第61話 最影部攻略
それぞれイベントまでにすることが決まり、学生組は夏休みに入った。ゲームとしても発売後初の夏休みということもあってプレイヤー数がさらに増加した。大学生から小学生までが主な新規ユーザーで、大規模ギルドは最大人数まで登録するギルドも出てきた。ギルドの収容人数が最大までいくと、新たにギルドホームを購入することでギルド規模を拡大することができるらしい。うちのギルドはそんなことをするつもりはないけれど、大規模は人数競争が加速し、1000人を超えるギルドもいくつか出てきた。小規模ギルドは少数派で、その中でもパンドラの箱は最も小規模なギルドだ。
そして、その中でもさらに分かれて行動しているので他のギルドからしたら異常だろう。特にギルマスが単独で行動していることは。
「先生、前に頼んでたライトの制作って終わってる?」
新メンバーを迎え入れてから1週間が経過し、イベントまで残り18日だ。ライトというのは前にディクティオン最影部の攻略に乗り出した時に依頼していたものだ。
「あぁ、そういえば頼まれてたな。もちろんできてるぞ。これでいいか?」
確かにこのゲーム内で最も強いライトだ。
「大丈夫。ありがとう。それじゃまたディクティオン最影部に行ってくる。」
「あそこいくのか?死なない様に気をつけろよ。」
「分かってるよ。先生こそ、みんなの防具作成お願いね。」
先生にはユイユイたちの防具作成を頼んだ。そろそろ戦闘スタイルが固まってきて、それぞれから武器より先に防具の依頼が来たのだ。
「そっちは任せとけ。それじゃ気をつけてな。」
「うん。行ってくる」
今からやろうとしているのはいまだに攻略者のいない古代文明の遺跡。その隠しエリア。厳密なことを言うと、隠しエリアこそが本来のボス部屋の様な扱いなのだろうが。
ギルドホームをでて、少し歩き、細道に入る。その先は行き止まりになっているが、そこにある岩の一部のみがわずかに黒い。そこに触れることで入ることができる隠しエリアディクティオンの百穴・最影部。こここそがディクティオンの百穴の本当のボスのいる場所だ。地龍ガイアはダミーだ。
前回来た時は制限のないエリア、どれだけ移動しても一定距離を保つ大量のモンスター。そしてこちらのスキルを瞬時に理解し、動くまでは攻撃をしてこなかった超高性能なAI、それに加え、影を利用し姿を消す、それどころか実体を消していると言うチートモンスターに敗れた。でも今回は違う。影を利用すると言うことは光を当てることでその能力が失われる。今回先生に作ってもらったライトはユーオン内でも最も明るいライト。周囲の空間自体を照らすことができる特別なものだ。しかもこのライトによって影は生まれない。
「相変わらずモンスターは様子を窺っているか。つまり侵入したプレイヤーのことを記憶し、それを次回以降適応することもできると。ただ、今回はそうもいかないぜ。」
俺は人型に変化。ここでは本来のステータスが開放されている。その瞬間周囲から襲いかかってくる気配を感じるが、一旦全ての動きを停止することで{不壊}を発動。それを利用して攻撃を無効化。相手が様子を見るために離れた隙をついてライトを点灯。
俺の周囲にいたのは影と呼ぶに相応しい、影を実体化したかの様なモンスターが数百体。と言うか、ライトの範囲外までびっしり埋まっている。これは1000体以上はいそうだな。
「なるほどな。陰に潜み、陰そのものがモンスター化したものなら影がある限り攻撃は受けないよな。しかもここは影そのものが空間化した空間。それゆえに潜み続けることができる。だが、この状態になって仕舞えばただの雑魚でしかない。」
モンスターの種類は様々だった。全てに共通しているのは名前に「シャドウ」とついていること。シャドウゴブリンやシャドウデーモン、シャドウビーストまで多岐に渡っていた。
とりあえず最大のAGIを解放し、両手にはパンドラの双剣を装備、そしてライトの範囲内にいる全てのモンスターを撃破した。
問題はこの空間での勝利条件だな。他のエリアの感じを見るに、おそらくボスが1体どこかに潜んでいるはずだ。プレイヤーに倒せない設定にはしないはずだからそこまで遠くではないだろう。
「動いてないと近づくこともしないか。それじゃ新スキルのお披露目と行こうか。スキル{スキル効果増大}{反撃領域}」
俺の獲得した新スキル。正確には獲得したのではなく街で購入したのだがそれはまぁどうでもいい。その効果は代償を支払うことで好きな様にスキルの効果を増大させることができる。今回は10時間ステータスを1レベルの状態まで下げることを代償に{反撃領域}の効果範囲を「現在いるエリアの全て」に拡大。これはディクティオン最影の範囲というわけではなく、10時間の間ならどこでも適応される。そして先生の作ったライトに隠された効果。
「極光ライト、燃焼モード発動」
燃焼モードとはライト自体が燃焼し、焼失する代わりに焼失するまでの5分間その光の届く範囲が先ほどと同じ様にエリア全域まで拡大する。
これによってこのエリアに安全な場所は一切ない。{反撃領域}のなかであり、影も存在していない。
さぁ、決着と行こうか!




