第55話 ユーオンとキキョウ
「本当に創りこまれてるね。始まりの町ってチュートリアルだけでもっと質素かと思ってた。」
「だろ?正直中堅でもここの装備は欲しいくらいだからな。数は少ないけど、安くて質がいいからな。」
「確かにそうだね。カフェとかもあるし、本当に充実してるね。ほかの町を縮小した感じっていうか。」
「確かにそんな感じだな。俺も初めてこのゲーム入った時ビックリしたもん。ほかのゲームだと始まりの町にここまで力を入れてるものはないからな。」
キキョウはいろいろなゲームをプレイしている。これまでVRゲーム3作品すべてに加えて数多くのMMOをプレイしてきている。ファンタジー系のものを好んでいる。
ユーオンの前に出たフルダイブ型VRゲームとしては2作目かつ、フルダイブ型のオンラインゲームとしては世界初のゲーム「ファイト・ザ・オンライン」というものがある。このゲーム、名前の通り格闘ゲーなんだが、VR初のオンラインゲームとだけあってキキョウはかなりやりこんでいた。
それ以前から様々なオンラインゲームの大会などでもそれなりに結果を出していたのと、プレイヤーネームが同じなのもあってか、キキョウはその界隈ではそこそこ名前が売れてるらしい。そして、その「ファイト・ザ・オンライン」で行われた初の大会。キキョウは圧倒的なプレイヤースキルで優勝したらしい。ユーオンで見ていてもプレイヤースキルはとんでもないが、全員の条件が同じとなるとキキョウのプレイヤースキルはさらに輝く。
そしてそこでのプレイヤースキルが高く評価され、最近とある企業からプロプレイヤーとしてのスカウトが来たらしい。まだ学生であり、VRゲームが世に出たときに法律が制定され、ゲームのプロプレイヤーには学生はなることが出来なくなっていたため、高校卒業後に加入ということで昨日、契約が決まったらしい。
話がだいぶそれていたが、キキョウはそれだけたくさんのゲームをプレイして、VRゲームでもいち早くその特性に適応した人物なのだ。それだけゲームを愛し、やりこんでいる人物がそれだけ評価しているゲームってことだ。
「お前が言うなら相当だもんね。1年半後にはプロになるお前がね。」
「何も言ってこないと思ってたら急にいじってきたな。お前も試合映像は見ただろ?俺にはそれだけの価値があるってことよ。」
「確かにあれはすごいよね。」
「だろ?俺としてはお前もそのポテンシャルはあると思うけどな。このゲーム内ではあくまでもステータスに頼っているものだけど、それでもプレイヤースキルは相当高いし、俺以上に頭が切れる。」
「そうかな?キキョウほどじゃないと思うけど。」
「そんなことないって。そうだ。次に発売されるVRゲームって確かオンラインのFPSだったよな?お前も一緒にやってみないか?FPSな以上個人戦だけど、悪くはないと思うぞ。」
「考えとく。そもそもお金ないから苦しいんだけど。」
「それはその時考えようぜ。最悪俺が出すからさ。」
キキョウは親が甘いのもあり、ゲームを買うためのお金をいくらでも出してくれるらしい。俺の親はお小遣いでやりくりしているなら関与しないって感じだ。勉強の方に関しては単位が取れていれば何も言ってこない。これはキキョウの方も同じみたいだ。
「まぁ、その話はまた今度ね。ここはユーオンだし。」
「そうだな。」
「それで、プロチームの方はどんな感じだったの?顔合わせはあったんでしょ?」
「あぁ。みんないい感じの人だったよ。プロゲーマーってもっと廃人が多いんだけどな。」
「それは良かったじゃん。」
「中にはほかのゲームで知ってた人もいたし、俺のこと知ってくれてる人もいたよ。ただ、チームとして動きはするけど、個人戦のゲームも多いみたいだから一人のことも多いだろうな。VRゲーム専門のチームだし、みんなこのゲームにいるみたいだったよ。うちには誘わなかったけどな。」
「そうなんだ。1年半後かぁ~。このゲームはどこまで成長して、パンドラの箱はどこまで強くなってるんだろうね。」
「ユニークプレイヤーが全員倒されてシンプルな異世界系ゲームになってたりしてな」
「それはないでしょ。サービス開始から1年半で攻略されたら運営もたまったもんじゃないでしょ。」
「それにやるとしたらお前しかいなさそうだけどな。」
「そうだね。まぁ、今はメンバー探しをがんばろ。このゲームの攻略には私のステータスをイベント報酬でどんどん上げていかないといけないんだから。それで他のユニークと戦うときに圧倒的な力をつけておかないとね。」
「それもそうだな。それじゃメンバー探しを再開するとするか。」




