第238話 《天災》ドルドワロウ
決戦の準備を整えた俺たちの前には超巨大なスライムのような物体がいた。
時は少し遡り15分前。俺とキキョウそしてネイはそれぞれが準備を整えサイリアに出発した。
「天災ドルドワロウについて少し調べたんだけど、図書館の書物にその記載があったのよね。」
「マジ?」
「マジ。図書館の書物の内容をそのまま読むわね。ドルドワロウはかつてこのユートピアオンラインの世界の人々の負の感情が積もりに積もった結果生まれた厄災。その姿を見たものが誰一人として生きて帰らなかったことでその力や姿の一切は文献に残っていない。人々はそれをドルドワロウと命名し、ドルドワロウの特異な魔力からドルドワロウを探知する魔法を作り出し、その所在を知ることで厄災から逃れてきた。そしてドルドワロウが発生してから150年後、神の力を持った子が生まれ、人々はついに神がドルドワロウを倒すために使わしてくださったのだと大喜びした。そしてその子は勇者と呼ばれ最終的にはドルドワロウを封印することに成功した。しかし、その封印は勇者の命を引き換えにしたものであり勇者の亡骸はドルドワロウに取り込まれ共に封印されてしまった。
だそうよ」
「なるほど。なかなかに作り込まれてるな。」
「だね。その姿を見たものがいないっていうのがきついね。少しでも能力とかわかればよかったんだけど。」
「まぁ、はっきり言えるのはとても人間が敵う相手ではないってこと。多分規格外だし、本来だったら数百人の上位プレイヤーが集まってやるレベルのクエストだろうね。」
「私たちにこのクエストが回ってきたってことは運営からの挑戦状。おそらく街に近づくと他のプレイヤーを巻き込んだ大きなクエストになるだろうね。」
「運営は何を試したくて俺たちにこのクエストを回してきたんだ?」
「エクストラモンスター討伐者の実力を測る?でもそれは戦闘記録が残ってるだろうし、それを見ればわかるよね?」
「もしかしたら神化が関わってるのかもね。」
「ネイもそう思う?」
「だってそれ以外考えられなくない?戦闘記録が残ってないなんてことあり得ないだろうし。」
「それはそうなんだよね。とりあえずいってみないことには話にならないよね。ドルドワロウのいる場所まで転移できるんでしょ?」
「あぁ。そういうアイテムを預けられたからな。」
「それじゃ早速行く?」
「行くか。《ドルドワロウの文字盤》起動」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「何あれ?」
「スライムじゃないよね?」
「ぱっと見はドス黒いスライムだな。おかしいところがあるとすれば色と大きさだな。」
「これデカすぎない?サイリアの街の半分くらいはあるんじゃない?」
ネイの言う通りだ。サイリアの街はそれなりに大きい。もちろんリアルの町と比べると小さいが、それでも大型ショッピングモールの倍くらいの大きさはある。つまりこいつの大きさは大型ショッピングモールくらいだ。
「これ的がでかいから攻撃は当たりそうだけど、効果なさそうじゃね?」
「一旦あれ使ってみて。」
「わかった。スキル{虐殺者}!」
・・・
「ダメみたいだね。つまり魂を持った生物じゃないって感じかな?」
「多分そうじゃない?それか大量の魂の集合体とか?」
「多分ネイが正解だな。一応スキルのヒット判定はあった。と言うか俺の《パンドラの箱》の今日の分の効果が切れてるのが何よりの証拠だ。{虐殺者}は不発なら発動しなかったことになるはずだろ?」
「確かにそうだね。そうなると相当厄介そうだね。{虐殺者}でどこか欠けたわけでもないし、ほんと膨大な量の魂の集合体って感じっぽいね。」
「どうするの?」
「まずは物理が効くか試してみようかな。」
「じゃ、私とキキョウは後ろで待ってるから。」
「うん。それじゃいってくる!」




