第296話 ゼウスのローブと{幻惑の宝箱}
「パンドラさん、その姿は・・・?」
「説明は後回し。さっさとこいつを倒すから待っててね。」
一気に最高速へと加速する。もちろんこんなに高速の移動は久々だがこれでも真蛇の最高速度には遠く及ばない。むしろ通常時の真蛇より少し早いくらいだろうか?
だが、今の俺は不死の肉体を持っている。ステータスの解放がされていなくてもゼウスのローブさえ身につけていれば死ぬことはない。だが、ユズハの護衛をさせている分体の魔力がもう尽きている頃だろう。今はユズハが魔力を分けることでかろうじて持ち堪えてるみたいだな。だが、ユズハの魔力ではゼウスのローブのステータス解放が切れるより早く防御結界が崩壊してしまうだろう。
ならば俺は全身全霊を以て最速で真蛇を撃ち倒すのみ。種族パンドラとしての最高の一撃をこいつに叩き込む。この攻撃は隙が大きいものの、不死体となっている俺ならば躊躇する必要はない。
真蛇のヘイトは相変わらずこっちに向かっている。おそらく分体の防御結界の強力さを理解しているんだ。あの結界が崩壊すればユズハへとヘイトが向かうことだろう。フレーム分割攻撃までおそらくあと10秒ほど。その前に蹴りをつけるつもりで行ってやる!
真蛇が体全体をうねらせながら突撃してくる。今のところ魔法を使ってくる様子はないが、魔法が使えないのか?それとも魔法が意味をなさないことを理解するほどに強力なAIが組み込まれているのか?
どちらにしても時間をかけることはできない!まだ引きつける。集中するんだ。
ゼウスのローブ、それはユニークや神の力を得たプレイヤーがその力を封印された場合にそれを一時的に解放する装備だ。ゼウスが創り出し、神に近しい力をもつものに授けたと言われている。そしてその力を7回行使すると不思議なことが起こるという。
その種族特有かつ本来の力を最大限引き出すことができるスキルを獲得することができる。ただし、その種族としてしか使用できず、ローブの効果が切れてしまうと種族が降格してしまい、使用できない。ただでさえ効果を発動させる条件が厳しく、ゼウスのローブ自体の入手方も限られ、世界に1つしかない。
そんな装備で得られるスキル。
「スキル{幻惑の宝箱}」
幻惑という名が示す通り、相手に宝箱がそこにあるかのような幻を見せる。もちろんこれはモンスター相手にはほとんど意味をなさない。しかし、それがこのスキルの真髄というわけでもない。このスキルの真髄は『宝箱』という部分に隠されている。俺はパンドラ、元を辿ればミミックだ。ミミックとはユニークプレイヤーの中でも唯一生物ではない種族。もちろん死という概念はあるし、HPも用意されているが、生物の分類に置かれていない。つまりどれだけ体に無茶をさせようともその体にガタが来ることはない。
『宝箱』であるパンドラは幻を見た相手に毎秒100連撃の装備した武器による攻撃を3秒間浴びせ続ける!
ゴトッ
鈍い音が響く。このスキルを使用すると強制的にステータス解放状態が解除されてしまう。ゼウスのローブの装備は解除されないから不死であることに変わりはないが。だが、流石にこれで死んでくれただろう。
「パンドラさん!まだ!!」
まだ生きてんのか?10秒間はスタン状態で動けねぇぞ。状況の把握だけでもしないと。真蛇は・・・
その顔をひどく歪ませ、怒りからか全身から蒸気が立ち上っている。俺が確実に細切れにしたはずの肉体もすでに再生されている。凄まじい再生能力だ。これが真蛇の力ってわけか。超高速移動にフレーム分割による奇襲攻撃、さらには致命傷を一瞬で再生するほどの再生能力を備えている。
まだ何か足りないってのかよ!この蛇野郎が!




