第301話 {混成神}
翌日、少し時間がかかったものの、俺以外の神化スキル持ち全員の{混成神化}が完成した。そしていま全員に譲渡が完了したところだ。
「それじゃみんな一斉に使う?」
「せっかくだしそうしてみてよ。私だけは{魔神化}があるせいでみんなとちょっと変わりそうだからほかの全員で。」
「俺は昨日もう試したが、見たのはネイとパンドラだけだもんな。」
「俺まで受け取ってよかったのか?」
「じゃないと先生自分の身も守れないでしょ?」
「それを言われると耳が痛いが。まぁ、ありがたく受け取っておこう。」
「そしたらみんな使ってみて!」
「「「「「{混成神化}」」」」」
おぉ!やっぱりみんな元のアバターに引っ張られてるみたいで個性が出るね。
キキョウは昨日見た通り。よく見ると濃い赤色のエフェクトを纏っている。
ネイはもともと細身でスタイルがいいアバターだったからかスレンダーな猫獣人がもとになってるって感じだな。猫のしっぽに耳はなくて小さめの角が生えている。黄色いエフェクトを纏っている。キキョウのもそうだが、これは{精霊神化}によるものだろう。
先生はもともとが学者っぽい細身で明らかに戦闘向きではない見た目をしていたからか、元になっているのは兎の獣人だ。キキョウやネイのような角はなく、華奢な兎の獣人って感じだ。纏っているエフェクトは薄緑色だ。
次にリン。最近は装備や{獣神化}の影響もあってすっかり獣人のアバターのイメージが強かったけれど、元の獣人のアバターにより鋭い牙をはやしている。それは禍々しさよりも美しさを感じさせている。纏っているオーラは茶色だ。
最後にユズハだ。
「よかったじゃん。神化状態でもかわいいアバターになれて」
可憐の一言に尽きる。元がかわいらしく可憐なアバターなのもあるだろうが、獣人としての種族はおそらく龍。龍のしっぽに龍と鬼を合わせたような大きくはない者の禍々しさを感じさせる角。それでありながら華奢な体に纏った美しい着物。ほかのみんなは元となった動物がモフモフ系だから服装も毛皮のようなものだったが、とても桃色を基調とした美しく可憐な着物だ。どこをとっても美しく可憐だ。
「パンドラさんありがと!」
「お礼は良いよ。それにこの力はユズハのおかげでもあるんだし。」
「ほんとよかったわね。昨日あの姿を見たときは正直ちょっと引いちゃったけど。」
「ネイ、そういうの思ってても口にしない方がいいんじゃない?」
「いいんだよ。実際そうだし。私が一番あの姿嫌いだったし。」
「それならいいけど。それじゃ、最後に私がやろうかな。みんなのスキルはもらってるし、もう合成するだけだけどね。」
「さらに1つの神化が加わるとどうなるのか見物だな。それに俺たちの神化はどれも近接メインだ。{邪神化}もよく聞いてみれば飛行と眷属の召喚がメインでそれ以外だとステータスの強化くらいらしいしな。ここに魔法を扱う{魔神化}が加わってどうなるのか。」
「だね。早速やるよ!「{技能合成}対象:{鬼神化}{精霊神化}{邪神化}{獣神化}{魔神化}」
『{技能合成}に成功しました。スキル{鬼神化}{精霊神化}{邪神化}{獣神化}{魔神化}が消失し、スキル{混成神}を獲得しました。』
「どうなったんだ?」
「多分だけど思ってたのと違うかも。」
「いったん使ってみてよ!」
「ユズハの期待に応えれないかもだけど分かったよ。スキル{混成神}」
神化スキルでいない以上姿が変わることはない。だがその能力は本物のようだ。
「何も起きない?」
「まぁ、そう見えるよね。」
「神術スキルになったってこと?」
「正解。ネイの言う通り今の5個の神化を合成したら神術スキルになったみたい。神術スキルは姿を変えるわけでもないからね。でもこれはすごいよ。」
「どんな能力なの?」
ユズハのその問いにリンも賛同しているように2人とも目をキラキラさせている。
「スキル発動によって何か起こることはないね。」
「どういうこと?」
全員が首をかしげている。
「端的に言うとこれは合成専用スキルだね。これを合成することでスキルの強化ができるみたい。それにこのスキルは合成に使って消えることも奪われることもないみたい。」
「なるほどね。それで何も起きなかったと。」
「そういうこと。でもね。面白いことは出来そうだよ。「{技能合成}対象:{技神}{混成神}」
『{技能合成}に成功しました。スキル{技神}が消失し、スキル{技混成神}獲得しました。』
「神術と神術の合成・・・」
「どうなったと思う?」
さすがユーオン。よくつくられている。俺たちはてっきり神術スキルがこのゲームの極致、到達点だと思っていた。だが違った。このスキルこそがこのゲームのスキルにおける到達点なんだ。
「どうなったって、そんなの神術自体が予測不能な能力なんだからわかるわけないでしょ。」
「まぁ、そうだよね。スキル{技混成神}」
姿は元のパンドラの姿。ステータスの開放が行われている。発動に時間制限もない。これはもう何があっても負けないし、負けられないな。
「なんかすごいプレッシャーを感じるんだけど。」
「多分ステータスの開放がされたからじゃない?このスキルを使ってる間永続的にステータスの開放がされるみたい。」
「それって大丈夫なのか!?ゲームバランスの崩壊なんじゃ…それにスキル名のパンドラって・・・」
「何となく予想はついてるけどネイはどう思う?」
「ユニークプレイヤーが神術スキルを2つ合成させたから特殊なことが起こったのかなって思うな。」
「私の予想だと不正解だね。」
「それは確信を持ってるって言ってるようなものだけど。」
「なんとなくそんな気がするってくらいだよ。みんなが持つ神化、そして先生が持つ神術。そのさらに上位に位置するスキルがある。」
「いまパンドラさんがとったそのスキルが・・・」
「そう。ユズハが言ってくれた通り、このスキルは神術の更に上位に存在している。神化は神をその身に宿しその力を行使するスキル。神術は自身の肉体で神の御業を扱い神に近しい存在になるスキル。でもこれを得て神になるわけじゃない。実際に先生にゼウスのローブは反応しなかった。」
「確かにそうだな。」
「そして最後プレイヤー自身が新たな神となった証としてのスキル。そのスキルを行使すればこの世界においていかなる種族であっても神という種族を得る。実際今の私のステータスには神の表示がある。」
「神になったって。確かにユニークプレイヤーのステータス上限解放なんてゲルマの神術スキルを使っても達成できなかったことだけど・・・」
「それだけじゃないよ。{技能合成}の性能が向上して豪勢に使用したスキルが自動で消失しないようになったし、不要になったスキルを消失させたり、過去に消失させたスキルを呼び戻したりもできる。神の御業である以上神術スキルへの干渉は相変わらずできないけどそれ以外のあらゆるスキルへの干渉ができるね。プレイヤーのスキルに干渉する場合、1時間の制限は相変わらずついてるけどスキル効果を無効化するくらいは神化以下のどんなスキルにでもできるみたいだね。」
「それって実質ゲーム管理者に近い権限を手にしたといってもいいんじゃ…」
「そうだね。この力があればやれるかも」
「何を?」
「《戦争》だよ」




