第232話 {魔神化}とロキ
徐々に体が崩壊していく。{虐殺者}は魂に干渉するスキルである以上喰らったら即死だ。それでもなお肉体が消え去らないのは謎だが、これで俺の勝ち、いや、俺たちの勝ちだ!
《パンドラの箱》の効果は登録したプレイヤーのスキルを使用することができるというものだ。そして登録時には所有者自身を登録することはできない。ただ、それを他人に譲渡するならば登録者本人が回数制限のあるスキルを追加で一度使えるということになる。ネイが気づいてくれて本当に良かった。そうじゃなきゃ俺負けてただろうし。
『スキル{魔神化}を獲得しました。』
やっぱり神化スキルか。神術スキルはプレイヤー自身が特殊な条件を達成しないと獲得できないんだろうな。神化がいくつか見つかってるし、やっぱり次のアップデートは神化スキルに関するものっぽいな。ただ、これは俺にとってかなりのアドバンテージとなる。これまで街を歩けば白い目で見られていたのがやっと解消されるんだから。
キキョウの{鬼神化}もネイの{精霊神化}も時間制限はなかった。つまりこの魔神化にも制限がないはずだ。まぁ、魔神っていうくらいだから信用はしてないけど、ないよりはマシであって欲しいな。とりあえず帰ろうかな。転移もできるようになってるし。
「おかえり。間に合ってよかったよ。」
「うん。ありがとね。それにしてもよく気づいたね。気づいてくれるか不安だったよ。」
ネイに指輪を返す。
「不安だったってことはあんたは気づいてたってことね。私だけ置いてかれた感じで嫌だなー。」
「?」
「ネイは気づいてなくて俺が改めて《パンドラの箱》の効果を確認して気が付いたんだ。登録者本人でないと使用できなかったりするわけでもないし、登録する以上変更はできないはずだしな。」
「先生だったんだ。どうりでネイが蘇生アイテムつけてたんだね。」
「それで、あんたは何を手に入れてきたの?」
「それじゃ早速使ってみよっかな。まだ使ってないからどうなるかわからないけど・・・{魔神化}」
数秒後俺の視点はいつもと違ってネイと同じくらいの高さだ。やっぱり人型にはなれるのか。
「えらく可愛い魔神だことね。キキョウが見たら文句言いそう。私でも文句言いたいんだけど。」
ネイが口を言い、先生が姿見を出してくれた。
「へー。魔神っていうからもっとイカついの想像してたんだけど、これは最高だね。」
見た目はかなりの美形。元のパンドラのアバターとも顔が違う。キキョウたちは顔のパーツとかはそのままだったのに、何か違いがあるのだろうか?体型はスレンダー。男女どっちにしても線が細い。ぱっと見人間にしか見えないが、悪魔っぽいツノと尻尾がそれを否定する。ただ、ツノは帽子で隠せるし、そもそも両方とも前回のアップデートでアクセサリー的な感じで追加されている。ツノの形をしたカチューシャと尻尾が付属しているズボン系のアイテムと。両方ともいろんな種族のものが追加されてるし、この状態で街を歩いても問題ないだろう。意識を向けないとプレイヤーネームは表示されないし、人の多い街でわざわざ一人のプレイヤーに意識を向けることもないだろ。
「しかもあんたプレイヤーネーム見てみ。」
「え?ロキ?もしかしてスキル効果で名前まで変わってる?」
「そうみたいね。多分ユニークプレイヤーが取ったっていうのが原因なんでしょうけど。」
「これなら街にこの姿で行けるね。」
「そうね。ツノも尻尾も今じゃ結構つけてる人いるし。」
「うん。ネイも先生も手伝ってくれてありがとね。」




