第230話 {毒侵食}
硬い装甲に圧倒的な回復力を備えている以上一撃で装甲を貫通して倒し切る必要がある。そして俺のスキルにはそれができるものが1つしかなかった。それが{虐殺者}だ。1ヶ月に1回という制限の中で切り札として使っていたが、今このスキルは使用できない。
この戦いに備えていたわけではないが、最近いくつかのスキルを街で購入した。{自動反撃}、{霞流連斬}もその1つだ。そしてその中に1つ、この状況を打開できるかもしれないスキルがある。
「スキル{毒侵食}」
これまで俺が使用できた毒系統のスキルは{毒霧}だけだ。ミミックというのはトラップとして仕掛けられることが多い以上状態異常やデバフ効果を何かしら持っていることが多い。そして大抵はどれか1つに特化している。そして俺のそれは毒というわけだ。{毒霧}の異常な効果範囲や威力についてこれまではステータス的なものだと思っていた。だが、正確にはステータスと俺の適性が噛み合ったことによって生み出された相乗効果によるものだ。
そして今回のスキル{毒侵食}は町のスキルスクロールを取り扱う店で購入したわけではない。町外れの路地にいた怪しげな老人がスキルスクロールとしては格安で譲ってくれたものだ。その老人のNPC曰く俺が持つべきものだからとか。
そしてその効果というのが{毒霧}のほぼ逆と言ってもいい効果だ。相手の体内に毒液を大量に発生させる。発生場所は任意で選ぶことができ、人間のプレイヤー相手であれば肺に流し込むことで溺れるプレイヤーに対して安全装置によって強制的に死亡扱いにされる。そして今回指定したのは体内腹部、それも内臓などがない位置だ。つまり毒によって内臓が溶け、皮膚も溶け出すはずだ。見た目的にゾンビだからこれで死ぬことはないかもしれないけど、外部からの衝撃には弱くなるはずだ。
今の所やつはなんのリアクションも見せない。それどころか普通に攻撃してきやがる。一応回避を続けてはいるが、もし{毒侵食}が効果を示さなければ俺の精神的な体力が削られて敗北してしまうだろう。
「スキル{毒侵食}」
クールタイム終了につきもう一度発動。今度は喉だ!あいつはギリギリ溶けていない喉でかろうじて声を出している。その喉を破壊して仕舞えばスキル詠唱ができないはずだ。このゲーム、ユートピアオンラインはスキルの発動にはスキル詠唱が必須だ。それがプレイヤーであろうとモンスターであろうとはたまたユニークプレイヤーであろうと神術スキルであろうと例外はない。これで俺の勝ち・・・
「スキル{自己修復}」




