ただしこちらがギルド外にそれを持ち出すことはありません。
これを受け入れられる方のみ改めてご連絡ください。ただし、小規模ギルドの場合は条件2が幹部ではなくメンバー全員の情報に変わりますのでご注意ください。」
この内容で送信した。それ以降これ以上の交渉は無駄だと判断したのかほとんど連絡は来なかった。そしてイグザミナにも返信を送る
「先ほど送信したメールにもお書きした通り、イグザム殿には別途返事をお書きします。先ほど同様2つの条件を提示させていただきます。条件1は先ほどのものと同じなので条件2のみ提示します
条件2.ギルドイグザミナはギルドパンドラの箱に対して要求があり次第他ギルドに関して所持している情報の全てを極秘裏に流すこと。その期間はどちらかのギルドが消滅、もしくはこのゲームのサービスが終了するまでとする。」
これでいいだろう。これでどこか一つでも情報を得たがればそのギルドの情報がうちに入ってくるしイグザミナはおそらく他のギルドを売るだろう。情報のために嘘をついたギルドがいたとしてもバレるわけだ。




