第286話 『神の集い』
イベントが終わり、表彰式があったものの、無事優勝することができた俺たちはとる場所に来ていた。
「やっぱり来ましたね。どうぞ。ギルドマスターがお待ちです。」
街中にあるそこまで大きくない家だ。もちろん現実で見れば豪邸なのだが、このゲームにおいてはこじんまりしている方だ。この家はギルド『神の集い』のギルドホームだ。
「いらっしゃい、ロキさん、それにネイさんまで来てくださるなんて。」
「一応護衛をつけておこうと思いましてね。用件は分かっているのでしょう?」
「まぁ、そうですね。その件について話すのに1つ条件を付けてもいいかしら?」
「内容次第かな。」
「今後『神の集い』と『パンドラの箱』で友好関係を築く、その第一歩として敬語は無しにしない?」
「まぁ、それくらいなら。」
何を企んでいるんだ。たしかにギルド単位で友好関係を築くことで各ギルドが保有している施設など自由に使うことができる。ただ、うちのギルド単位で所有しているのは武器屋だけだ。ここは話を聞くしかなさそうだな。
「それで、念のためあなたたちがここに来た理由を聞いてもいい?」
「そうだね。その話をするには邪魔者が多いんじゃない?」
「それもそうね。みんな部屋から出て行ってもらえる?」
ジャスミンの指示で室内にいた数人が全員退出した。
「これで誰も話を聞けないね。それじゃ単刀直入に聞かせてもらうよ。どこまで知ってるの?」
「そうね。あなたのスキル、ステータスとかは全部知ってるかな。もちろん{魔神化}とその前の姿についても。」
「やっぱりね。それを口外しないでもらうにはどうすればいい?」
「もちろん口外しようなんて思ってはいないわ。でもそうね。さっきも言った通りうちのギルドと友好関係を築いてほしいの。ギルド同盟って形で。」
「なぜ?あなたたちにメリットがあるとは思えないんだけど・・・」
「そうね。まず、あなたたちの武器屋、パンドラの秘宝に関することが1つ、そして単純に小規模ギルド同士仲良くしたいっていうのがもう1つかな。」
「あなたに情報を盗まれ放題だというのにそれを信用しろと?」
「まぁ、そういう反応になるよね。だからこっちからも最大の誠意を見せようかな。これをどうぞ。」
「これは?」
「うちのギルドメンバーの名前、スキル、レベルとかステータスまで今の状態ではあるけど、まとめたものだよ。各スキルの詳細まで書いてあるから、またあとで読んでみて。」
パッと目を通した感じうそをついているようには見えない。だが、大きな問題、疑問がある。
「『神の集い』っていうくらいだから神化を持っているプレイヤーがいるとは思ってたけど、まさかこんなにもいるなんてね。」
「びっくりした?うちは神化を持ってないプレイヤーが加入したとしても全員に神化をとらせてるからね。」
「確かに{智恵神化}の所持者が大半だね。あなたのスキルの権能かな?」
「まだそこまで読み進めてないだろうに。さすが最強のギルドのマスターといったところかな。まぁ、そうだね。私のスキル{智慧神}はこれまであなたが見たもののほかに自分のパーティー、ギルド、ギルド同盟にあるプレイヤーに{智恵神化}のスキルを授けることができるんだよ。{智恵神化}の効果はステータス強化程度なんだけど、それでも他のスキルに比べるとは格の性能だからね。」
「なるほどね。それで『神の集い』それに最近まで名前が挙がってこなかったわけだ。」
「その通りだよ。それじゃ改めて、ギルド『神の集い』はギルド『パンドラの箱』とのギルド同盟を希望する。『神の集い』は施設を保有しないものの、そちらのメンバー全員に神化スキルを授けることができる。いい条件だと思うので、ぜひ前向きに考えてもらいたい。」
「もちろん受けさせてもらいたい。ただ、その前に1つ質問を。あなたが{智恵神}のスキルを獲得したのはいつ頃?それとそのスキルは神化ではないですよね?」
「え?獲得したのは神化スキルが解放された翌日だったかな?神化ではないっていうのは?」
「わからないなら気にしなくていいよ。神化って名前についてなかったから気になっただけだから。」
ドルドワロウの一件は神化スキルが公表される前の出来事だ。ジャスミンが獲得してメンバーに与えたのが先かを知りたかったのだが・・・
それに{智慧神}は神化でも神術でもない分野なのかを知りたかったが、今は分からなさそうだな。
「『パンドラの箱』ギルドマスターパンドラとしてギルド同盟の申し出受けさせていただきます。」
「ホントに?やったー!」
仲良くしたいっていうのも本当みたいだし、あまり無碍に扱うのはやめた方がいいな。俺も不穏な感じは感じてないし、ネイも裏はないと読んでいるみたいだし。
「神化の件については後々考えるとして、とりあえずうちのホームの場所を案内しておくよ。1つはディクティオンの百穴最奥部で、もう一か所が・・・」
「ちょっと待って。小規模なのに2か所持ってるの?」
「まぁ、ディクティオンも秘密基地っぽくていいなーとは思ってたけど、日が入らなかったからね。もう1か所はバルエルクと手前の町のルネサザスの間の神秘の森の中だね。場所がわかりづらいからディクティオンにあるポータルからくるのをお勧めしとくよ。」
「ディクティオンのボスは?」
「あれもういないよ。あれがいた場所にうちのホームあるから。ホームに入る権限にあなたたちも追加しとくから勝手に入っていいよ。まぁ、ディクティオンの方にはもう何も残してないけどね。」
「転移ポータルまで用意してるし、本当に『パンドラの箱』って規格外なのね。ますます楽しみになってきちゃった。」




