第300話 {混成神化}
「みくねぇ、お疲れー。あれ?結構みんないる感じ?」
「ちょっと待って。「みく」ってリンのお兄さんの名前じゃなかったっけ?」
「あ、ヤバッ」
「いいよ。ユズハにはどうせバレるからちょうど話すつもりだったし。」
「なるほどね。パンドラさんのアバターが女の子だったから?」
「そ。あれも自分で作ったアバターじゃないけどね。」
「話しちゃうならよかったね。ちょっと寿命縮んだよ。それで、何で呼んだの?」
「遅い時間にごめんね。ちょっと遊ぼうと思ってさ。」
さっきいなかったリンに事の経緯を大まかに話した。
「事情は分かったけどなんでわざわざこっち?」
「ディクティオンならほかのプレイヤーの近づかないし、他のメンバーがいない方がいいかもしれなかったからね。」
「それは分かったけど、ユズハは何で?だって・・・」
リンがメンバーの顔を見るのも無理はない。ユズハ以外はリンも知っている神化持ちメンバーだ。
「それはユズハも神化を持ってるからかな」
「まぁ、スキルを見破れるならバレちゃうよね。」
「何で隠してたの?神化持ちってステータスにしかならないと思うけど。」
ネイの言うとおりだ。神化持ちというのは通常、ステータスでしかない。ほかのギルドに自分を売り込むならなおのことだ。
「ちょっと気持ち悪がられそうなんだよね。」
「それなら大丈夫だって。キキョウ。」
「俺の神化が醜いってか?」
「そうはいってないよ。でも人によってはちょっと怖いじゃん?」
「わからんくはないが。スキル{鬼神化}」
「全然かっこいい部類でしょ。スキル{邪神化}」
ユズハがスキルを発動させると姿が変わっていく。その姿はまるで巨大な蠅だ。
「なるほどね。さしずめ暴食の悪魔でもあるベルゼブブがモチーフってところかな?」
「これはスキルが嫌いになりそうね。」
「同感だ。」
「結構好きだけどなー。神化の中でも現状ほかにない種族ごと変えちゃうなんていいじゃん。」
「パンドラさん以外そういう反応しそうだから嫌だったの!」
「ごめんって。でも、今からの『遊び』でマシになるかもよ?」
「本当?」
「ほんとだって。それじゃ早速やろうかな。」
{技能簒奪}は実質的に実装したてのものだからかはたまた神術スキルの内包スキルだからかとんでもなく強い。強制的に入るクールタイムだが、発動対象を検知するらしく、別の対象に発動する分には問題なく発動できる。
「で、誰一人として何も聞かされてないわけだけど、何をするの?」
「今日はいったんちょっとやったら解散だよ。私の新スキルの実験だね。キキョウとネイには1時間くらい付き合ってもらうけど、他のみんなはすぐ解散できるよ。特にユズハ、相当頑張ってもらったし、もう眠いんじゃない?」
「正直言うとね。でもまだ大丈夫だよ。」
「それじゃユズハに休んでもらうためにもさっさとやっちゃうね。{技能簒奪}対象:キキョウ{鬼神化}ネイ{精霊神化}ユズハ{邪神化}みくリン{獣神化}ゲルマ{鍛冶神}」
『簒奪成功。キキョウ・ネイ・ユズハ・みくリンよりスキル{鬼神化}{精霊神化}{邪神化}{獣神化}を簒奪しました。簒奪失敗{鍛冶神}の簒奪に失敗しました。』
「あちゃ。やっぱり神術は無理みたいだね。」
「さすがにだろ。俺の{鍛冶神}の習得条件だっておかしいんだ。行き過ぎた性能のスキルを量産可能になったらバランスが崩壊するだろ。」
「先生の言うとおりだけど、試したくなってね。それじゃ今日のところはキキョウとネイ以外は解散!明日また集まって!」
「はーい。おやすみー。」
「私も落ちるねー。おやすみー。」
「リンもユズハもおやすみー。」
「俺は防具の作成がまだ終わってないから仕上げてから落ちる。」
「はーい。いつもありがとねー。」
「俺の役割だからな。それじゃまた明日。」
「それで、何で残されたんだ?」
「どうせ2人ともこの後しばらく暇でしょ?」
「まぁ、そうだけど?」
「だからさっきの続きに付き合ってもらおうかなって。」
「続き?」
「何のためにみんなの神化を奪ったと思う?」
「さぁ?」
「神化の再習得が出来るかの確認のためでしょ?」
「さすがネイ。正解だよ。そして再習得が可能なら・・・」
「混ぜたらどうなるか見たいってか?」
「そういうこと。キキョウもわかるようになってきたじゃん。」
「ここまでヒントをもらったらな。」
「予想だと3つのパターンがあって1つ目が見た目に反映されるかはわからないけど合成元のスキルの影響が大きいパターン。そして2つ目は一定以上の神化の合成で特定のスキルに変わるようになっているパターン。で最後がそもそも合成できないパターン。」
「パンドラの予想は?」
「もちろん1つ目。」
「でしょうね。その方が夢が広がるものね。」
「だって合成上限ないんだもん。1つのスキルに100個のスキルを内包させることだってできるかもしれないよ?」
「それは夢があるな。」
「確かにね。」
{技能合成}に上限はない。ただここにきて1つだけ問題がある。
「その割には何か浮かない顔をしてる気がするんだけど?」
「ちょっと気がかりがあってね。{魔神化}をどうするか考えてたんだよ。」
「確かにな。合成元のスキルが消えるみたいだし、譲渡しても消えるんだろ?」
「うん。」
「それならパンドラの合成スキルに使うべきでしょ。」
「いいの?」
「もちろん。そもそもあんたのスキルなわけだし、そのおかげで私たち強くなれるかもしれないんだし、{魔神化}までよこせなんて無茶は言わないよ。」
「ありがとね。5つの神化の合成。響きだけでも夢があるね。」
そんな感じでいろいろと話していたらあっという間に1時間が経過していた。
『スキル{鬼神化}を獲得しました。』
『スキル{精霊神化}を獲得しました。』
「無事戻ってきたみたいだね。そしたらさっそく合成を始めるね!」
「楽しそうで何よりね。」
「やってることえぐいのに無邪気に見えるから運営からしたら溜まったもんじゃないだろうな。」
「{技能合成}対象:{鬼神化}{精霊神化}{邪神化}{獣神化}」
『{技能合成}に成功しました。スキル{鬼神化}{精霊神化}{邪神化}{獣神化}が消失し、スキル {混成神化}(鬼・精霊・邪・獣)を獲得しました。』
「うまくいったみたいね。」
「うん。うまくいったよ。答えは全部が内包されているだったね。ただ、神化は神化としか合わせれなそう。それじゃ強化版だから元のが消えても問題ないだろうけど、念のために先にもらっちゃうね。{技能簒奪}対象:キキョウ{鬼神化}」
「おう!」
「それじゃ{技能譲渡}対象スキル{混成神化}譲渡対象:キキョウ」
『スキル{混成神化}をキキョウに譲渡しました。』
「来たな。」
「使ってみて。見た目も性能も知りたいし。」
「わかった。スキル{混成神化}」
キキョウの体が変わっていく。人型ではありそうだし、ユズハにはうれしい報告が出来そうだね。
「なんだこれ!?」
「なるほどね。{精霊神化}の属性変化とエフェクトに加えて{邪神化}の翼による飛行と眷属召喚能力、{獣神化}による基礎身体能力の向上と魔力の上昇、{鬼神化}によるデメリットを持つことによるステータスの大幅上昇のステータス上昇だけを受け取ったスキルって感じかな?」
「だいたいそうだな。」
「で、見た目もよくなったじゃん。ケモミミにしっぽ、角と羽もあるし精霊のエフェクトで幻想的にもなって!それにスタイル良いね。」
筋肉質な肉体に犬の耳、太めのしっぽそこに角が生え中々にかっこいい。羽も蠅が元になっているはずなのにもかかわらず蠅の要素はなくかっこいい感じの羽だ。
「これはプレイヤーによって結構変わりそうね。」
「だね。男女でどれだけ変わるかな。」
「明日、結構速い時間に集まるんでしょ?神化組全員に渡せるくらいは作れるんじゃない?」
「だね。明日が楽しみだよ!」




