第33話 新発見のエリア
「どうだった?デュラハンと戦ったんだろ?」
ホームに戻るや否やキキョウがデュラハンとの戦いについて聞いてきた。
「化け物だったよ。正直、バグがなければ負けてた。」
「バグ?」
「うん。相手のスキルのモーションを終える条件が首を切ることで、私首がないからスキルモーションが終わらなくてバグって硬直したんだよね。」
「そりゃラッキーだったな。運営には報告したか?」
「もちろんしといたよ。収穫もあったし、ゲルマのレベルも結構上がったからよかったかな。」
「レベリング以外にも何かあったのか?」
「うん。正直途中で勝てなさそうだったのもあって、何かないかユニークプレイヤーの仕様について調べてたんだけど、{裏切の制約}をしたプレイヤー限定でFallen Unique commandっていうのが使えるらしくてそれが条件付きではあるんだけど、システム変更要請ができるっていう奴だったんだよね。」
「システム変更!?無法にもほどがあるだろ!」
「もちろんそこまで大きな変更はできないし、基本的に私に関するシステムの変更しかできない。月1でしかできないんだけど今回やったのは私が一度に出して操ることができる腕の本数の増加。生贄にこの世界に存在しているミミックが1000体犠牲になったけど。」
「腕の本数が増えるってのはまた厄介だな。相手よりも手数が増えることになるし。」
「そう。しかも腕の本数の増加ってそこまで多くの生贄が必要じゃなかったらしくてこうなったんだよね。」
そういいながら10本の腕を見せる。少し離れたところから見ていたミルナの小さな悲鳴が聞こえた。
「こりゃすごいな。10本か。それって全部に武器持たせれるのか?」
「もちろん!だからゲルマのレベルを早くカンストさせて新しい武器を作ってもらわないとね。」
「ちなみに今何レベルなんだ?」
それまでぼーっとこっちを見ていたゲルマがはっとして
「えーっと、いま62レベルだな。《紅蓮騎士団》のクリアに必要なレベルっていくつだったっけ?」
「たしか66とかじゃなかったかな。まぁ、70まで上げれば確実じゃない?」
「紅蓮騎士団のクエストってなんだ?」
「キキョウは知らないの?《紅蓮騎士団》っていうのはNPCが発足したギルドの名前なんだけど、そこが発注してる生産職向けのクエストがあるんだよ。」
「内容は?」
「玉髄を使用したギルド武器を作成すること。玉髄の加工に必要なDEXもこの武器を作成するのに必要なDEXも4000だからDEX4000以上のプレイヤーが挑戦することがクリア条件なクエストだね。」
「そりゃまた無茶なクエストだな。報酬は?」
「よくわからないんだよね。ゲルマ、名前覚えてる?」
「たしか、ユニークプロテクターとかいう種類の防具らしきものだな。名前は『ゼウス』の名を冠していたことしか覚えてない。」
「そうだ。ユニークプロテクターだ。」
「そんな種類の防具聞いたことないけどな。ユニークウェポンとは別物と考えていいだろうが、その防具版といったところか。」
「多分ね。まぁ、気になるから、これはとりに行くしかないけど。ゲルマ、今からもうちょっと行ける?」
「俺は大丈夫だけど、パンドラは大丈夫なのか?残りHP1なんだろ。しかもポーション系は効果ないらしいし。」
「時間経過で回復するから大丈夫じゃない?それにちょっと行きたいところあるんだよね。毒無効を付与するポーションって作れる?無理だったらまた私の中に入ってもらうことになるけど。」
「作れはするが、素材を節約するためにも中に入るから大丈夫だ。」
「そう?それじゃ行こうか。キキョウ、あれの調査してくるね。」
「気をつけろよ。俺も中入ってすぐにやられたから何が起こるかわからないぞ。」
「わかってる。それにここは古代文明の名を冠するエリアの一つ。多分地龍ガイアは本来のボスではない。」
「そうだな。おそらく《地底の遺物》と同等のものが出てくる。無理だったらすぐに転移して来いよ。」
「わかってる。」
キキョウが今日ディクティオンの百穴を散策していた際に偶然発見した隠しエリア。《ディクティオンの百穴・最影部》。ディクティオンの百穴内で最も影の深い場所にあるこのエリアはその中に大量のモンスターがポップするらしい。キキョウはそのモンスターの名前を確認すらできずに瞬殺されたらしい。
俺は今からそこに行く。HP残量が少ない状態で以前負けたやつと同等のモンスターに戦いを挑むなんて我ながらイカれているとは思うが、好奇心に勝つことは出来ない。それにそれだけの物量があるのならばゲルマのレベル上げにちょうどいいだろ。




