第292話 異形の面
翌日、そろそろログアウトから20時間半が経過する。確実に遭遇するためにも昨日のログアウトから21時間後である20時にログインするようユズハに連絡を入れておく。
さて、俺は例の能面に関して勉強しておくか。ユズハが見せてくれた画像は昨日調べたところ『泥眼』と呼ばれる面らしい。その特定までして昨日は寝てしまったから、そこから再開しよう。
『泥眼』というのは白目と歯の先が金色で塗られていて、金色は人間を超越した存在を示すため人間から変異している途中の女性の姿を表すらしい。そしてその先の段階の面も存在しているらしい。
嫉妬と復讐心に顔を歪める『橋姫』、生きながら鬼と化した女性『生成』、嫉妬や恨みが激しく鬼とかし、怨霊と化し上半分は悲しみ、下半分は怒りを表した『般若』、怨念が極限に達し、蛇に変化した『真蛇』の五段階だそうだ。そうなると例のモンスターは携帯変化をする可能性があると見ておいた方がいいな。おおよその情報はこのくらいだろうが、最悪のことを考えてそれぞれの状態の予測くらいはしておくか。
『泥眼』はユズハの情報によると魔法を使用してくるとのことだからおそらくは人間から変異する過程で膨大な魔力を得、高威力の魔法を使用できる状態。
『橋姫』もまだかろうじて人間であるため『泥眼』の攻撃が苛烈になったようなものだろう。
『生成』は鬼と化しているため身体能力が向上している可能性が高い。だが、生きながらにして鬼となっているため魔法も使用できるだろう。
『般若』と『真蛇』に関しては予想がつかない。だが、少なくとも『真蛇』は姿が人型を留めなくなるだろう。
おっと、そろそろ時間だ。
「うまくいったのかな?」
「うん。ほら、来るよ!」
正面に唐突に現れた泥眼の面に美しい着物を着たモンスター。初撃の魔法を処理しないとモンスター名すら表示されないみたいだな。
「スキル{格闘領域}」
これでこいつは魔法が使えなくなるはずだ。
『エンシェントモンスター『怨霊【異形の面:泥眼】と遭遇しました』
遭遇テキストの表示!ドルドワロウの時はクエストとして受注したから表示されなかったが、今回はギミックを解くことで挑戦できるモンスター。初撃を防いだことでその正体があらわになった。
だろうとは思っていたが本当にエンシェントモンスターだなんて。
「パンドラさん、エンシェントモンスターって?前倒してたよね。」
「なんていうかユニーク、エクストラの枠を外れた超強力なモンスターだね。エクストラモンスターの方が特定のギミック攻略を要求されるからめんどくさいけど単純な戦闘能力とか耐久で見たらエクストラモンスターよりこっちの方が厄介だよ。」
今のところ異形の面が何かをしてくる様子はない。{格闘領域}で今は何もできないのだろう。
「多分形態変化するから気をつけてね。一回倒すよ!」
「おっけー!」
こちらは武器が使えるから全力で切り刻む。着物もズタズタに裂け、面は割れ、体が崩壊し始める。
「倒したの?」
「油断しないで。」
だが、体は崩壊し、ログでは撃破判定になっている。これで終わりなはずはない。ドルドワロウと同格がこれほど弱いはずがない。
それにこの空間から脱出もできていない。まだ終わりではないことの何よりの証明だ。
少しして奥の方で魔法陣が起動した。
「気をつけて!」
最悪だ。{格闘領域}は形態変化したとしても空間に作用する以上、かなり有効だと思っていた。だが、新たなモンスターとして扱われるとなると話が変わる。
『エンシェントモンスター『怨霊【異形の面:橋姫】と遭遇しました』




