第38話 ゼウスのローブ
「カイザさんできたぞ。ギルド武器《紅蓮騎士の宝剣》。でもこれって素材をもとに量産されてメンバーに配られるんだろ?そんなに大量に玉髄を持っているのか?1つ作るのに10g入るけど。」
「それは心配に及びません。様々なルートからかき集めましたので。」
「そっか。それじゃこれで依頼は完了だな。」
「はいありがとうございました。こちらが報酬のUniqueProtector:ゼウスのローブです。私共には余る力ですので。」
「ありがとうございます。それではわたしたちはこれからどなたかをギルドホームまで案内しようかと思うのですが、どなたがいかれますか?」
「それに関しては彼に。」
そういいながら盗賊風の装備を身にまとった男を指した。
「ヴェルドという。よろしく頼む。」
「彼はAGIが高いのでそれなりに早くついてこれると思いますよ。」
「そうですか。それじゃゲルマは先に転移で帰ってて。私はここから走ってヴェルドさんを案内するから。」
「わかった。ギルドで待ってるな。」
そういってゲルマはギルドに転移していった。今いるのはサイリアの町だからここからこのNPCに合わせて走って1時間っていうところかな。このゲームはスタミナの概念がないからこういう時に楽なんだよね。
「それではヴェルドさん行きましょうか。ここからだとイロアの町方面になるのでまずはイロアの町に向かいましょうか。ヴェルドさんの速度を見たいので先に行ってもらってもいいですか?私はそれに合わせるので。」
「わかった。パンドラ殿。もし早くてついてこれそうになければ遠慮せずに言ってくれ。」
町の外で道のりについて話し終えた俺たちはイロアへ向かって走り出した。はたから見たら盗賊職がミミックに追いかけられているようにしか見えない。その両方がとてつもない速度なので介入の余地はないだろうが。
それにしてもヴェルドも速いな。AGI1600ってところかな?これならホームまでそれほど時間はかからないかもな。
それから20分ほどでイロアまで到着し、そこからディクティオンの百穴まで向かった。
「《ディクティオンの百穴》まで来たがこの後はどの方向に向かうのだ?」
「正面です。《ディクティオンの百穴》の中に私たちのギルドホームは構えてあるので、ついてきてくださいね。」
「正気か?《ディクティオンの百穴》といえば古代文明の遺跡に地龍ガイアが住み着きかなりの危険地帯だと聞いているぞ。」
「通常のモンスターはそこまで強いものでもないし、その地龍ガイアは私が倒してもういません。私たちのギルドホームはその地龍ガイアが根城にしていた最奥部です。」
「そんな場所をギルドホームにするなんて。さすが発想が違うな。」
「それじゃ行きましょうか。あなたなら大丈夫だと思いますけど、一応警戒はしておいてくださいね。モンスターは出現するので。」
「わかっている。それでは案内を頼む。」
一通り会話を済ませて、俺はヴェルドをホームへ案内した。中にはゲルマだけでなくキキョウも戻ってきていて2人でお茶をしていた。
「ここが私たちギルド《パンドラの箱》のギルドホームです。」
「案内ありがとうございます。それではマスターに報告があるので、俺はこれで。」
そういってあっという間に帰って行ってしまった。
「今の何なんだ?」
事情をある程度効いているであろうキキョウがそう尋ねてきた。
「ゲルマから聞いてるでしょ?《紅蓮騎士団》の代表者にここの案内をしてきたんだよ。」
「それ聞いてるけどよ。まさかあんなにすぐに帰るとはな。」
「私も予想外だよ。それよりも今回の報酬の確認をしよう!私もゲルマもまだ性能を見てないし。」
「それは楽しみだな。結局なんて名前のアイテムだったんだ?」
「ゼウスのローブだね。性能はこれ!」
そういいながら全員に見えるように装備ステータスの画面を見せた。
「「なんだこりゃ⁉」」
俺以外の2人は同じ反応だ。俺もそういいたかったが何とか抑えた。
「これは尖ってるとかそういう次元じゃないね。」
俺たち3人が絶句した装備のステータスがこれだ。
ゼウスのローブ
HP(体力) +0
MP(魔力) +100
STR(筋力) +0
VIT(防御力) +0
INT(魔法攻撃力)+0
RST(抵抗力) +350
AGI(素早さ) +0
DEX(器用さ) +0
LCK(運) +50
スキル:{不壊}
特殊スキル①:[人外][神][UniquePlayer]のいずれかの属性を所持している場合、装備していれば1日に5分間だけすべてのステータスの開放が可能になる。
特殊スキル②:[人外][神][UniquePlayer]のいずれかの属性を所持している場合、装備することで以下の中からいずれかの状態がランダムで1つ付与される。付与された状態は日付をまたぐことで再抽選される。装備を外しても日付が変わるまでリセットされることはない。状態と確率は以下の通りとする。[健康体]29%[霊体]20%[魔鋼体]20%[不死体]15%[再生体]15%[神体]1%
[健康体]は状態異常にならない状態、[霊体]は物理攻撃無効化、[魔鋼体]は魔法攻撃無効化、[不死体]は死なない、[再生体]は1秒に5ずつHPが回復する状態、[神体]はダメージを一切受けなくなるらしい。
俺たちはこれをみて全員が数分間何も言えなくなってしまった。




