第6話 装備作成と実験
「これは素晴らしいね。修練の横穴の深部にしかいないモンスターの素材までそろっている。さすが掲示板でテロ宣言をして修練の横穴すべてを毒の空間と化しただけはあるね。」
「お前そんなことしてたのか。」
「仕方ないじゃん。積極的にPKしたいわけじゃないんだから。」
「それはそうとしてこれだけの素材があれば現状の最高級のものが作れるね。必要素材に加えてここの素材と交換ってことでどうだい?残りの素材は防具作成に必要そうな物以外は買取をするよ。防具職人はキキョウに紹介してもらうといい。」
「それじゃそれでお願いします。武器は双剣がいいのですができますか?」
「職業はアサシンといったところか。まぁ、それがいいなら注文通り双剣でつくりますよ。片刃のダガーでいいですか?」
「はい。お願いします。」
「それでは必要な素材と先ほど指定した素材以外の買取金額の160万ゴールドです。」
そういって金袋を渡された。かなり重い。160万か。金は自動的に収納されるみたいだな。
「あとは防具に必要な素材の返却です。いい素材もあるのでかなりい防具が作れると思いますよ。それでは店を開きたいのですがいいですか?」
「はい。ありがとうございます。」
「いえ。それでは夕方にはできるので取りに来てください。」
「はい。それじゃ行くよキキョウ」
「お、おぅ。それじゃキースまたあとでなー!」
「はい、また後程。」
それからキキョウに防具屋に連れて行ってもらった防具に関してはNPCの店が一番いいというのでそこに行って素材から作ってもらった。そっちの方はすぐにできて、かかった金額は100万ゴールド。かなり高額ではあるが、相当良い物ができた。これまでは普通の女の子が来てそうな服を着ていたのだが、今回は動きやすさ重視で金属系の素材は使用せずにできるだけ軽量化して作成してもらった。よくアニメとかゲームである女盗賊の衣装といった感じだ。口元を覆い、服は鞘を取り付けられるベルトの付いたショートパンツと胸を隠す程度の服。防御力は全く期待できないが、動きやすさは最上級だ。靴には仕込みナイフがあり、武器を失ってもそれで攻撃することができる。そもそも殴るだけでも十分な火力だろうし関係ないかもだけど。
「なんか、本当に女って感じになったな。」
「そうだね。これからどうする?今お昼過ぎだし、行ったログアウトして昼食とってから合流する?」
「いや、夕方まで自由行動にしよう。ログアウトしてもいいし、レベル上げしててもいいぞ。ほかのプレイヤーにはレベルが見えないからお前はレベル90越えに見られる可能性が高い。下手に絡まれないように気を付けとけよ。特にギルドの勧誘とかは。」
「もちろん気を付けるよ。俺はAGIに慣れるためにもう少し残ってアバターに慣れるよ。ディクティオンの百穴なら問題ないだろうし。」
「そうか。俺はログアウトして夕方に戻ってくるわ。」
「オッケーそしたら4時にここ集合でいい?」
「ディクティオンまで距離あるけどお前のAGIなら一瞬だもんな。了解。あんまり全力だしすぎるなよ。下手すると走るだけで地形が変わる。」
「わかってるって。それじゃ行ってくるね。」
「またあとでな。」
キキョウはそのまま宿屋に行ってログアウトした。街中でのリスポーンポイントの更新は宿屋でしか行えないのか。というかプレイヤーは特定のアイテムか、宿屋しか選択肢がないんだな。俺は町の外でもログアウトできるけど。
それじゃディクティオンまで行くか。町の外、少し町から離れるまではゆっくり歩いて、そこから一気にダッシュする。
うん、意外と問題なく走れるな。周囲の景色もなぜかわからないけどちゃんと見えている。時間の進みがすごく遅く感じるが、自分の動きが速すぎるせいだろう。もしくはシステム的なサポートが入っているか。周囲に衝撃波が発生しているはずだけど、それもシステムによって消去されているみたい。これなら周りへの影響を考えなくてもいいから楽だね。
現実の距離に換算すると5キロほどの位置にあるディクティオンの百穴までたった1分で到着した。それでも全力で走ってはいないし、自分でも底が見えない。今の時点で時速300キロだ。下手すると音速くらい出せるんじゃないか?
まぁ今はそんなことどうでもいいか。試したいことはそれだけじゃない。もう一つある。
ボス部屋ではなくさっきキキョウと2人で話していた部屋まで来て、ミミックの姿に戻る。{毒霧}はこっちの姿でないと使用できないらしい。人の姿で使用する場合には杖が必要になるらしいので、少し厄介だ。
「スキル{毒霧}」
周囲に毒霧がまき散らされたのを確認して人間の姿に戻る。ミミックの姿の時は毒や状態異常を無効化していたけれどこっちはどうだ?
ダメージはなさそうだ。この姿でも毒は無効化できるみたいだな。それならほかの状態異常も同じと考えてよさそうだ。慢心は良くないがほぼ確定でいいだろう。
試したいことはこのくらいだし、いったんログアウトして昼食でも取ろうかな。
それから昼食をとり、いろいろとリアルの方ですることをして再ログインしたのは15時50分頃だった。