第50話 衝撃の正体
話し合いの翌日、イベントが開始した。
俺たちは予定通りに分かれ、討伐数稼ぎと経験値稼ぎをした。俺は1日に12時間近くログインし続け討伐数をひたすらに稼いだ。この期間中に限って俺は本来のステータスが解放され、人型にもなれたのでいつもよりかかなり楽だった。
そして今日は最終日。昨日発表された途中経過では個人討伐数はぶっちぎりの1位、ギルド討伐数は4位という結果だった。なんとか俺の幸運値のおかげでポイントの高い金豚との遭遇率が高く、ギルド順位も振るった形だ。
ただ、これでは俺の努力が無駄になってしまう。あと1つ順位を上げないと、ステータス5%アップの恩恵が得られない。
昨日、キキョウから連絡が来たのだが、ゲルマとミルナのレベル上げは無事終わったらしい。それで今日はミルナとキキョウにはバラバラになって討伐数稼ぎを、ゲルマにはみんなに頼まれた武器の製作を依頼してある。ただ、それも夕方になってからの話なので今はまだだ。俺は平原を中心にポップしたモンスターたちを狩り、ひたすらにポイントを稼いでいた。
他のギルドの連中と衝突しそうになることも多々あったが、相手が俺の名前を見て逃走していたので実害はないし、俺もPKをせずに済んでいる。
そして今、他のプレイヤーと対峙しているのだが、少々様子が違う。
「お前がパンドラだな?」
「そうですが、あなたは?」
「私は見ての通り仮面団のメンバーだよ。プレイヤーネームは見えているだろう?」
このゲームの女性プレイヤーはそこまで珍しいわけではないが、この人はゲーム慣れしてそうな感じだな。
「そうですね。それで、トリンさん、私に何の様でしょうか?」
「端的に言わせてもらおう。貴殿を討伐しに来た。」
「理由は?あなた方に何のメリットもないと思いますが。」
「貴殿が暴れているせいで我らのギルドは現在5位だ。貴殿がいなくなれば私たちのギルドは4位、そして今のペースでいけば3位のギルドを越すことだってできる。」
「なるほど。私を足止めして仲間に討伐数を稼がせる作戦ですか。悪くない作戦ですが、私にはそれに乗るメリットがありません。それに私はこのために5日間時間を作ったんです。1日12時間以上のログイン、そしてひたすら討伐。この苦しみはあなたにはわからないでしょう?わかってもらいたいとも思いませんがね。それでは私はこれで失礼します。」
持ち前のAGIで逃走を図る。相手のAGIで追いつけるわけもなくあっさりと姿が見えなくなる。そこから誓うの豚たちを再び討伐する。近くに仮面団のメンバーも多数見受けられたが、そんなものは気にせず横取り討伐も含め、大量に討伐した。正午を迎えた段階で俺たちの順位は第3位に上昇、そして午後からもひたすらに討伐を続けた。これまでは3時間くらいでログアウトして休憩捨時間を30分くらい入れていたが、今日はその休憩の時間も10分で済ませた。そして夕方になり、キキョウからも討伐数稼ぎを始めたと連絡があった。俺は少し疲れていたので、近くのコンビニに行くことにした。
家の近くにあるコンビニなのだが、学校も近いため、少し用心する必要がある。先生や、他の生徒に見られるのはあまり良くない。
「お、人見じゃないか?久しぶりだな。」
最悪だ。まさかこんなところで担任と遭遇するとは。この担任悪い人間じゃないのだが、生徒を大切に思いすぎるあまり、過保護すぎるところがある。
「先生、長く休んでしまってすみません。明日からは行きます。」
「そうか、それは良かった。恭平からも聞いてはいるが、何か用事があるって言っていたが、差し支え泣けれ聞かせてくれないか?」
「特に話すほどのことでもないですよ。」
「ユーオンのイベントに篭りっきりなんだろう?」
!?この担任どこからそんな情報を仕入れてきたんだ!?
「どうしてそのことを知ってるんですか?」
「それについては恭平に聞くといい。それに関して少し驚くこともあると思うけどね。それじゃまた夜に。」
夜に?一体どういうことだ。とりあえずエナドリを買って帰ってきたが、さっきの発言がどうも気になる。一気に飲み干してすぐにログイン、そしてキキョウにチャットで一体どういうことなのかを聞いた。
「キキョウ、コンビニで担任に遭遇したんだが、何で俺がイベントに篭りっきりなこと知ってるんだ?」
「あぁ、それな。俺と先生が仲良いのは知ってるだろ?」
「確かに仲良いよな。お前が芸術系のことが好きだからだろ?」
俺たちの担任は美術の教師だ。美術専門なので、そう言ったものが好きな生徒との距離も近い。
「元々はそうだったんだけど、話してるうちにゲームの話とかもする様になってさ、俺がユーオンに誘ったんだよね。」
「それで?」
「本人から口止めされてたけど、本人がそれらしいことを口にしたってことは言っていいんだよな。先生のプレイヤーネームはゲルマなんだよ。」
「ゲルマ!?ってことはあのゲルマが先生なの!?」
「そういうことだ。もちろん学校側には家庭の事情ということにしてくれているし、家族にも連絡が行かない様手配してくれているよ。お前がどれだけこのイベントに本気なのか知ってるからな。」
まさかあんまり接点のない俺のことをここまで思って行動してくれるなんて。先生には感謝しかないな。それにしても2人とも黙ってるなんて人が悪いな。それにキキョウに関してはネッ友って嘘までついてたわけだし。
まぁ、そんなことはいいか。それなら先生のためにも頑張って3位以内を目指さないとな。幸い、まだ3位をキープしているし、イベントの終了は午後7時。今の時間が午後6時だから残り1時間だ。このまま逃げ切ってやる!




