第255話 魂
「発動はした。」
「でも変化がないってことはあいつは死んでも動き続けてるってことだな。」
「どうする?パンドラに作戦の練り直しをさせるか?」
「そのほうがいいかもな。ちょっと待てよ。死んでるってことは爆破でもすれば体が壊れて終わりなんじゃないか?」
「そんな簡単ならいいが。」
「みくねぇ、さっきよりも攻撃が通りやすくなってるよ!」
「なんでだろ?ネイ、何かやった?」
「いや、でも向こうの2人が何か話してるしおおかた{虐殺者}でも使ったんじゃない?」
「もしかしてこいつもう死んでる?」
「かもね。死んでもなお動くってことは本体を完全に破壊しないと終わらないってことになるね。」
でも本体が死んでるなら戦いやすくはなるはずだ。
「ネイ、一旦離脱してキキョウ達に確認してきて。思い込みで行動するのは良くないから。」
「わかったわ。」
ネイは武器をしまうとあっという間にキキョウ達のところまで行ってすぐに帰ってきた。
「やっぱり{虐殺者}を使ってたみたい。それも発動したって言ってたからやっぱりこれを壊さないと行けなさそうね。」
「ありがと。それがわかっただけでも十分だよ。」
それなら{魔神化}を解除してもコアの結界が復活することはないだろうし、もっと戦いやすくなる。
「ネイ!ヘイト管理お願い!今度は私とリンで殴るから。」
「オッケー。それじゃこれ使って!」
そう言って投げられたのはさっきまでネイが使っていたハンマーだ。攻撃力に補正がかかっているようだ。
「それじゃリン!いくよ!」
俺の声に合わせてリンが動き出す。俺は早速10本腕を展開。そのうちの2本を使ってハンマーを握る。ハンマーは両手の装備スロットが必要な武器だが、俺の場合両手を使っても8本は余る。残りは素手だ。
「{重撃}!」
リンのスキルか。本来は戦士のような職業のプレイヤーに使い手の多いスキルだがその効果で武器の重さが重ければ重いほどダメージ倍率が上がる。あのハンマーなら元のダメージの3倍は入るだろう。
「リンはコアを!私は他を攻撃するから。」
そう言いつつ早速攻撃をいなしつつ腕や足を中心に攻撃を加える。ダメージが入っているような感覚はない。やっぱり死んでいるようだな。なんで死んでも動き続けるんだよ。魂がないってのに。
ちょっと待てよ。魂がなくても動き続けるってことはプログラム的なものが施されているのか?もしそうならそれがあるであろう場所は・・・
ギィィィィィン
ガシャァァァァン
金属がぶつかる鈍い音ののちに宝石が砕けたような音が聞こえた。俺の見立てが正しければ・・・
「止まった・・・?」
「勝ったの?」
「うん!私たちの勝ちだ!」
「リンが攻撃した瞬間から勝利を確信したような感じでリンの方だけをみてたみたいだが何でだ?」
「キキョウがそう思うのは当然だけど、ちょっと気になったんだよ。{虐殺者}の効果で魂が消滅してるはずなのに動くわけないじゃん?」
「まぁ、そうだな。」
「でも現実には魂がなくても動くものがある。」
「コンピューター。つまりはドルドワロウの本体はプログラミング的な自立機能が搭載された人工物ってことになるわね。」
「そ。そしてそれがある場所ってどうみてもあの心臓部じゃん?」
「まぁ、そうだろうな。」
「そゆことだね。」
「よくあの戦いの中で気づけるよ。正直俺はなんとかできてたけど、戦いながら話してるだけでも十分化け物だからな。」
「確かに。私なんて避けてる間喋る余裕なかったもん」
「こいつらが異常なだけだからリンは気にする必要ないよ。」
「スキル的にはそういう先生が一番異常だけどね。」
「否定できんな。」
確実に撃破できていることを確認し、先生とリンには先に帰ってもらった。そして俺、キキョウ、ネイの3人は依頼の達成を報告しにサイリアの街へと向かった。




